第30話 しんよう
とある広場に集まるレイドパーティー。中央にはハンターでありレイドリーダーのゴモンとバーラの二人が立ち、司会を務めていた。
「と、まあみんな自己紹介が終わったところで、今回の作戦を伝えようと思う」
お、作戦か。まあ、知恵を絞ってうまい具合にやればこのメンツでもまあ、ぎりぎり、半壊?いや、八割方死亡で済むか。勿論、ターゲットであるゴゴアラは倒せはしないと思うけど。
実際見た感じそんくらいのレベルのパーティーだ。どれくらいヤバいかというと、お前ピクニック行くんか?って感じにサンドイッチ食ってる奴とか酒飲んで顔を赤くしてる奴が混じってるくらいのヤバさだ。
君たち遊びに行くのかな?
なんとも言えない気分で皆を眺めていると、ゴモンが作戦を発表した。
「撹乱作戦で行こうと思う」
撹乱!?
「見たところこの中にはゴゴアラの攻撃を受けられるような盾役も居ない。 ならば全員で攻撃を分散させ翻弄すれば、その問題も解決! さらには体力も削り疲弊させられる!!」
「おお!」「確かに」「天才か!」
その作戦を聞き皆が沸き立つ。ってか、あそこの酔い潰れてるやつ大丈夫?作戦聞いてないけど?
「なあ」
俺は手を上げた。なぜならこの絶望的な作戦を止めなければならなかったからだ。
ゴゴアラは素早い。おそらくこいつらがその撹乱作戦なんぞ実行しようものなら逆に効率良く一人一人狩られるだろう。
「おお、ノワル。 どうした? 怖気づいたのか? 仕方のない奴だ......だが、俺がついている。 安心しろ、お前は俺が必ず守るぜ」
なんだコイツ。ちげえよ。周りも「おおー! カッコいい」じゃねえよ。
その時、ゴモンの隣にいた魔道士バーラが声を荒らげた。
「ちょっと! まさか浮気!?」
「は? いやいや、ちげーよ」
「お前は必ず守るって......どういう意味よっ」
「そりゃレイドメンバーだからな。 仲間を守るのがリーダーの役目だろ? それに、バーラ、お前以上のイイ女なんてこの世に存在しねえさ」
「......で、でも。 あんな男らしいアンタみたら、あの子惚れちゃう......でしょ」
「いいや、俺が惚れなきゃ問題ねえだろ。 大丈夫さ。 安心しろよ、バーラ。 俺にはお前しかいねえよ」
「......ゴモン、信じてるからね......好き、愛してる」
「ああ、俺を信じろ。 ......愛してるぜ」
「「「「ヒューウ!」」」」
いや、うるせえよ!なんだこれ!一体俺達は何を見せられてるんだ!?
ちらっと隣の白魔道士を見ると、眉間にシワを寄せジーッとその様子を眺めていた。
その逆隣にいたティラナは最早興味無しと、ネイルケアをし始めていた。
いや、気持ちはわかるよ。そーだなぁ、これは......何を言っても無駄!以上!
んー、もういいや。小細工しないで殺されかけて心折れたところで救う感じでいくか。
多少殺されても俺のヒールあるし、なんなら白魔道士もいるし。
つーか、ギルドもいい加減だよな。盾役やヒーラー、役割ごとの抽選にすりゃこんな事にならないのに。あとでギルドマスターにでも言っとくか。
「ノワル」
「ん? なに」
「これが一般の魔物を狩る仕事をする人たちなんですね。 すごい......」
「いや、こいつらは中でもちょっとアレな奴らだな」
まさに命の知らず。自分の実力がまるでわかっていない。
逆に良くここまで生きてこられたよ。
......いや、まてよ?
それが間違いか?
こいつらでもここまで生き残れてるんだ。俺や白魔道士、ティラナのレベルから見ればアレなだけで、これが普通?
実戦になれば皆、ちゃんと動けて強いのか?
......もしかすると、舐めていたのは俺達の方かもしれない。
ひとりひとりの力は小さい(つーか弱い)しかし、そんな奴らでも連携が上手ければ確かに強敵に勝る力を発揮する。
「ノワル?」
考え込む俺を心配そうに見つめる白魔道士。
「......こいつらの思うようにやらせてみよう」
「ええっ、正気っ!?」
驚きのティラナ。おまえちゃんと話聞いてたんだな......ちょっと安心した。協調性なさすぎだろって心配してたんだよね、俺。
「もしかすると案外できる奴らなのかもしれん。 自信に満ちた連中の顔を見てみろよ......」
「!」「ん」
考えても見れば、奴らも駆け出しの冒険者やハンターというわけじゃない。
ってことは自身の実力も理解してないって事も無いんじゃないか?
っつーことは俺達が懸念していた用心棒の件は、実力のない奴が物言えぬ宿屋の店主にたかっていただけの押し売りではないって事だ。
(......とりあえずあのハンター二人の力を見てみるか。 そしてその実力を宿屋の店主に伝えて、雇いたいかどうか聞いてみよう......)
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