第29話 しか
「あ、赤色ですね! おめでとうございます、当たりです」
抽選クジのボックスを持ったギルドの係員がにこりと笑う。
その箱から取りだした玉は彼女の言う通り、当選の意味を持った赤色の玉だった。
「......ありがとう」
「ふふっ、レイド頑張ってくださいね。 お気をつけて」
後ろの方で待っていた二人の元へ歩いていくと、目を丸くしていた。
「「すごい!!」」
「ど、どうして当たりを引けたんです!?」
「ねっ!! まさかノワルは強運!? めちゃくちゃ強いのに加えて運までいいのっ!?」
「いや、そんなんじゃないけど。 ......俺には当たりがわかるんだよ」
「「当たりがわかる?」」
疑問を顔に浮かべる二人。俺は手のひらを見せた。
「「あ......目!?」」
手のひらに目を形成。抽選ボックスの中で当たりを視認し、それを選ぶだけ。
「ず、ずるい」「......」
二人がジト目でみてくる。いや、俺は別に良いんだぞ......こいつらが弱々パーティーで全滅しても。
「しかし、ノワルが当たりを引いてくれなければレイドに参加することは難しかった......ありがとうございます」
「確かに。 ずるいなんて言ってごめんね、ノワル」
いや素直!一瞬で毒気抜かれたわ。
「んま、これでレイドには参加できる事になったから、ひとまず安心だな」
「あとは彼らに同行し......同行してどうするんですか?」
「奴らが自主的にハンターを辞めるよう仕向ける。 己の実力不足を思い知らせて、引退に追い込むんだ」
「引退に......少し可哀想ですね」
まあ確かに職を失う事になるわけだしな。その言葉を聞き、ティラナが言った。
「いや、でもその方が良くない? あの二人の実力ならいずれ命を落としかねないよ」
その通り。これは奴ら二人のためでもある......。
「そうですね、確かに......」
しゅんとする白魔道士。んー、他にどうも出来なくない?
命が一番大切じゃないの?ちょっと可哀想だけど、無理くない?
「全てを完璧に救うなんて、それは難しいぞ」
そう俺が言うと白魔道士はきょとんとした顔で俺をみていた。
「......? ど、どうした」
「あ、いえ。 そうではなく、私......ノワルに頼りっぱなしで、申し訳ないなって。 すみません」
あ、そういう。......まあ、暇つぶしだし。
「そっちか。 まあ、別に気にすんなよ。 これもただの暇つぶしだ」
白魔道士は困ったように微笑む。
「ごめんなさい。 私にできることがあれば、なんでも言ってください......ヒールなら多少自信がありますので」
「ん。 頼むわ」
ティラナが元気よく手を上げた。
「はーいっ! 私も私も! 何でも手伝うよ〜!」
「おお、ありがとう。 期待してる」
「えっへへ」
顔を赤らめ、にんまりする彼女。
マジでこの子、出会った時とキャラ違いすぎるんだが。
「よお、お前ら。 レイドは初めてか?」
その時、不意に後ろから声をかけられた。見れば例のハンターの男。
「俺は今回のレイドでリーダーになったゴモンって者だ。 そっちの魔術師はバーラ。 普段は二人でハンターをしている」
得意げに鼻を鳴らすゴモン。リーダーだからパーティーメンバーに挨拶まわりしてるのか。偉いな。
「お、そーなんだ。 俺はノワル。 後ろにいる二人は、こっちが白魔道士で、こっちがティラナって言う。 よろしくな」
「ああ、よろしく! 挨拶できて偉いぞ!」
ありがとうございます。......ん?
「ところでお前ら初めて見る顔だが、レイドは初めてなんだろ? 俺らが色々教えてやるからよ、ちゃんと言う事きけよ〜。 つーわけで、また後でな!」
あ、こいつ偉くねーわ。下っ端が欲しいだけかあ。
「なにあれ、偉そう」
そう言いながら、ティラナが口を尖らせていた。あら可愛い。
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