第28話 作戦

 


「んー、助けるって言っても具体的にどうするんだ? 手っ取り早く......あのハンター二人殺しちゃう?」


「いや物騒!?」「!?」


 ティラナがツッコミを入れてくる。いや、お前らだって王都攻めてきたやんけ。あれ物騒どころの話じゃないんだが。


「まあ、王都を襲った私が言えることじゃないけどね、あはは」


 あははって。いや、でも良かった。忘れてるわけじゃなかったか。


 俺と白魔道士はジト目でティラナを見つめていた。


 しかしどうするかな。ああいう奴らは痛い目見ないと分からないんだよな。


 考え込む俺と白魔道士を見兼ねて、ティラナが口を開く。


「んー、聖騎士や衛兵に任せた方がいいんじゃない? その方が手っ取り早く取り締まってくれるでしょ」


「うんにゃ。 こういうのはあんまり感知してくれない。 つーか、それでもしあのハンター二人を取り締まることに成功したとしても、あとが怖いんじゃねえかな。 仕返しとか」


 宿は無関係、あくまであいつらが自主的に手を引くことが重要なんだよな。


 しかたない。少し乱暴になるが......まあ、あいつらもやってることは似たようなもんだしな。


 因果応報ってことで。


(......因果応報か)


「ひとつ案がある」


「!」「お、はや!」


 パァッと表情の明るくなる白魔道士と、目を見開いて驚くティラナ。俺は説明を始める。


「多分、あいつら......ハンターの二人組は仕事を募集してると思うから、それを使おう」


「そう、なんですか?」


「なんで募集してるなんてわかるの?」


「ハンターってのは基本的に王都や街に留まろうとしない。 あいつらの仕事ってのは魔物退治、捕獲、秘境の開拓......とにかく、外での仕事が多い。 なのに街に滞在しなければ仕事にならないケツモチをしたがるってことは、金が無いってことプラス外での仕事が無い」


「......なるほど」「ふんふん」


「そいでケツモチだけで生活ができるとも思えないし。 だから日雇いの仕事を募集してると思うんよ」


 多分だけど。まあ、仕事募集してなくても多額の報酬を条件に依頼をすればなびくだろ。最悪その手でいこう。


「そいじゃあ、冒険者ギルドにでも行こうか。 仕事の募集はあそこでしかできないからな」


「はい」「はーいっ」




 ◆♢◆♢◆♢




 やってきた冒険者ギルド『スラヴィアント』には多くの人が立ち込めていた。


 それを見てティラナが驚く。


「わあ、なにこれすごー。 なんかイベントでもやってるんかな? 人多すぎでしょ」


 確かに......って、よく知らないけど。なんかやってるのかな?


 その疑問に白魔道士が答えた。


「おそらくあれかと......」


 彼女の指をさす先にある張り紙。


『レイド募集! 東森林地帯、オーラヌでの【ゴゴアラ】の討伐。 定員十二パーティーまで。 希望者多数の場合、抽選』


「あー、なるほど。 しかしゴゴアラか......」


「ゴゴアラって? なに?」


 ティラナが俺の顔を覗き込むように聞いてきた。いや近いわ。


「ゴゴアラってーのは、簡単に言えば魔力を纏う巨大な牛だな。 特に属性魔法とかは使わないからこうして数を集めれば容易にとまではいかないが、比較的簡単に狩れる......まあ、ミスれば即死亡くらいの危険はあるけど」


 楽に狩れるが、失敗したときのリスクは大きい。だからこそ報酬は美味い。


「けど、報酬は百万シルバーか......あはあ、だからこんなにこぞって参加したがってるのかあ」


「まあ。 フツーくらいの戦闘力があれば比較的楽に狩れるって話だけどな」


「? どゆこと」


「人が多ければ抽選って形式にしてるところが危ない。 もし実力のない奴らばかりのレイドが形成されてしまえば、ゆうまでもなく皆死ぬだろうさ」


 と、その時。見知った顔がそこに並んでいることに気がついた。


「ふははっ、ラッキーだな! こんな美味しいレイドがはりだされているなんて!」


「ええ、本当ね! これで大金ゲット! まあ、まだ抽選で当たってはいないけど」


「ばかいえ! お前も俺の幸運力を知っているだろうが!? 今までこうした抽選をはずしたことなんざねえぜ!」


 宿の件のハンター二人組だった。


 白魔道士もそれに気がついたらしく、俺に目で訴えてくる。


「あの、ノワル。 彼らは」


「んね。 これに参加するみたいだ」


「......大丈夫でしょうか」


「え、なにが」


「先程の話し......実力不足の者たちで形成されたパーティーは全滅してしまうという話し」


「いやあ、あの二人は実力不足だけど......はっ」


 白魔道士は何が言いたいんだ?と、思った瞬間その意図に気がついた。


 そのレイドの抽選に並ぶ人々を観察してみる。



 んー



 ああ......



 こいつら死ぬわ。


 纏う魔力も未熟、立ち姿も隙だらけ。ともすれば半人前以下のような奴もチラホラ。ハンター二人組も含めて。


「んー、まあ。 あれだよ、これであの二人が帰らぬ人になればミッションクリアじゃね?」


「ノワル、お願いします」


 ぬぐっ、くそ。


 お願いしますって、なんとか助けてって意味だよな。


 しかたねえか。


 ......まあ、暇つぶしって事で。


「......はぁ、わーったよ。 俺等もレイド参加するか」


「ありがとうございます!」


 ぱあっと笑う白魔道士。そんなにあの二人の命が大事かね。


 しかしティラナがちょいちょいと指でつつき不思議そうに俺にきいてきた。


「いや、でもこれ抽選......くじ引きでしょ? 私達が参加出来るかわからないじゃん」


「いや、できるよ」


「え?」


 いや、ほら、俺スライムだし。



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