私は間違い探しができない

ピチャ

私は間違い探しができない

 ああ恐ろしや。私は間違い探しができないのだ。

というのも、新聞やファミリー・レストランにある絵を見比べて間違いを見つける遊びではない。自分の仕事のミスを見つけることができないのだ。

 だが、それらは実質的には同じものなのだ。


 私が仕事で作成したものを先輩に確認してもらうと、そこら中に間違いがある。何度見直しをしてもミスが直らず、他の場所に新しいミスが増えている。これは頭がぼけているのか。

 違う。見直しの仕方を知らないのだ。

試しに先輩に見直してもらって、それを見ていると、何やら前回提出したものと見比べて、ペンを入れているではないか。さらに、関係する他の資料とも見比べる。

なるほど、そうするのか、と合点がいく。

こんな簡単なことを、それまでの私は知らないのである。


 見直し。それをしようとするとき、私は自分の書いたものを目でなぞる。しかし、自分で間違えたものにはなかなか気づかないものだ。チェックしてもらって、あれっ、こんなところが間違っているのになぜ気づかないんだろう、そう思う。

正解と見比べればいいのだ。それか、前回のものと。前回の修正点はちゃんと修正できているだろうか。これが、わりとできていない。なぜそんなことが起こるかわからぬが。


 最近、印刷してペンを入れるようになった。文章や限られた部分の入力方式だとある程度それでミスを防げる。

しかし、図面のミスはなかなか見つからない。

私は仕事で図面を描いているのだが、そもそも全体が図面なので、どこにペンを入れればいいかわからないのだ。仕方なく、図の種類ごとに(木なら木、窓なら窓、と)ペンを入れる。場所がずれてはいないか、大きさは指定通りか。そうして、どうして気づかないのだろうと思わせるミスは少なくなったと思う。

恐ろしや、見直しの仕方を学生生活の中で身に着けられなかったのである。

これではどんな仕事をさせてもミスばかりの困ったちゃんである。

と、これが社会人になって10年ほど経った状態でわかった。事務仕事、書類仕事がひどく苦手な原因だろう。なんたることや。

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私は間違い探しができない ピチャ @yuhanagiya

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