第22話 松山と疑念

 『ボウリングデートしてきた』

 神原は、本宮のラインを少し酔った状態で既読を着けた。


 神原は今、県内で最大な歓楽街、松山に来ている。


 プライベートではなく、仕事の接待という形で飲みにきていた。


 一次会は少し真面目な仕事の話、二次会では、歓楽街で大人の遊び、これが一連の流れであった。


 数年前までは、法律の規制が厳しくなり、路上のキャッチが少なくなっていたが、ここ最近からまたキャッチが増えて来ている。



 「どういう遊びか」

 「何人か?」

 「かわいい子いるよ」

 

 道をあるけば、まるで有名人のように声がかかる。


 営業先の社長と上司と神原。

 

 もちろん神原が、一番下っ端なので、面倒な交渉は本宮が行い、話をまとめてお店に案内してもらう。


 お店に誘導された後、誰にも見えない所で大きなため息をもらす。

 楽しむ場なのだか、なかなかテンションが上がらない。


 ラインの友達リストを開く、その中から、短い髪に深く帽子を被り、ギターを持ったアイコンをクリックしようとするも、手を止めた。

 酔って連絡する子じゃない、そう思いながら、席に向かう、神原の表情は、明るくいつものお調子者の仮面を被る。


 お店では、綺麗に着飾った女性が席に座り、お酒を作ったり、何気ない会話を楽しむ。

 神原は、前に出すぎないように、場を盛り上げるように気を使う、お酒は飲んでいるが、意識も頭もはっきりしている。


 (一時間もすれば帰えれる、もう一踏ん張り)


 そう思っていた中で、隣の嬢が話しかけた。


 「お客さんは、連絡先とか聞かないの」


 興味がない、それが本心だが、そんな事をわざわざ言う必要はない。


 「通うだけのお金はないよ」


 半分は本心だ、神原は、あまり会話楽しむつもりはなかったが、嬢はそのまま、会話を続けていた。


 「お金ないんだー、でも、それでも通わせる悪い女ってのもいるんだよねー」


 酔っているのか一人でペラペラ喋り続ける。

 興味はないが、耳に入ってくる。


 「内にもいてさー、『ハル』って子なんだけどさ」


 神原は、耳を疑った、先ほどとは打ってかわって話に俄然興味が湧いてきた。

 

 単なる偶然なのか、それとも事実なのか、今一つ確証が持てないなか夜の時間がふけていく。

 


 



 

 

 

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