第18話 映画と距離

 館内に入り、指定されたせきにすわる。


 隣どおしで少し、緊張する本宮だが、春の方は、そうでもないらしく、買ったポップコーンを二人の間に置いて食べ始める。

 「私このシリーズどこまで見たのか忘れて、この一週間で一気見してたんですよ。」

 

 春は嬉しそうに話しているが、本宮も、この手の映画のシリーズ見るがあまり内容に入っておらず、正直そこまで深い関心もなかった。


 というよりは、映画の事を考える余裕もなかった。


 長い予告の後に、映画が始まる。

 

 専門用語や、他のシリーズを見ていないと置いていかれるストーリー、ファンにしか通じない小ネタなど、独特の世界観の映画だが、映像の凄さ、迫力に本宮も集中していた。

 

 しかし、時折みる春の横顔に集中は切れてしまう。


 非現実な素晴らしい映像よりも、何気ない現実の方が心揺さぶれる事を痛感している間に、二時間半という長丁場の映画は幕をとしだ。


 大きな音と、座りぱなしで腰とお尻が少し痛む。


 映画館から出るとき、満足そうな春は、一方的に映画の感想を本宮に伝えていた。


 あのシーンの役者さんがかっこよかった

 敵のボスあんなに強いのに終わりかたがあっさりしていて驚いた。

 後半大きな音が続いて耳が痛くなりそうだった。


 そして、黙って聞いていた本宮にこう続けた。


 「本宮さんは、映画楽しかったですか?」


 正直映画は、よくわからなかったが、春と過ごせたのはとても楽しいし、嬉しかったのでこう答えた。


 「楽しかったよ。また、行こう。」


 春の顔が、笑顔で溢れる。


 二人映画館に入るよりは、少し距離を縮めて映画館を後にするのだった。


 

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