第14話 ケーキと来客
デートまで、あと2日、夕方お店では、店員の長田は、レジで入荷予定のコミックスの案内ポップを作成していた。
普段は蒼井の仕事であるのだが、年末で少しバタバタしつつあるので、仕事を分散して行っているのだ。
普段は、王道の少年コミックしか読まない彼に取って、あまり馴染みのない少女コミックのタイトルはなかなか読むのも、書くのも不慣れであった。
ふと、最近はバイト先も色々楽しい話を聞くが自分の生活にはとくに変化はないなとか、バイト先も年末年始は休みなので、どう過ごそうかと考えていると、声をかけられる。
「すみません」
ポップから目線をあげると、年は20くらいのセミロングの女性が、立っていた。
お客さんかと思ったが、手には本がなく、ケーキの箱のような物をもっており、長田は、本の問い合わせかと、身構える。
「えっと、本宮さんいますか?」
長田は、店長の知り合いか、業者かと思い、返事をする。
「あー、今、ちょっと出てますよ、もうしばらくしたら戻るとは思うんですけど。」
すると、売り場にいた蒼井が戻り、女性に話しかける。
「注文した本ならまだ、届いていないですよ。」
蒼井は、長田をフォローしたつもりで、会話に入ってくる、はじめは、長田にはよく意味がわからなかったが、すぐ理解した。
『この人が、春か。』
「本の事じゃなくて、近くに通りかかって、美味しそうなケーキ屋さん見つけたので差し入れです。」
そう言うと、春はケーキの箱をカウンターに置いた。
ケーキをもらった事より長田の思考は、わざわざあまり面識のない人にケーキをもってくる距離感の方に、違和感を覚え、蒼井を見るが、蒼井は、ただラッキーといった様子である。
「ありがとうございます。みんなで食べますね」
嬉しそうな蒼井に、長田は春に軽く会釈をする。
春は、気にしないでと、伝え、そのまま、出入口の方に向かって歩きだす。
狭い出入口の方で、偶然、本宮と向かい会うのだが、生憎本宮は、電話をしており、驚きの表情だけ、春もジェスチャーでケーキの事を伝え、二人はすれ違いでその場を離れてしまうのであった。
店内には、そんな様子を見ていた長田と、ケーキに心奪われている蒼井、電話をしながら残念そうな本宮の姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます