第8話 居酒屋と作戦会議(後編)


 手渡されたスマホをじっと見つめる神原、スマホの画面には、LINEのやり取りが表示されている。


「『本の注文しました、入荷しだいお知らせします』『わかりました、ありがとうございます』って、これだけ?」


 本宮は、大きく頷くが、動作が大げさなのはアルコールのせいもあるだろう。


「ったく、好きなら誘えよ、飲みに行こう。とか映画観ましょう。とかあるだろ」


「いきなり、飲みにとか無理いうな」


「それじゃあ、映画だな。『みたいのあるのだけど1人じゃあ~』とか言って誘うんだ」


 そう言って、スマホを返し、お互い今公開中の映画を確認する。


 本宮は、ラインナップに難色を示す

「女性と初めてみる映画は何がいいんだ」


 公開中の映画は、全身タイツのヒーローもの、国民的なアニメの映画、血だらけのスプラッター物、どれもピンとこなかった。


「このアニメ映画とかは、カップルでみそうだけど、最初からこれはないだろうし、ホラーものも『吊り橋効果』でいいかもだけど、好き嫌いわかれるし」


 男二人、スマホの画面に睨めっこしながら、あーでもないこーでもないと考えこむ、大手の映画館から小さなシネマ館まで、色々調べても正解は出てこない。


「見たい映画ないなら、誘う利用はないだろ」


 本宮がそう言うと、神原は反論する


「映画なんてどーでもいいんだよ、デートがメインなんだから、それよりこれはどーだ?」


 表示された画面には、イケメン俳優が、CG丸出しのロボットと手を繋いでいる画面が写し出されていた。


『この出会いは、まるで奇跡』


 既視感丸出しの映像のキャッチコピーに、本宮はつい本年を漏らす。


「いや、観なくてもなんとなく、これ話わかるんじゃ…」

「だから、映画がメインじゃないんだよ、早くこの映画みに行こうってLINEしな」


 アルコールで冷静な判断がうまく出来ないのと、神原の押しに負け、LINEメッセージを送信する。


 既読は、直ぐについたが、飲みの最中に返信はなかった。


 もしかして、失敗したのでは、二人はお互いそう思いつつも、その事には触れずに夜遅くまで飲み明かした。

 本宮がいつもよりお酒が進んでしまったのも、勢い任せの自分を麻痺させたかった気持ちもあるのだろう。


 


 

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