精神科閉鎖病棟



もうどうでもよくなった。

私が死ねばみんな幸せになると思い、私ではない何かがわたしを突き動かした。






──気がつくと私の隣には看護師さんがいた。


 「 これから先生がくるからね。少しだけ、ここに一緒にいようね 」


 看護師さんが背中を撫でてくれている。優しく、優しく。




 

 それから、しばらくしてやってきた先生の質問にひとつふたつ答えた後、レントゲンを撮り、何処かの科の先生からの診察を受けた。きっと整形外科の当直の先生だろう。私は総合病院にいた。


 

 

 

 次の日、ある書類に同意のサインをした。この瞬間から私は医療保護入院という扱いになった。



 

 何かあった時のために、素早く対応をするためだろう、ナースステーションの隣に配置されている個室に配置された。


 部屋を見渡すことができる監視カメラがついており、窓は二重窓。鉄格子こそないが、開閉する取手自体が取り外されており、窓から外へ出られないようになっている。二重窓の内側にブラインドがあるが、常に閉じられており外の様子は見ることができなかった。


 


 持ち物のチェックをしてもらい、一定の長さを持つ紐類や危険と判断された物は預かって貰うことになった。金銭を含む貴重品の管理も同様だった。




 病棟自体が閉鎖されているため、許可なく外に出ることはできない。





 その時の私は、外部との接触ができる状態ではなかった。



 


──これが私の精神科閉鎖病棟との始まり。


 数ヶ月間、そこでの生活は生きた心地がしなかった。実際、生きる気力すら湧かなかった。


 開かない窓、そして監視カメラ。許可なく出入りが出来ない閉鎖された空間。それが閉鎖病棟だった。




 

 


 

 



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