二章

第48話 疑問

イタイ……頭が割れるようだ。


目が覚めた俺は、その頭痛に思わず項垂れる。


昨日の豊穣祭でセレナ様……いや、セレナと一緒に回った。


そして夜になり、ガルフや合流したナイル達と飲み明かして……。


「……今に至るというわけか。いやはや、潰れるほど飲んだことなどいつ以来だ? 戦争が終わった後も、そんな場合ではなかったし」


そんなことを考えていると、寝室のドアを叩く音が聞こえる。


「誰だろうか?」


「わ、私ですっ! 入っていいですか?」


「ああ、問題ない」


そして、扉を開けて銀髪の美女が現れた。

今日は髪型をサイドテールにし、その格好はワンピースにカーディガンだった。

どこからどう見ても、まごう事なき美女であり、王女様として相応しい風格がある……のだが。

あのお転婆少女だとわかった今、どうにもそういう感じには見えない。


「アイクさん? わ、私の顔に何か付いてますか?」


「いや、すまない。あの女の子が、こんな美人になるとは……驚きだと思ってな」


「……ふぇ!? そ、そ、そんな……」


「あの俺の布団に潜り込もうとした女の子がなぁ……歳をとるわけだ」


「も、もう! それは忘れてくださいっ!」


「それは無理だな。ところで、何か用があって来たのか?」


時間を見ると、お昼過ぎになっていた。

だが、今日は一日休みとなっているので問題はないはず。


「えっと……何やら、ガルフ殿達がアイクさんを連れて来いって。何か、用事があるそうですよ?」


「おいおい、一国の王女を使い走りさせるとは……」


「い、いえ、私が志願したといいますか……寝顔とか見れるかなって」


「そんなの見ても面白くないだろうに。さて……では、着替えるので少し待っててくれるか?」


「ひゃい! 失礼しました〜!」


あわあわしながら、慌てて扉を閉めた。

こうしてみていると、あの頃のままな気もする。

そんなことを考えつつ、まずは着替えを済ませるのだった。





着替えを済ませた俺は、玄関へと向かい、セレナと合流する。

……というか、セレナと呼ぶことになってしまったがいいのだろうか?

昨日は無礼講ということと、あの時の女の子だとわかったから呼び捨てにしたが。

使い走りをするより、よっぽど無礼では?

……今からでも、訂正したほいがいいか。


「あっ、アイクさん!」


「すまん、待たせた。それより……セレナさん」


「むぅ……昨日みたいに、セレナって呼んでください」


「いや、しかしだな……」


すると、子供みたいに不満そうな表情を浮かべた。

それはまさしく、俺が遊んでくれなくて膨れっ面をする……あの時の女の子だ。


「はぁ、わかった……もう言わん。ただし、正式な場では勘弁してくれ」


「はいっ! もちろんですっ!」


「全く、困ったものだ。それより……今更なのだが、あの時にいた男性は国王陛下ってことなのか」


「えっ? は、はい、そういうことになりますね……あれ? お父様は、アイクさんのことを知っていた? そして、アイクさんのお父様も私達親子を知っていた?」


そう、俺の父上はあの時……

まさか、それが国王陛下とは思わなんだ。

どうして、父上が国王陛下と仲が良かったのは謎だが……一つだけ謎が解けた。

国王陛下に謁見した時に、何処かで見た覚えがあるわけだ。


「多分、そういうになる。俺の父上は死んでいるが、国王陛下は存命している。いずれ、機会があったら聞いてみたいものだ。セレナは、何か聞いたりはしているか?」


「い、いえ、私は何も……そういえば、最後にお父様にあった時に何か言っていたような……これで友との約束を果たせるとか何とか」


「なるほど……そこだけ聞くと意味がわからないが、会ったことがあるとなると意味が変わってくるな」


「はい、そうですね。今度、お父様に会ったら聞いてみます」


「ああ、そうしてくれると助かる。俺も父上のことは知りたい」


父上はしがない男爵家当主で、王族と知り合いなど聞いたこともない。


そして、戦争によって亡くなってしまった。


……厳しく寡黙な父上だったが、もっと話しておけば良かったな。









~あとがき~


本日より二章を開始いたします。


三日に一回の更新となりますが、よろしければご覧ください(*´∀`*)

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