第44話 決着

……強い! やはりキングの名は伊達ではない!


本来なら一対一で戦うような相手ではないが……それでも負けるわけにはいかん!


俺の背中には、セレナ様の命がかかっている!


「ウォォォォォォ!」


「ゴァァァァァァ!」


大剣と大剣が激しく打ち合い、余波によって木が倒れて地面がえぐれる。

俺と相手の体から血が流れ、それでも打ち合うことをやめない。

一合二合と斬り結び、轟音が森の中に響き渡る。


「ニンゲンノブンザイデェェェ!」


「どうした!? そんなものか!?」


「ナメルナァァァ!!」


「ぐうっ!?」


鍔迫り合いで力負けし、後ろにあった木に衝突する。

全身がきしむが、どうにか態勢を立て直すと……目の前にゴブリンキングが迫っていた。


「フハハッ! シネェェェ!」


「チッ!?」


続いて振り下ろされた大剣を、右にずれて紙一重でかわす。

あれに直撃したら、流石にまずい。

俺の直撃は奴を殺せないが、奴の直撃は俺を殺すだろう。

いくら身体強化してるとはいえ、そもそも生き物としての強さが違う。


「何より……やはり歳には勝てんか。流石に全盛期の頃のようにはいかん」


「グフフ、エラソウニイッタワリニハタイシタコトナイナ? サイショノイキオイハドウシタ?」


「確かに、身体中が血だらけだな」


相手は血を流しつつも、その傷はすぐに塞がっていく。

それに対して、俺の血は止まることなく流れている。

そしてタフネスさもあるので、俺の方が先にへばるのは目に見えていた。


「グフフ、イマサラユルシヲコウテモオソイゾ」


「許しだと? ……そんなものは必要ない」


「ツヨガリヲイイオッテ……モウイイ、ワレハアノオンナヲイタダキニイク——キサマハシネ!!」


両手持ちから振り下ろされる大剣を——片腕で止める。


「ナ、ナニ!? バカナァァ!?」


「誰を頂きにいくといった? そんなことさせるわけがなかろうが!」


「グカァァァァァ!?」


空いてる拳でゴブリンキングの腹を殴りつける。

すると、今度は奴が数メートル吹っ飛び……その腹は、ベッコリとへこんでいた。

痛みに耐えられないのか、奴が地面をのたうちまわる。


「ナ、ナンダ? コノチカラハ!? ガァァァ!? ハラガイタイィィィィ!?」


「別に大した話じゃない。言っただろう、歳には勝てんと」


「ド、ドウイウコトダ!?」


「身体に負担がかかるので、全力を出すためには時間がいる。ようやく、身体があったまって来たところだ……さて、ここからが勝負だ」


当然ながら身体強化の魔法も万能ではなく、元の身体を鍛えていないと身体が壊れる。

二十代ならいざ知らず、今の俺ではきつい。

何よりこいつを逃さないため、確実に倒すために力を溜めていた。


「チ、チカラヲヌイテイタダト? コ、ココハイチド……ゲボクドモヨ! ワレノタイロヲヨウイシロ!」


「……上官の風上にも置けない野郎だな、ゴブリンとはいえ同情する」


「ナゼコナイ!? ナニヲシテイル!?」


「お前の手下なら、俺の頼りになる仲間達が倒しているさ。さて……覚悟はいいか?」


「ギィ!?」


ゴブリンキングが背を向けて逃げ出そうとしたので、大剣を両手で構えて……思い切り跳躍する!


「終わりだ」


「マ、マテ——ァァァァァ!?」


俺の振り下ろした大剣により、ゴブリンキングの身体が真っ二つになる。

流石のゴブリンキングも、これでは死ぬしかない。


「ふぅ……なんとかなったか」


相手は俺を恐れたが、言うほど戦闘力に差はない。

相手が逃げずに本気に戦っていたら、俺とて危なかった。

戦いでは戦う勇気と、敵の懐に一歩でも踏み込む気迫がモノを言う。

あのゴブリンキングには、それがなかったのだろう。


「いくら強くとも、部下を粗末にするような者には負けるわけにはいかない……少し血を流しすぎたか」


だんだんと、頭がクラクラしてきた。


気がつくと、俺は木に寄りかかって倒れ込んでしまう。


そして、そのまま暗闇の中へ落ちていく……。

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