第40話 嫌な予感
……さて、どうするのが良いか。
村長や実際に発見した狩人から話を聞いた俺は、作戦について少し迷っていた。
詳しく聞いたところ、ただの妖魔退治とは行かなそうだ。
ギンにとある依頼出した後、ひとまず村長の家から出て、頭を空っぽにして息を大きく吸う。
「ふぅ……ナイル達がくる前に、作戦を決めておかねばな。祭は明後日だし、出来れば時間はかけたくないところだが」
「アイク様っ!」
振り返ると、セレナ様が笑顔で駆け寄ってくる。
笑顔から察するに、あちらも問題なく片付いたらしい。
「セレナさん、怪我人は平気か?」
「はいっ! お話にあった通り、皆さん命に別状はありませんでした!」
「それは良かった。セレナさん、よくやってくれたな。おかげで、領民達も安心するだろう」
「いえ! 勿体ないお言葉ですっ! えへへ、なんだが嬉しいですね」
そう言い、まるで新兵のように敬礼する。
その姿は、なんだか可笑しい。
「なんで敬礼を?」
「えっ? い、いや、ここではアイク様が上官なので……それに、こういうのって憧れてたんです」
「どういう意味だろうか?」
「えっと、その……嫌な上官とはアレですけど、素敵な上官に報告して褒められたり……す、すみません、こんな時なのに不謹慎ですよね!」
「あぁー……いや、そんなに気にしなくて良い。ずっと気を張っていたら、いざという時に使い物にならない」
これで死人とか出てれば話は別だが、今回はその前に到着したので煩く言う必要はない。
それに、人は気を張ったままではいられない。
「そうなのですか……私、前線には出てなかったので」
「ああ、そういうものだ。何より、気持ちはわかる」
「へっ? ア、アイク様も褒められたいとかあるのですか?」
「……俺をなんだと思ってるんだろうか?」
俺とて、叱られるよりは褒められたい。
残念ながら……叱られることのが多いが。
「ご、ごめんなさい! その……いつも淡々と任務をこなしてる感じがしたので」
「そうだな、セレナさんが来た頃は……もう、上官に対して期待などしていなかった。俺を褒めるところか、手柄を横取りするような奴らが多かったからな」
「あっ……」
「いや、すまん。つまらん話だから忘れてくれ」
すると、セレナさんが近づき……背伸びをして俺の頭を撫でた。
「な、何を?」
「アイク様は良い子ですよ。みんなの為に戦い、戦争を勝利へと導いた方ですから。あなたの働きは、私はもちろん……現場の兵士や、ナイル達がわかってますから」
「……ありがとう」
俺は年甲斐もなく嬉しくなり、どうして良いのかわからない。
なので、お返しに……今度は、俺がセレナ様の頭を撫でることにした。
「ふえっ!?」
「セレナさんも、よく頑張っているな。本当に、いつも感謝をしている」
「あ、ありがとうございます……」
すると、ギンの念話が聞こえてくる。
『主人よ! 近くに住むウルフ達から話を聞いた! やはり、主人の予想は当たった!』
『そうか、当たってしまったか。ギン、貴重な情報を感謝する。そのウルフにも伝えてくれるか? あと、して欲しいことがあれば聞いてくれ』
『うむ! 妖魔はウルフ達にとっても危険なので、倒してくれたら良いと言われたのだ!』
『わかった。俺達が倒すから安心していいと伝えてくれ』
『わかったのだ!』
そこで念話が途切れる。
ふと視線を下げると……セレナ様の耳が真っ赤になっていた。
どうやら、念話中も頭を撫でていたらしい。
「す、すまない! ずっと撫で続けてしまったか!」
「い、いえ! 平気ですっ! えっと、あの……もしかして、ギン君と念話をしていたのですか?」
「あ、ああ、そうだ……実は、嫌な予感が当たってしまった」
「それは一体どういう……?」
「悪いが、話はナイル達が来てからにしよう。きちんと作戦を立てねばなるまい」
戦いに関して、俺の嫌な予感はよく当たる。
まさか……妖魔族中級上位に位置する、ゴブリンキングが現れるとはな。
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