君の罪は重すぎる

@ichigomiliku

第1話 梅雨、初恋

「ぴちぴち、しとしと」

 朝起きると、梅雨のにおいがした、このじめじめとした温かみ、どちらかというと寒いだろうか、そんなどうでもいいことを気にしながら、顔を洗う。

 今日も退屈な一日がおとずれる。



 自己紹介がまだだっただろうか、僕の名前は三上翔人、どこにでもいるだろう中学一年生だ。学校は少し寒いから、薄手の上着を着ていこうか、そう考え、俺は上着を着て、学校に向かった。

 それは運命的な出会いだったといっていいだろう。僕が学校へ向かう途中、黒髪の細い少女に目を奪われてしまった。僕は思わず「あっ」と声を漏らしてしまった、そんな僕の声は雨音に紛れて彼女の耳には聞こえなかったらしい。どうやら僕は恋をしてしまったらしい。

 学校に着いて、靴箱に靴を置くと、友達の海斗が話しかけてきた。

「なあ、今日転校生くるんだって、6月に転校とか珍しくね」

「確かにな、中途半端な時期やね」

 僕は内心「今朝の女の子やったら…」と思ってしまったが、少女漫画でもない限りこんな運命はきっとないだろう。

 僕たちは転校生のことについて話していた、かっこいいのか、かわいいのか、優しいのか、辛口なのか、そんなどうでもいいことを話しているうちに予鈴が鳴った。

「ガラガララララ」と扉が開いたのと同時に先生が入ってきた、生徒が朝の挨拶をすませると、先生からお待ちかねの発言があった。

「えーみんなも知っていると思うが転校生を紹介する、入ってきて」

 そういうと教室の外から入ってきたのは、一言で言うと「天使」のような整った顔立ちの美しい女性がいたのだ。

「石神晶です、よろしくお願いします」

 そういって彼女は先生の指示で空いている僕のとなりの席に座った

「よろしく、石神さん」

 彼女は恥ずかしそうにしながら、僕のほうへ向いて、一言。

「よろしくお願いします、あの、朝私のこと見てましたよね?」

 突如そう言われ、何を言おうかと、どう言い逃れようと考えていたところ、また彼女は言った

「いいんですよ、これからはそういう関係になっていくんですから」

「どういうこと…?」

「ううん、何でもないですよ」

 正直言うと、めちゃくちゃかわいい女の子とそういう関係(翔人が想像してるのは恋人関係)なれるってすごくいいじゃん、でもなんでこれからのことを知っているんだ?僕のことが好きなのかな?そうだといいな。

 なんてどうでもいい思考を回していたところ、予鈴がなった。

「一限目が始まるから準備するよ、石神さん」

「あっ、はい一限目は数学でしたっけ」

 (数学…僕の嫌いな科目のうちの一つだ、彼女にかっこいいところをみせるはずだったのにいい。)

 翔人は内心絶叫しながらも一限目の準備をし始めたのだった。



「ここの文字式はxに4を代入して…」

 やべえ、想像してたより難しいんだが、お母さんに「中一最初の数学もできないようじゃこの先が思いやられるわね」と言われたのを思い出し、「うるせえ、あと一ヶ月したら本気出す」と言った、もっともその一ヶ月も今月で2度目だが、

 (しっかし、まずいなあ、代入は簡単にできるって石神さんから言われたんだけど…)

 そうお隣を見てみるともの凄いスピードで問題を解いていく、翔人は「やべえぇ」と内心驚くが、見回ってきた先生に気づき、慌てて問題用紙のほうに目をやる、

 (ここは8を代入するのか、10を代入するのか、どっちやねん)

 関西弁でツッコむも当然誰の耳にも入らず、僕はひたすら授業が終わるまで心の中で悶絶していた。



「三上さん、授業中、手が止まっていましたけど、何かありました?」

 (ぬおおお、それを訊くんじゃねえ、てか大体察せよ!なに平然と「手が止まっていましたけど」じゃ、普通にわからんかっただけしかないやろー)

 翔人のプライドが好きな人に自分の弱みを見せるというのを拒んだためか、それはやってきた

「今日の数学めっちゃ簡単やったよなー」

「それなーあれで間違えるやつどんだけw」

 (終わったー、「実は難しかったから教えてくれない?」と言おうとしていたけど言ってしまえば、石神さんに(なにこいつ、こんな問題も解けないの?」と馬鹿にされた挙句、見損なわれるに違いない、)

 翔人は内心涙目になりながら自らの死(数学の)を嘆いた。

「わからないんでしょ」

 すると彼女は少し口元に笑みを浮かべてこういった、少し大人っぽさもあるような言葉に僕は、素直に首を縦に振れなかった。

「んーあーいやそんなことはないよ、普通に簡単だったよ(笑)」

「誤魔化すの下手すぎ、代入ができないってことは数学やばいんじゃない?」

 (うぐふっ!?)

 自分の急所を抉るような、石神さんの真実を見抜いた言葉に僕は素直に

「はい…」

 首を縦に振ってしまった、あー終わりだ、僕の初恋が…

「教えてあげようか?」

「へ?」

 石神さんの思いもよらぬ発言に、僕は変な声を漏らした

「だから、わからないところ教えてあげようかっていうことよ、何回も言わせないで」

 そう言う石神さんは耳を赤くし、僕のほうを見てきた、

「で、どうする?教えてほしいの?そうじゃないの?」

 (正直、僕すごく今かっこ悪いかな、でも伸ばされた手を僕は…)

「はい、僕に勉強を教えてください」

「仕方…ないわね…今日の放課後学校に残ってしっかり勉強するわよ」

「よろしく、お願いします…」

 そうして、二時限目の予鈴が鳴った。



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