里奈の恋

「里奈先輩……どうすればいいですかね……」


「うーん……告白しちゃえば? 優しいんでしょ、その子。もし振られても今まで通り接してくれるかもよ?」


「それはそれで辛くないですか……?」


「まあ、とにかくしてみないと結果なんてわからないでしょ? 勇気を出して、告白しちゃいなよー」


 里奈は、風峰に言う。


「……わかりました。俺、勇気を出して告白します!」


「頑張って! 応援してるよ!」


「ありがとうございます! それじゃ、そろそろ行きますね。相談ありがとうございました!」


 風峰は立ち上がり、里奈の部屋から出て行った。

 風峰が出て行った後、里奈はベッドに寝っ転がった。


「うぅ……」


 里奈の目から涙が出てきた。



 高校の入学式の日、里奈は緊張していた。

 友達ができるかどうか、ちゃんとやっていけるかわからなくて不安だった。

 入学式が終わり、今日は解散となった。

 誰にも話しかけられなくて悩んでいた。

 里奈は、悩んでいてぼーっとしていたせいで、立っていた女子生徒にぶつかってしまった。


「あっ、すみません」


 里奈は謝り、その場を立ち去ろうとした。


「あっ、そのストラップ」


「ん? あぁこれ?」


 女子生徒は、里奈が好きなゲームのキャラクターのストラップをカバンにつけていた。


「もしかして、このキャラクター好き?」


「えっ、ま、まぁ……」


「実は、里奈も好きなんだー」


「そうなの?」


 同じものが好きな女子生徒と、三十分くらい話した。


「そういえば、名前はなんて言うの?」


「月宮里奈。里奈でいいよ」


「里奈は林道美奈江」


「じゃあ、これからよろしくね、美奈江ちゃん」


「こちらこそよろしく」


 これが、里奈と美奈江の出会いだった。

 そして、三日後に美奈江の家に行ったら片付けるのを忘れてたコスプレ衣装を見つけて、美奈江がコスプレ好きなことを里奈は知った。



「今日から二年生かー、なんか高校って一年が早く感じるねー美奈江ちゃん」


「そうね、なんでかしら」


 里奈は、美奈江と教室で話していた。


「そういえば、入学式って明日だよね?」


「そうよ」


「そっかー、明日かー」


 里奈は、入学式を楽しみにしていた。

 一年生の時は、里奈と風峰は一緒に通えなかった。

 だけど、明日からは一緒の学校に通うことになる。

 里奈には、人に言えない秘密がある。

 里奈は、後輩の風峰のことが好きなのだ。



 入学式の日の朝、里奈は校門で風峰のことを待っていた。


「あっ、里奈先輩!」


 里奈のことを見つけた風峰が声をかける。


「風峰くん、入学おめでとー」


「あっ、ありがとうございます」


 二人は、校門の近くで話し始めた。


「そういえば風峰くん。まだ彼女とかいないの?」


「え? いないですけど」


「えー、風峰くんモテそうなのになー。じゃあ、私が彼女になってあげよっか? ま、冗談だけどね」


 本当は、風峰と付き合いたいと思っている。

 だが、告白する勇気がなかった。



「俺と同じ名字の人がいたんですよー」


 入学式が終わった後、風峰は里奈の家に遊びに行った。


「そうなんだー。仲良くなれた? あと、男の子、女の子?」


「女子ですね。向こうから話しかけてきて仲良くなりましたよ」


「ふーん、女の子かぁ……。一目惚れとかしなかった?」


「可愛かったけど、一目惚れとかは……」


「そっか」


 この時、里奈はとても安心していた。

 告白するチャンスはまだあると。

 あとは勇気を出せるように頑張ろうと思っていた。



 里奈は、すぐにでも風峰と付き合いたかった。

 だが、怖かった。

 告白に失敗して、気まずくなって、風峰がどんどん離れていってしまうんじゃないかと考えてしまった。



 風峰が入学して、三ヶ月が経過した。


「風峰くん。高校には慣れた?」


「はい、友達もできましたし、いい感じです」


「前言ってた同じ名字の子は?」


「最近は一緒に勉強したりしてますね」


「ふーん……。あ、そうだ。私が風峰くんに勉強教えてあげよっか?」


「本当ですか? じゃあお願いします」


 そして休日、風峰は、里奈の家に行った。


「ここはこうやって……」


 里奈は、教えながら風峰に接近していく。


「なるほど……って、里奈先輩。ちょっと近くないですか?」


「あ、ごめんごめん」


 里奈は、風峰から少し離れた。


「あっ、トイレ行ってきていいですか?」


「うん、いいよ」


 風峰は立ち上がり、トイレに向かった。


「心を落ち着かせて……。今日は告白するぞ……」


 里奈は勉強を教えると言ったが、勉強を教えるのが目的ではない。

 風峰に告白することだ。

 扉が開き、風峰が入ってくる。


「じゃあ、再開しましょう」


「か、風峰くん!」


「ん? 何ですか?」


 私と付き合ってください。

 それを言えばいい。

 だが、言葉が出ない。


「あっ、えーっと……」


 勇気を出して、告白しようと頑張る。


「ごめん、何言おうとしたか忘れちゃった……」


 しかし、里奈に告白する勇気はなかった。


「忘れたんですか?」


「う、うん……」


 里奈は嘘をついて逃げた。



 里奈が告白しようとしてから二ヶ月。

 里奈に相談するために、風峰は里奈の家に来ていた。


「それで、相談って何?」


「実は俺、美咲……同じ名字の子に告白しようと思って……」


 里奈の表情は変わらなかった。

 だが、里奈はショックを受けていた。


「里奈先輩……どうすればいいですかね……」


 その子と付き合わないでほしい。

 私と付き合ってほしい。

 私と一緒に学校生活を送ってほしい。

 そう思っていた。


「うーん……告白しちゃえば? 優しいんでしょ、その子。もし振られても今まで通り接してくれるかもよ?」


 付き合ってほしくないのに、告白すればいいと言ってしまった。


「それはそれで辛くないですか……?」


 告白するのはやめようと言って、その後告白して、付き合えばいいと思っていた。

 だが、風峰がその子のことを好きなら、風峰がそれで幸せになると思うと、やめようだなんて言えない。

 それに、告白する勇気なんてない。

 どうせまた告白できない。


「まあ、とにかくしてみないと結果なんてわからないでしょ? 勇気を出して、告白しちゃいなよー」


 里奈は、風峰に言う。

 自分には勇気がないのに、風峰には勇気を出せと言う。


「……わかりました。俺、勇気を出して告白します!」


「頑張って! 応援してるよ!」


「ありがとうございます! それじゃ、そろそろ行きますね。相談ありがとうございました!」


 だが、その子はおそらく風峰のことが好きなのだろう。

 風峰はその子のことを里奈に何回か話したが、里奈は絶対にその子は風峰のことが好きだと思っていた。

 告白は絶対に成功する。

 風峰は立ち上がり、里奈の部屋から出て行った。

 風峰が出て行った後、里奈はベッドに寝っ転がった。


「うぅ……」


 里奈の目から涙が出てきた。

 風峰が別れない限り、告白はできない。

 だが、おそらく二人は、仲が良くて別れない、いいカップルになるだろう。

 チャンスはもう二度と訪れない。

 里奈は、長い間泣き続けた。



次の日、風峰に告白は成功したと言われた。

里奈の予想は当たった。

もう、里奈は風峰に告白することはできない。

だけど、風峰が好きな気持ちは変わらない。

だから、これからは風峰をサポートしていこうと思った。

風峰が別れて落ち込まないように、不幸せになって悲しまないように、相談に乗るようにした。



「風峰くん! 何か困ったこととかあったら、私に相談するんだよ!」


里奈は、風峰に言った。

それから風峰は、悩みがある時は里奈に言うようになった。



「そういえば里奈。里奈って風峰の悩みとか結構聞いたりしてない?」


「うん、美咲ちゃんと付き合い始めた頃に、困ったことがあったらすぐに私に伝えるように言ったからね」


「里奈って相談に乗るの好きだっけ?」


「いや別に。ただ、私は先輩だから、頼ってもらいたいなーって」


「なるほどね」


 里奈と美奈江は、話しながら課題の準備をする。


「さーて、終わらせるぞ!」


「ええ! 終わらせましょう!」


 二人は、少し残っている課題をやり始めた。

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