年越しパーティー

 今日は十二月三十一日。

 今年最後の日になった。

 俺は年越しパーティーの準備をする為に、美咲の家に向かった。


「うー、寒いな……」


 時刻は六時半。

 辺りは暗く、寒かった。

 美咲の家のインターホンを鳴らすと、美咲が出てきた。


「寒かったでしょ?入って入って」


 俺は、美咲の家に上がる。


「準備って言っても、年越しそば用意するだけだからすぐ終わるよ。だから、早く終わらせちゃおうよ」


「そうだな」


 俺と美咲は、年越しそばの準備を始めた。

 美咲の言っていた通り、お椀に麺つゆを入れ、そこにそばを入れて、ネギと天ぷらを乗せるだけで完成し、すぐに準備が終わった。

 そして、インターホンが鳴った。

 みんなが来たのだろう。

 俺は、美咲の代わりにドアを開けた。



「初めまして、南明音です!よろしくお願いします!」


 今日は春花と秋葉と里奈先輩、美奈江先輩以外にクラスメイトの明音も呼んだのだ。

 明音は、俺と美咲以外は初対面なので、今みんなに自己紹介をしているのだ。

 明音は友好的なので、みんなとはすぐに仲良くなった。



 年越しそばを食べ、みんなで色々な話をしていた。


「あ、そうだ。みんなで楽しもうと思ってこんなの持ってきたんだよー」


 里奈先輩は、持って来たトートバッグの中からボードゲームを取り出した。

 どうやら里奈先輩の手作りボードゲームらしい。


「受験を控えた受験生が何してるんですか……」


「まあいいじゃん。ルールはすごろくと同じで先にゴールしたら勝ちだよー」


 里奈先輩はそう言い、ボードゲームをテーブルの上に置く。

 俺は、マスに何が書いてあるか少し見た。

 マスには、恋話をしたら二マス進む、幼年期を語ったらもう一度サイコロを振る、などと書かれていた。

 すごろくをしながら色々な話をしようという考えなのだろう。

 順番は、俺、美咲、明音、里奈先輩、秋葉、春花、美奈江先輩の順番になった。


「まずは俺からだな」


 俺はサイコロを振った。


「三だな」


 コマを掴み、マスを移動する。


「えーっと……次に六が出た人に告白……告白⁉︎」


「ちなみに本当の告白じゃないからね?セリフを考えて言うだけ」


 里奈先輩は言う。

 マスをよく見たら、告白しなければいけない時に告白をしなかったらスタートに戻ると書かれていた。

 なので、俺はどんな感じに言うかを考えることにした。


「えーっと、次は私だね」


 美咲はサイコロを手に取り、転がす。


「五マスだね。なになに、誰かにいい子いい子と言いながら頭を撫でたら次のマスへ……」


 美咲は俺を見る。

 そして、いきなり俺の頭を撫でてきた。


「いい子いい子……風峰はいい子だよー」


 そろそろいいだろうと思ったが、美咲はやめてくれない。


「も、もういいだろ!恥ずかしいからやめてくれ!」


「はいはい。じゃあ、次は明音ちゃんね」


「はいはーい。えいっ!……四かー。次の番の人と記念撮影。拒否したら二マス戻るだって」


「明音ちゃんの次だから私だねー。それじゃあ、美咲ちゃん撮影よろしくー」


 里奈先輩は携帯を美咲に渡す。

 そして、明音と二人で並ぶ。


「じゃあ撮りますね」


 パシャ、という音が鳴る。


「あら、いい感じに撮れてるじゃない」


 美奈江先輩が写真を見ながら言う。


「ありがとねー明音ちゃん」


「いえ、こちらこそありがとうございます!」


 二人が座り、ゲームは再開した。


「次は私の番だね。よっ!……六か……」


 里奈先輩は俺のことを見てニヤリと笑う。


「はい!風峰くんどうぞ!」


「……好きでーす付き合ってくださーい……」


 俺は、嫌がりながら言った。


「気持ちがこもってないなー。もう一度」


「好きなので付き合ってください!」


「嫌だよ!」


 里奈先輩は、満面の笑みで言う。

 なんか、とてもムカついた。


「あ、そうだ。マスになんて書いてあるか読まないと。なになに、交通事故で怪我。一回休み……」


 告白するとかそういう変なマスしかないのかと思っていたが、普通のマスもあるようだ。


「それじゃあ、次は私ね。……一かぁ……。えっと、次に五を出した人がゲーム中はお兄ちゃん、またはお姉ちゃんだって」


「私の番……。……二だね……。……ヒッチハイクに成功、五マス進む……!」


「次は私ね、……五ね。ってことは……」


 美奈江先輩は秋葉のことを見る。


「……美奈江お姉ちゃん……?」


 美奈江先輩の体が、一瞬ビクッと動いた。


「か、可愛い……!」


 美奈江先輩の目がキラキラ輝いているように見えた。

 そして、二ターン目が始まった。

 それから、二ターン、三ターンと、俺たちはどんどんゲームを進めていった。

 そして、最終的に美咲が一番でゴールした。


「おめでとー!はい、これ一位の人へのプレゼント」


 里奈先輩は、ボードゲームが入っていたトートバッグから、白い箱を取り出した。

 中には、薄いピンクの色をしたハンカチが入っていた。


「可愛いハンカチですね!ありがとうございます!」


 美咲は、それを大切そうにポケットにしまった。



 ボードゲームが終わった頃には、すでに十時になっていた。


「あと二時間だね」


 美咲は言う。

 やることがなかった俺たちは、テレビを見始めた。



 十一時半が過ぎた頃、この部屋にいた全員は眠っていた。

 暖かい部屋でテレビを見ていたからだろう。

 そして、寝たまま都市が変わってしまった。



「んんぅ……。……はっ!」


 美咲は目が覚めた。

 時刻は、既に夜中の一時だった。

 みんなは眠っていた。

 起こそうと思ったが、既に一時なので起こしちゃ悪いと思い、起こすのをやめた。


「みんな、あけましておめでとう……」


 美咲は、小声でそう呟いた。



 里奈と美奈江は、神社に来ていた。

 お金を賽銭箱に入れて、鐘を鳴らす。


「……よし、これで大丈夫かな」


 二人は、受験で合格できるように神社にお参りしに来たのだ。


「そういえば、私たちって志望してる大学って違うんだよね……」


「そういえばそうね」


「だから、美奈江ちゃんと離れちゃうと寂しいなー……」


「寂しいって……。別に、里奈も私も寮とかに入るわけじゃないし、休日には遊べるじゃない」


「わかってないなー。ほら、学校で会えて、一緒に授業するっていうのがいいんじゃん」


「た、確かに……」


 美奈江は納得した。


「それに、だんだん会わなくなっちゃうかもしれないし……」


 里奈は不安だったのだ。

 大学に行ったら、美奈江と会う回数が減って、そのうち会わなくなってしまうのではないかと。


「……里奈、ちょっと私の家に来てくれない?」


「え?別にいいけど」


 二人は、美奈江の家に向かった。



「はい、これは私からのプレゼント。私たちの友情の証。まあ、この前なんとなく作ったやつなんだけど……」


 美奈江は、里奈に渡す。

 里奈は、美奈江からそれを受け取る。

 美奈江の手作りだと思われる、とても可愛らしいお守りだ。


「里奈と私は離れていても、ずっと仲良しよ。でも、もし私を忘れそうになったら、それを思い出して」


「美奈江ちゃん……!あ、そうだ!じゃあ私もお守り作って美奈江ちゃんにあげるよ!」


「本当?嬉しいわ、ありがとう、里奈」


 里奈と美奈江は、とても嬉しそうだった。

 お守りを喜んでもらえて、お守りをもらって。

 この二人は、これからも仲のいい親友でいるだろう。

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