四人でお片づけ

 春花と秋葉が引っ越してきた次の日の昼休みに、春花と秋葉に早速手伝って欲しいって言われた俺と美咲は、一度家に帰った後、二人の家に行くのだった。

 二人の家は俺の家から少し離れた所にあるマンションの一室だった。


「ここか……」


 俺はインターホンを押す。

 すると、ドタバタと足音が聞こえてきた。

 そして、ドアが開かれる。


「あっ、先輩!それじゃあ、早速お願いしますね!」


 そう言うと、秋葉は戻って行った。


「それじゃあ頑張ろ、風峰」


「ああそうだな」


 俺と美咲は靴を脱ぎ、部屋に入った。


「あっ、すまん、トイレ貸してくれないか?」


 俺は秋葉に言う。


「入ってすぐ右のドアを開けた所がトイレです。自由に使ってください」


 秋葉の許可をもらった俺は、トイレへと入る。


「じゃあ、私は先に手伝ってるね」


 そう言うと、美咲は奥の部屋へ向かった。

 俺も早く済ませて、手伝いに参加することにした。



 トイレにいる時に、春花がいないなと思った。

 俺はトイレから出た。

 その時に、奥の部屋以外の部屋があることに気がついた。

 ドアには、春花と秋葉の部屋と書かれた小さな看板がぶら下がっていた。

 俺はここにいるのかと思い、ドアを開けた。


「うおっ!」


 俺は速攻でドアを閉めた。

 部屋には春花がいた。

 しかし、春花は寝ていた、下着姿で。

 可愛いピンクの下着を着ていた。

 俺は見てはいけないと思い、速攻でドアを閉めたのだ。


「風峰ー、早くー」


「お、おう……」


 さっきのはなかったことにしよう。

 俺は何も見なかった。

 美咲が呼んでいるので、俺はすぐに向かった。



「それで、何をすれば……って汚い!」


 リビングは雑誌や着替えが散乱しており、美咲と秋葉が整理していた。


「風峰ー、早く手伝ってよー」


「なんでこんなに部屋が汚いんだ……?」


「引っ越したばかりで忙しくて、片付ける暇がなかったんですよー」


「ちゃんと出したら片付ける、服も脱ぎ捨てなければこんなに散らからないだろ……」


「あー……そうですね、ははは……」


 まあ、手伝うって言ってしまったからには仕方がない。

 俺は散乱した雑誌をまとめることにした。

 雑誌の内容でまとめようとしたので、ファッションの雑誌などが多く、まとめるのが楽だった。

 俺がまとめていると、雑誌に何かが挟まっていることに気がつく。


「ん? なんだこれ……」


 俺は雑誌を開いた。

 なんとそこには、ブラジャーが挟まっていた。


「……は?」


 なぜ、雑誌にブラジャーが挟まっているのか、俺には理解できなかった。


「ちょっと待て、なんで雑誌にブラジャーなんか挟んであるんだ!?」


「えーっと、雑誌読んでて、急に眠くなったからその場で昼寝しようとしたんだけど、ページわかんなくなったら嫌だからそれを……」


「挟んじゃダメだろ……」


「あの……先輩……」


 すると、部屋に春花がやってきた。

 俺が大声を出してしまったせいで、起きてしまったのだろう。

 春花は目をこすりながら眠そうな顔をしてこちらを見る。


「すみません、先輩たちが手伝ってくれてるのに、私寝てて……」


 春花は俺たちに頭を下げて謝る。


「いや、別に大丈夫だ。それより、大声出して起こしちゃってごめんな……」


「いえ、寝てた私が悪いので……」


「でも……」


「もういいよ!」


 無限ループしそうだったところを、美咲が止める。


「早く片付けてゆっくりしよ」


「……それもそうだな。よし、早くかたずけよう!」


 片付けに春花を加え、俺たちは片付けを進めた。

 片付けをしている途中、秋葉が、


「先輩、トイレ行ってた時、なんで驚いたんですか?」


「え?」


 トイレに行った時に驚いた。

 トイレから出た後、二人の部屋のドアを開けて、下着姿で寝ている春花を見てしまい、驚いて声を出した時のことだろう。


「まさか、私たちの部屋を……春花が寝てたのに……」


「風峰ー、女の子の部屋覗くのサイテーだよー」


 このままでは見たことがバレてしまう。


「いや、見てない!見てないから!」


「本当ですかー?もし嘘だったら、警察に……」


「すみません見てしまいましたぁ!」


 俺は勢いよく頭を下げて謝罪した。

 考える前に体が動いたのだ。


「だってー、春花。どうする?」


 秋葉はニヤニヤしながら春花のことを見る。


「……一回だけ」


「ん?なに?」


「一回だけ、お兄ちゃんって呼ばせてくれたら……許します……」


 この場にいた春花以外の人は理解ができなかった。

 なぜ、お兄ちゃんなのか。

 実際、俺の妹だが、春花には伝えてないず。


「春花……なんでお兄ちゃんなの……?」


「風峰先輩を見てたら、なんかそう呼びたくなっちゃって……」


 春香は顔を赤くしながら言う。


「……だそうです」


「恥ずかしいが……春花がそう言うなら……」


「……風峰お兄ちゃん……」


 春花は俺に言った。

 その時の春花は、とても可愛かった。


「……恥ずかしいな……」


 俺まで恥ずかしくなってきてしまった。


「……じゃあ、片付け続けよう」


 美咲はそう言うと、片付けを再開した。

 春花も片付けを再開した。

 しかし、秋葉は片付けを再開しない。


「先輩……耳をこっちに……」


 俺は言われた通り、耳を向ける。


「美咲先輩には、春花の下着姿を見たことは黙っておいてあげます」


 それだけ言って、秋葉は片付けを再開した。

 二時間後、片付けが終わった。

 物が散乱していた部屋は綺麗になり、スッキリした。

 片付けが終わり帰ろうとしたが、お菓子を食べてくれと言うので、ありがたくいただくことにした。


「それじゃ、お菓子と飲み物用意しますね」


 秋葉は棚を開ける。

 クッキーの箱と皿とコップを取り出すと、こちらに持ってきた。

 クッキーの袋を開け、皿に入れる。

 飲み物は、春花が冷蔵庫から牛乳を持ってきてくれた。


「先輩、どうぞ……」


 春花が牛乳をコップに入れる。

 俺は牛乳を半分ほど飲んだ。


「そういえば美咲先輩。風峰先輩とどんな感じで付き合うことになったんですか?」


「私も知りたいです……」


「普通に告白されただけだよー。ね、風峰?」


 美咲は、俺と美咲が付き合うきっかけを言う。


「えー!風峰先輩から告白したんですか⁉︎てっきり、美咲先輩から告白したかと……風峰先輩、自分から告白とかしなさそうですし……」


「悪かったな……俺からで」


「それで、なんで美咲先輩を選んだんですか?」


「なんでって……」


 優しくて、頼りになって、俺のこと気にしてくれてたから。

 なんて、恥ずかしくていえない。


「私の魅力に引きつけられたんだよねー」


 そう言って、腕に抱きついてくる。


「やめてくれ」


 俺は腕を引っこ抜く。

 しかし、美咲はまた腕に抱きつこうとした。

 そしたら、美咲が俺の体に乗ってきて、押し倒されてしまった。


「大丈夫ですか……?」


 春花が俺と美咲に聞く。


「ああ、大丈夫だ……って……」


 美咲は、俺の上に乗ったまま倒れていた。

 俺の体に抱きつくように。


「み……美咲!ど、どど、どいてくれ!」


 腕に抱きつかれたことは何回もあるが、正面から抱きしめられたことは一回もない。

 俺は恥ずかしくなって、美咲を起こす。


「ごめんねー風峰ー。えへへ」


 美咲は笑いながら、俺に謝る。


「二人とも怪我してないですよね⁉︎」


「ああ、大丈夫だ」


「よかった……」


 秋葉は安心したらしい。


「美咲先輩……これからは、気をつけてくださいね……」


「いやーごめんねー」


 美咲は、春花と秋葉にも謝った。


「まったく……」


 俺は、残った牛乳を飲んだ。


「それで、なんで告白したんですか?」


「優しくて、頼りになるし……」


 恥ずかしかったが、俺は言った。

 またあんなことにならないようにするために。


「えー?本当?実は、私の見た目だけで選んだとかじゃないのー?」


「お、俺は見た目だけじゃ選ばない!絶対だ!」


 俺は断言する。

 恥ずかしくて恋愛話をしたくなくなった俺は、話題を変えることにした。


「と、ところでさ。二人は、なんで転校してきたんだ?」


「お父さんの転勤でこっちにきたんだけど、二人が自立できるようにって言って、この部屋を借りてくれたんです!」


「そしたら、この辺には私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんが住んでるって、お父さんが言ってたんですが……」


 二人は言う。

 お兄ちゃんは俺のことで、お姉ちゃんは美咲のことだろう。


「でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんは見つかってないんだよな」


「そうなんです。頼ろうと思ったのに、見つからなくて」


 実はもう見つかってるぞ、とは言わず、黙っておく。

 二人に、俺は二人のお兄ちゃんだ、なんて言ったら、美咲が俺の妹だということがバレてしまう可能性がある。

 二人には申し訳ないが、言わないことにした。



 クッキーを食べ終わり、牛乳もみんな飲み、春花が皿とコップを洗おうとしていたので、


「手伝うよ」


 と、声をかけた。


「いいんですか……?」


「ああ」


 俺は、春花の手伝いを始めた。


「じゃあ、私は秋葉ちゃんのお手伝いするー」


 美咲は、秋葉の手伝いをするようだ。


「それじゃあ、クッキーの箱と、洗った皿とコップを拭いて、片付けてください。私はテーブルを拭きますので」


「了解!」


 美咲はそう言うと、手伝いを始めた。

 俺も春花の手伝いを始めようとした時に、


「あの……風峰先輩と美咲先輩、本当に私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいですね……」


 と、春花が言ってきた。


「なんでだ?」


「私たちの部屋の片付けと後片付けを手伝ってくれて、それに、優しくて……」


 まあ、お兄ちゃん、お姉ちゃんみたいじゃなくて、本当のお兄ちゃん、お姉ちゃんなんだけどな、と言いたいが、言わないでおく。



 片付けが終わった俺たちは、帰ることにした。


「先輩!また来てくださいね!」


「先輩……さようなら……」


 二人は俺たちに手を振る。

 俺と美咲も手を振って、ドアを閉めた。


「二人とも、すごい仲良しだったね!私たちも、あの二人みたいに仲良くなりたいねー」


 そう言いながら、腕に抱きつく。


「……あれ?振り払わないの?」


「……俺と仲良くなりたいんだろ?だったら今だけは……まあ……」


「本当に⁉︎それじゃ、このまま帰ろ?」


「ここを出るまでだ!それ以降は恥ずかしいからダメだ」


「えー?いーじゃーん」


「ダメだ!」


 そう言ったが、マンションを出ても美咲は腕を離さなかったので、仕方なく腕を抱かれたまま帰った。

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