俺の彼女が妹だということをみんなは知らない

Melon

1章

1章 プロローグ 俺の彼女は妹

 俺には彼女がいる。

 彼女はとても可愛いし、周りからも人気だ。

 しかし、俺の彼女には俺しか知らない秘密があった。



「風峰ー。一緒に学校行こー」


 外から声が聞こえる。

 俺は目をこすり、カーテンを開けた。

 外の光が眩しかったが、我慢して声のする方を見た。


「風峰ー。あっ!まさか今起きたばっか!?」


 そこに立っていたのは俺の彼女、島原美咲だった。


「そうだよ今起きたばっかだよ。今着替えてそっち行くから待ってろ」


 そう言うと俺、島原風峰はカーテンを閉めて窓に鍵をかけ、制服に着替え始める。

 制服に着替えた俺は、カバンを持って靴を履いて外に出た。

 美咲は家の前で待っていた。


「遅いよー!これからはもっと早く起きてよ!」


「お前が早すぎるんだろ……俺の家から学校まで歩いて二十分だぞ……八時半までに着けばいいのになんで七時半にくるんだ?」


「なんでって……風峰に早く会いたいからに決まってるでしょ?」


「なっ……!恥ずかしいからやめろ。そういうことを普通に言うのは……」


「えーなんでー?だって本当のことだしー」


 そう言いながら、美咲は俺の腕に抱きついてくる。


「恥ずかしいからやめろ!」


 俺は美咲を振り払う。


「いーじゃん別にー」


「よくない!」


 こんな感じのやり取りを通学の時に毎回している俺は、学校に着いた頃には疲れてしまう。

 美咲は俺の腕に抱きつく、俺はそれを振り払うという攻防戦を繰り広げながら学校に向かって歩いていると、


「お!島原カップルじゃん!おはよー」


 後ろから声が聞こえた。

 声の主は南明音。

 明音はクラスメイトで、一番最初に俺たちのことを島原カップルと呼び始めたやつだ。


「おはよー。明音ちゃん」


「今日も二人でイチャイチャしながら登校?仲良いねー」


 明音はニヤニヤしながら言う。


「俺たちはイチャイチャなんかしてないぞ」


 俺は否定した。


「えー、でも、さっき美咲ちゃんが風峰の腕に抱きついてたような……」


「抱きつきたくても風峰が振り払っちゃうんだよねー」


「恥ずかしいんだよ……」


 彼女に腕を抱きしめられながら登校するなんて恥ずかしすぎて我慢できない。

 だから、毎日抱きついてきても振り払っているが、美咲は諦めずに毎日毎日抱きついてくるのだ。

 そんな美咲と俺は半年付き合っているが、美咲には俺にしか知らない秘密があった。



 数ヶ月前、父さんが急に話があると言い、部屋にいた俺をリビングに呼んだ。

 そして、父さんは俺に言ったのだ。


「実は、お前は双子だったんだ……」


 俺は生まれてからずっと一人っ子だと思っていたから、この言葉を聞いた時は驚いた。


「お前が一歳の時に俺と母さんが昔離婚したのは知ってるよな?その時、お前の妹は母さんについて行ったんだ。名前は美咲、島原美咲だ。ちなみに、今はこの辺の学校に通ってるらしいんだが、聞いたことないか?」


 そう、俺の彼女、島原美咲は俺の妹なのだ。



 だが、俺は美咲にはお前が俺の妹だということを言っていない。

 お前は俺の妹だなんて言ったら、多分別れようと言われるからだ。

 兄と妹が付き合ってるなんておかしいし、周りから変な目で見られる。

 美咲だって変な目で見られるのは嫌なはずだ。

 だから、俺は言わないで黙っている。



 俺たちは教室に着くと、教室がいつもより騒がしいことに気がつく。


「なになにどーしたのー?」


 美咲が数人で話していた女子に話しかける。


「なんか騒がしいね」


 明音も会話に参加する。


「今日一年生の転校生が来るんだって。しかも二人」


「へー。風峰ー、転校生だってー」


「一年の転校生?だからこんなに騒がしいのか」


 このクラス、二年一組は転校生に興味がある人が多い。

 だから、転校生が違う学年だろうと話題になるのだ。


「どんな子なんだろうねー」


 俺と美咲が話していると、担任がやってきた。

 俺は席に座ろうとしたが、明音に呼び止められる。


「ねえ!後でその転校生に会いに行ってみない?」


「行こうよ!風峰!」


 二人にそう言われ、俺は昼休みに転校生の教室へ行くことにした。



 時刻は一時、俺たちは昼ご飯を食べて、転校生のある教室に向かった。


「すみませーん、転校生ってどの子?」


 明音が教室を覗き込んで大声で言う。

 すると、人に囲まれていた二人の女の子がこちらに来た。


「あの……何か用ですか……?」


 身長が低く、長い髪の毛がサラサラしていて可愛らしい。


「私たちに何の用ですか?」


 こちらも身長が低い。

 だが、こちらは髪の毛がそこまで長くなく、大人しそうなもう一人と違って活発そうな子だ。


「転校生が来たから挨拶しようかなーって!」


「そうなんですか?それじゃあ、えっと、私の名前は、島原春花です……」


「私の名前は島原秋葉!よろしくお願いします!」


「ん……?」


 俺は、島原という名字に反応した。


「風峰ー、この二人、私たちと同じ島原の名字だよー!すごくなーい」


「えっ⁉︎」


 転校生、島原秋葉は驚く。


「あの……お二人に聞きたいことがあるんですが……」


「な、なんだ?」


 もしかして、と思いながら返事をする。

 いやまさかと思っているが、春花の次の言葉で俺は確信した。


「もしかして、お二人は私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんですか……?」


 この二人も俺の妹だと。



「……いやいや、違うよー絶対。私たち、偶然同じ名字なだけだし」


 美咲は春花の言葉を否定する。


「でも、この辺に私たちのお兄ちゃんとお姉ちゃんが住んでるって聞いたんだけどな……」


「いやいや、そんなことないと思うよ!ははは!」


「そうですか……私たち、二人だけで暮らしているので、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいれば頼れるかなって思ってたので……」


 春花はしょぼんとしてしまう。


「だったら、お兄ちゃんとお姉ちゃんの代わりに、二人を頼れば?」


 明音が提案する。


「そうだよ!先輩の私たちを頼っていいよ!ね、風峰?」


「本当⁉︎」


「本当ですか……?」


 美咲は俺の方を見て言う。

 手伝いくらいなら別にいいかと思ったので、


「ああ、いいぞ」


 そう答えた。

 そして、休み時間が終わりそうなことに気がつく。


「そろそろ戻ろー、次の授業の準備しないと」


 美咲が俺の腕を引っ張る。


「ああ、そうだな。それじゃ」


 俺は二人に手を振る。

 美咲と明音もじゃあねと挨拶をして、俺たちは教室へ戻った。



「父さん!俺の妹は一人だけじゃないのか⁉︎」


 俺は家に帰ってきた父さんに向かって大声で言う。


「なんだよ急に大声出して……」


「いいから教えてくれ!」


 父さんは頭を掻きながら面倒くさそうに言う。


「お前と一緒に生まれた美咲と、お前の一個下の春花と秋葉、この三人だけだ。美咲はこの辺りに住んでるらしいが、春花と秋葉は今どうしてるかわからないな……」


 父さんから二人の名前が出てきた。

 つまり、転校生の島原春花と島原秋葉も美咲と同じ、俺の妹ということだ。

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