第66話 たどたどしい箸使い

 妻は骨と灰と、そして煙になった。

 この姿になってしまうと、ただただ無個性だ。今まで抱いていた憤りや悲しさも、灰になってしまったようだ。

 癇に障る女だと胸中で吐き続けた自分が、悪者に思えた。宇宙人エイリアンのように感じられた彼女も、やっぱり人間だったのだ。

 骨はカラカラと軽かった。というのはどうにも使い勝手が悪い。

 急に彼女を愛おしく感じた。

 初めて出会ったときのように、無垢だった。

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