第60話 野球界から数字を追い出すと

「ぼくに協力して欲しい。『無気力三振委員会』を潰してやるんだ。あれは、ガンだ」とダンシング・ドールは言った。

「……」

 私は返答に詰まる。

 そうだよな。さすがに彼でも、数字を追い出すなんて。

「このままじゃあ、野球はさらに腐っていく。投手が野球を放棄するなんて、ぼくには許せない」

「私にそんな力はないよ」

「ぼくだって徒党を組むのは嫌いだ。でも、これは一大事なんだよ」

「よしてくれ。波風立てたくない」

 今までその腐った空気を吸って、ボールを投げてきたんだ。

 ガンなんて、そんなに大げさなもんじゃない。せいぜい、たんこぶくらいなもんでさ。

「やめておくよ」

「人は人だとでもいいたいのかい?」

「ちがう。もっとこう……」

「なんだい?」

「わからない。でも、そういうのは何か違うんじゃないか」

 そうさ。

 何かが違うんだ。

 ダンシング・ドールは、「無理にとは言わないけど」と相も変わらずの爽やかな表情のまま去っていった。

 途端に、急激な眠気に襲われた。

 目を閉じると、すんなりと眠りにつくことができた。

 最近、夢を見ていない。

 まるぽちゃは、元気だろうか?

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