第34話 下世話な妻だけど、愛したいんだ

「『かめあたま山』はね、自分の頭のてっぺんから、男のあそこが生えちゃった男の話。つまり頭に一本、腰に一本ってね。これがね、またよくできた特殊メイクなのよ。てらてらして、赤黒くて。『頭』が膨れるとね、鏡の代わりになっちゃうくらい、ピカピカで綺麗なの。ま、作りものだからってのもあると思うけれど。その頭のモノはね、男が元々持ってたモノより立派で、美しく反っているのよ。男はわけがわからない気持ちと一緒に、妙な嫉妬心を抱くわけ。男は入社したてのサラリーマンなんだけど、やむなく出社するの。もちろん、ニット帽をかぶってね。ただ、勃起するといけないから、なるべく擦れないようにガーゼをかけて。それで余計なことを考えないように、頭をからっぽにして。でもね、出社してすぐ、隣の席の同僚が『おかしなニオイがするぜ?』って騒ぎ立てるの。が蒸れちゃったのね。男はすぐに帽子を脱がされて、ガーゼを剥がされるの。集まった同僚の女たちから『ボコボコした血管がそそるわ』なんて口説かれたりしちゃうのよ。それまでだったその男がよ。女たちは男と寝るけど、彼自身のモノには指一つ触れない。その頭の上の棒だけを求めたのよ。男は思わず『俺のことなんか放っておいてくれ! このアバズレども!』なんて怒鳴っちゃって、辞職しちゃうの。そのうち、誰からも敬遠されるようになる。孤独になった男はね、マスターベーションをしながら、あることに気付くのよ。それは、自分の頭のてっぺんのモノこそが最高のパートナーだってこと。男はすぐに体を丸めて、自分の尻の穴めがけて、頭を振りまわしたのよ。欲望におぼれ死んで、昇天。最高の愛だわ」

 気分が悪い。私が大嫌いな類の話。

 いくらパロディと言っても、もうちょっと可愛げのある話にしたらどうなんだ? (その話が、オカズになるとは到底思えない)

「さらにその男は、ヨガを習っていたから簡単に結合できたの。とっても素敵な後付けだと思わない?」

「どこに素敵な要素があったんだ?」

 私はボウル一杯分の吐き気を催しながら、無理やり笑顔を作った。

 どうにか妻を愛してやりたかったのだ。

 私のエゴだろうか?

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