第10話/私の考えたこと(われめ)

 彼女は詩人だった。

 その詩人というのも、子どもだましの愛を謳い、小鳥と囁き合うような詩なら、なんの問題もなかった。

 だけど彼女はいわゆる『ゼンエイ』詩人だったのだ。

 世間からはとか、とか、そんな風に呼ばれていたと思う。

 理解に苦しむことではあるが、彼女の著作はまずまずの売れ行きだったようだ。私なら、汗水たらして稼いだ金を、あの本に使うなんてことはしない。

 彼女の詩は、たとえばこんな感じだった。


 タイトルは、

『浮遊する兵士たちのずかずか行進を見て、右メガネ越し、コーヒーを人啜り、私の考えたこと禅問答』。

(タイトルからして、馬鹿げている)




 われめちゃん→




                   』


 だそうだ。

 なぁ、馬鹿げているだろう?

 それとも私がおかしいっていうのか?

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