第145話 先送りにしていた問題
「いやぁ、春だねぇ~」
と俺は、咲き乱れる花を眺めながらホッコリしていたら、シシリーさんに、
「ポルタ、次が待ってるよ…」
と言われた…俺がヒョイと見たシシリーさんの後ろには、嫁立候補者が横一列に並んでいる…
「えっ、もうシシリーさんとの新婚生活は終了ですか?」
と驚く俺にシシリーさんは、
「式はいつでも良いけど、私だけ奥さんは寂しい…」
という…たしかに留守がちだったし、仲良しの中で立場が違うの自分だけだからなぁ…言い返せないよ…
ルルさんも留守がちな俺に寂しさを覚えているらしいのか、最近ヨルドにいる間はボディーガードの様にピタリと俺の背後をキープしてつき歩いている。
しかも、なんとアゼルにまで春が来て彼女が出来た…
『まぁ、アゼルは何処でもモテモテだったけど…』
しかし、その事によりメリザが焦り、
「私は最後でも構わない」
と健気な事を言いだしていたが、『次を早く!』との圧が凄い…
ジェラも、
『このペースなら何年かかってしまうのか?』
と心配になっているようで、俺としては列車完成に合わせて結婚式をしても良いし、新たな街が完成した時でも構わない…
ただ、寂しかったり、不安にさせたり、放置するのはよろしくないな…と反省して、デートと云う名の個別面談を行うが三人共に本気らしい…
ルルさんは、
「ポルタ様、とりあえず私だけ(さん)付けは寂しいです。
皆より距離が有る気がします。」
と言われ、
俺が、
「だったら、俺も(様)は無しでよろしく、ルル」
と言って、「ポルタ」、「ルル」とぎこちなく呼び合うデートをした。
メリザは、
「アゼルがラブラブで気まずいから、依頼にも誘えないし、アタシ、もう、ポルタ兄ぃと行動する!」
とか言い出す。
色々と理由を付けているが、メリザの性格は誰よりも良く知っている…
これは、『一緒に居たい!寂しいよ~!!』の意味である…
アゼルもよく言ってたな、
「あの、メリザの相手出来るのポルタ兄ぃぐらいだ。」
とまぁ、有る意味、一番気心が知れた女性ではある。
シェラは、
孤児院の頃からアゼルとメリザをずっと羨ましく思っていたらしい。
『いつも一緒にいる身内が居ていいな…』
と…そんな中で、いつも俺がシェラと手を繋いだりとペアで遊び回る二卵性双子と、俺とシェラの組に別れて居ることが多かった事もあり、
将来お兄ちゃんのお嫁さんになって本当の家族になるのが夢だったらしい…
「院のじゃ無く、本当の家族を作るならポルタ兄ぃとじゃなきゃ嫌っ!」
と、有る意味プロポーズをされてしまったのだ。
だからという訳ではないが、
『…これは本腰を入れる必要があるな…』
と覚悟を決めた俺だった。
そうと決まれば、先ずは素材集めだ。
隠密騎士団三名を連れて帝都に転移して、一人は希少金属等の買い出しを頼み、残りでカーバンクルの居る森を目指す。
索敵能力の高い隠密騎士団にかかればレア魔物と云えど一発である。
「ニィー?」
と可愛らしい鳴き声のカーバンクルが俺を見つめて、
『虐めるの?』
みたいな顔をするが、俺は心の中で血の涙をダクダク流しながらカーバンクル君をサクッっと狩る…
物凄い罪悪感に襲われるが…仕方ないのだ…許してくれ…
ルビーはルル、
エメラルドはメリザ
サファイアはシェラと、三人用の婚約指輪用のカーバンクル産の最高級の宝石が手に入った。
ちなみに、サファリにもカーバンクルは居るが、流石に住民に愛されている展示魔物を額の宝石欲しさに殺すほどゲスでは無い…だから野生のカーバンクル達…すまん…
というイベントがあり、あとは、婚約指輪はゴング爺さん爺さん達職人組に依頼するのだが、
結婚指輪は、前回同様にビューティーさんペアさん親子に依頼して、毒無効、精神攻撃耐性の付与された物を依頼する。
転移のリストに新しい街を加える際に、ガイナッツ王国を外して登録しようか?と悩んだが、オーツを外して登録して良かった…
『凄腕付与師はペアさんぐらいしか知らないからな…』
そして、シシリーさんの時と同じデザインの婚約指輪と結婚指輪が出来たのが夏の終わりだった。
そして、プロポーズをするのだが…
何故か、三人からは、
「もし、プロポーズされるなら三人一緒で!」
と注文されている。
シシリーの時は仕方ないが、
残りのメンバーは、プロポーズで三人に優劣が現れるのでは?と不安になり、
「可能な限り同じで!」
と言い出したのだ。
多分、自分に自信の無いメリザ辺りが言い出したのだろうが…何とも色気の無い注文である。
『プロポーズの思い出が1/3に薄まらないか?』
などと、考えていたらルルからは、
「私はシシリーさんと同じカフェでして欲しいです。」
と、お願いされシェラは、
「シシリーさんの時のプロポーズの話を聞いて憧れてたから私も!」
と言い出し、
結局、カフェでパンケーキをはさみ指輪を渡してチューの流れを同時進行で…という事に決まってしまったのだ。
本人達はとても幸せなそうだったのだが、俺はかなり恥ずかしいかった。
そして、店に居合わせた観客は…シシリーの時と違いかなりドン引きだった様である。
後日カフェのオーナーから、
「ポルタ様、恋人たちの聖地だったのに、現在は、三股の聖地としてモテたい男性客が増えて、店の味を楽しみに来た女性客に声をかけてフラれては、御利益が無い!と来なくなり、
常連だった女性は、声を掛けられるのが面倒臭い!と来なくなり…勘弁してください。」
と、泣き付かれてしまったのだった。
何か…ごめんよ…
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