第144話 喜びの春の訪れ


季節は春…

やっと済んだ…半年…長かった…

まだ全く街は出来て居ないが、街の設計や工事の進行などは、我が家の知恵袋サントスさんにバトンタッチ出来た。


そして、我がヨルドの街の高度な教育を受けた、あのヨルドの街の戦争孤児達が沢山我が家の新たなる文官職になってくれ、サントスさんを助けてくれるのでお仕事がはかどる事、はかどる事!


新たな街も、ヨルドの街もお任せでも問題なくまわっている…


それに、狩りパークで強くなった冒険者達は、普通のクエストもガンガンこなしはじめており、冒険者ランクを上げた後、新しい俺の街の兵士団に名乗り出てくれて、現在は、ヨルドの街の兵士長だった経験のある、エドガー騎馬隊長を団長として、タリウスと二人で仮設の警備隊として新兵の教育も兼ねて工事現場の警備を指揮している。


サントスさんのお手伝いにガングロをつけたのだが、サントスさんとえらく気が合うみたいで、ガングロ情報網で様々な情報を集めては二人でなにやら企んでいるようだ。


もう、可能ならばサントス国王として頑張ってほしいよ…

ただ、凝り性の性格から、サントスさんはガングロと一緒に新たに作る街の地下になんだか凄い闇の一族の国を作ってしまっているらしい…


「他国にも情報網をはる!」


と、意気込んでいるが…頼りにはなるが諜報員がアレなので何か嫌な感じがしてしまう。


まぁ、任せたのだから文句は言わないけどね…


そして、なんとヨルドからファミリー牧場とサファリパークの外周をぐるりと巡るミニ列車が完成したと報告が入り見に行ったのだが、魔鉱鉄のボディーで寝そべったクマ五郎がモチーフだった。


なんで、クマ五郎?と、思ったが…ゴング爺さんの


「可愛いじゃろ!?」


の発言で俺は質問を飲み込んだ。


魔鉱鉄の黒いクマ五郎がゴーレムで魔石を燃料に動き、アリス達が作った溝に沿って走る様な作りにしてある。


何故溝かというと、レールは高価だし補修も大変なので、色々試した結果ミニ四駆みたいなベアリングローラーでカーブを曲がる方式が採用され、ミニ四駆のコースの様な溝ならば野生の魔物が迷いこんでも逃げ出し易いだろうという理由からだ。


ガタンゴトンではなくて、ゴロゴロと音がするが、これはこれで味がある。


タイヤの溝と車体に付いている側面のローラー用の溝の二段構えでコースアウトの危険性を回避して、乗り心地も色々と試行錯誤された快適なミニ列車はヨルドの新たな名物になっている。


しかし、ここからが本番で、昼夜問わず走り続けて、しかも高速で走れる列車が出来れば街と街の行き来が盛んになり物流が楽になるのだ。


ゴング爺さん達列車作成チームが気合い十分で、新たに作られた大きな列車工房でトンテンカンしている…


唯一少し不安なのは、ゴング爺さん達が現在やたらデカいクマのパーツを作っていることだ…


『テーマパークだからこそのクマ列車では無かったの?』


と思うが、


『トーマス君みたいな顔面だけの機関車よりはまだ…』


と建造中の列車を見ながら俺は、


『まぁ、クマ…可愛いから良いか…』


と諦める事にした。


いよいよ列車の運行の為の駅の段取りに移るのだが、これはファミリー商会のメンバーを使うことにした。


運営はファミリー商会に委託して将来は各地の物流状況に合わせて拡大していく予定だ。


ちなみに、現在のファミリー牧場の責任者はライラさんに頼んでいる…シシリーさんとの結婚式の時に、ファミリー商会、ヨルド支店長のヘンリーさんに、


「支店長も、そろそろどうです?結婚…」


と、聞くと真っ赤になって、


「ふ、ふぁい!そ、そうですね…」


と…本当に敏腕セールスマンなのか不安になるほどキョドっていた。


お祝いにヨルドに来てくれていたヘンリーさんの兄夫婦、ファミリー商会本店の責任者パーシーさんとポプラさん夫婦に相談したところ、二人はキャッキャと楽しみながらファミリー牧場のミルキーカウ部門をライラ牧場にして転勤を命じたのだ。


それから二人は最近、デートなどを重ねている…


悲しい過去が有るライラさんには、是非とも幸せになって欲しいと願う。


そして、その時についでにポプラさんから驚くべき相談を受けたのだ。


なんと、拠点のお菓子部門のコルトさんが、ノーラ母さんにホの字らしい…


『いや、ポプラさんホの字って…また古い…と思うが、それよりも、我らがノーラ母さんをだと!

これは確認せねば!!』


と、結婚を祝いに来てくれたコルトさんをコッソリ呼びだして、詳しく聞いてみたら、本気の様だった。


俺が、


「昆虫合体して、敵将を討ち取るノーラさんですが、宜しくお願いします」


というと、コルトさんは、


「そこがまた、良いんです…」


とモジモジしていた。


俺が、


「ライラさんが引っ越しになるから、ノーラ母さんを支えてあげて下さいね」


と頭をさげるとコルトさんは、


「菓子作り以外にも本気な私を見ていて下さい!」


と、ニコっと笑っていた…

しかし、ノーラ母さんよりも先に結婚しちゃったのは親不孝だったかな?


まぁ、いろいろ有るが、あちらこちらで幸せなカップルが誕生する良い春が訪れているようである。

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