第141話 新婚なのに他国で仕事
結婚式から数日後…
「新婚…新婚なのに…新婚旅行も未だなのに…」
と不満をもらす俺は現在、旧ヨーグモス王国…今は俺の国として丸投げされてしまう予定の、もう、何もかもがガタガタの国に来ている。
ヨルドから一週間程…久々の馬車の旅である。
転移を使うにも一度現地に行かなければならないし、転移先の設定は5つ…既に空きが無い。
悩んだ末にクレストの街の登録を消した。
最悪、拠点から行けば何とかなるしね…
そして、やって来たのが旧ヨーグモス王国の都、海に面した街〈オーツ〉…
って…絶対300年前の勇者は〈滋賀〉に縁のある方だったのだろうか?
ならば、勇者パーティーの忍者も何となく…理解が出来る。
うん…中二病と馬鹿にしたが、本当に甲賀流の末裔かも…悪いこと言っちゃったかな?…でも、これだけは言える。
300年前の勇者は若くして飛ばされて来たか、又は、相当のおバカさんであると!
なぜなら帝都は勿論、自分の領地にすら地球の知恵を使った品物がまるで無い…まぁ、おかげで俺が沢山の特許で潤ったのだが…
唯一見つけた前世っぽい品物が、オセロである。
『小学生ぐらいで飛ばされたのか?…』
しかも、セールスに失敗したのか地域で局地的に流行った昔の遊び的なポジションだった。
『気の毒なオセロだが…すまん、特許が外れた物に今は興味が無いんだよ…俺…』
さて、現在俺が困っているのが、とりあえずウチの奴隷…というかウチの保護下に入った千人…
今は、とりあえず空っぽになったこの海の見える城に帝都から向かって来ている予定である。
街の入り口で転移の登録を済ませて、マット爺さんの工房にお願いして、アリス達と共同制作の簡易ベッド1000個を運ぶ為に一緒に来た5名の騎士団員を残して俺は再びヨルドに移動した。
ヨルドに帰ってきたが、
「貴方おかえり、ご飯にする?お風呂にする?…そ、れ、と、も…」
的なアレもなく、ヨルドの地下倉庫に山積みになったベッド等の物資をアイテムボックスにしまう、
集めてもらった大量の毛皮もあるので布団が集まらなかった場合でも何とかなるだろう。
アイテムボックスに入れ終わればトンボ帰りで、
オーツの街の城や貴族街の没収された家々を仮設の住居にして、なんとか暫くは千人が食べていける様にする事を目指す。
日々を暮らせるようにする一時的な復興も大事だが、それよりも先の将来この国が自立して自分の国を運営していける様にしなければならない…
城の部屋にベッドを並べ家族毎に住んでもらいうが予定だが、せめてこの冬は凍えない様にしなければ可哀想だ…
しかし、正直な話、街の住人はあまり俺に好意的では無いように思われる。
勇者の末裔の国が自慢の種だったのに、その王様が戦に負けて、しかも罪人として処されたのだ…そして、負かした人間が国王…まぁ、『どうしろって言うんだ!』って言いたい気持ちも解る。
なので、ここの旧王都は港町としては使うが、別の所に街を作り、その街を拠点に俺はこの国を立て直す予定だ。
皇帝陛下との約束で整備が済むまでは天領のままで三年後迄には何とかしなければならない…
『何か街を作ってばっかりだな…領主ってこんなに建設ばかりなの?
街に居るよりか現場にいる方が長いかも…
あれかな?貴族って書いて、ゼネコンって読むのかな…』
など、ブツブツ言いながら城を生活出来る様にしていく…
有り難い事に無職になった城のメイドさん達は皇帝陛下が雇ってくれており、現在移動中の元王族のお世話をしてくれている。
他にも職を失った他の貴族の使用人達も再就職先としてファミリー商会で預かる様に募集をかけている。
なので、この城などを含めた家を回せるだけの使用人と、生活に必要な店の確保はなんとかできそうだ。
人数的にアホ程の数の人間が商会預かりになるが、なんやかんやで、この周辺の新規の職員だけでも、だいたい二千人…この人数を食わすには普通の事では間に合わない…
今ある強みは、海が有り、海の幸が手に入り、塩が作り放題…無駄に広い土地が使いたい放題…
『でも…どうすんの?』
と知恵を絞る俺だが、昔の日本人勇者がこだわって開発した温泉町があるのは嬉しが、オーツの街からも遠い…
「交通機関が徒歩か馬車…日本人なら頑張れよ先代勇者達…もっと、こう!列車通してもっと物流とか…!!」
と、自分で言って気がついた。
「列車だ!もう列車を走らせよう!!」
と、ベッドを並べる手を止めて、叫ぶと何事かと騎士団が集まって来てしまった。
俺が、
「ごめん、何でもない…」
と、大声を出した事に少し照れて謝ると、同行してくれたシルバ副騎士団長が俺に近づいて、
「分かります…新婚で、いきなり他国を丸ごと領地にされて…イチャイチャも出来ませんもんね…
良いですよ。
ベッドは俺らで並べますから帰って奥方様を喜ばせて下さい」
と気を回してくれた…
イチャイチャ出来ずに発狂した訳では無いが、列車計画の打ち合わせもしたいので、お言葉に甘える事にした。
見送ってくれた騎士団がなんだかニヤニヤしていたのが凄く気になるが…
あれだろうな、イチャイチャしに帰ると思ってるんだろうな…
『そうだよ!イチャイチャもするよ!!めっちゃするよっ!!!』
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