第138話 許されぬ者と、そうでない者


サタンサーベルを手に入れてから日は過ぎ、忍者の末裔と勇者の末裔は、半月後に到着した帝国軍に引渡し、皇帝陛下達はそのままヨーグモス王国の仕置きに向かわれた。


かなり皇帝陛下はお怒りだった様で、国が一つ消えてヨーグモス王国の貴族達は、領地家財没収のうえお取り潰しになり多くの罪人や奴隷や平民を産み出した。


一部今回の魔王城への侵攻作戦に反対しヨーグモス城に投獄されていた貴族もいたが、彼らは家財そのままで領地の村長的なポジションに落ち着きしばらくはヨーグモス王国一帯は皇帝陛下の天領として扱われるらしい。


そして、忍者の末裔と勇者の末裔の一族と今回の作戦を企てた文官職の一族と戦死した貴族の一家全員が帝都の大監獄に投獄されている…


ある意味勝手に旦那が暴れて巻き添えになってしまった奥さんや家族も居たみたいだが皇帝陛下の決定は絶対であり、彼らに慈悲を与える余地が無いほどに皇帝陛下の怒りは相当なものなのであろう。


それから、国のバタバタで俺の結婚式は延期され、二万を超える魂を集める為に俺は騎士団監視のもと、ヨルドの近場の森や山や水辺に魔物を絶滅させないように気をつけながら狩りまくっていた。


すると帝都より俺とシシリーが呼び出され、そして帝都へと転移して案内された刑場には千人近い罪人が並ぶんでいたのだった。


皇帝陛下が、


「ポルタに魔王シシリー殿、首謀者の極刑は確定だ。

余は暴君と云われようとも全員死罪でも構わぬ…

しかし、勝手に攻め込まれ此を撃退した当事者の意見を聞くように宰相から言われてな…なのでどうする?」


と聞かれたが…いきなり「どうする?」と言われても…困ってしまう。


要は、魔族が嫌いな奴らだが魔族に助けられたら改心するかも…的な宰相様のアイデアらしいが…面倒臭いけど…ずらりと並んだ罪人の中には子供も居るのが見えた俺は、


『助けたいよなぁ…』


と思いながら、皇帝陛下に俺は、


「シシリーと二人で少し皆さんと話しても宜しいですか?」


とお願いすると、


「うむ。」


とだけ返事をして、そっけない皇帝陛下…


『えっ、陛下は許すの反対?…まぁ、確かに謀反ではあるけど…』


と思いながらも、ご機嫌斜めな皇帝陛下を一旦おいておいて、俺とシシリーは刑場に降りて縄で縛られた千人の前に立った。


ヨーグモス第一王妃は俺等を睨みながら、


「魔族を討ち滅ぼすのは我がサカシタの血の宿命と言って出陣した夫を送り出したのは認めますが…何故ゆえ子供達まで…」


と、憎しみのオーラを俺に放ってくる…


『怖ぇぇぇし、シシリーが怯えるから止めてあげて』


と思いながらも俺は、睨む第一王妃とシシリーの間に立ち王妃に


「皇帝陛下は全員死罪と言ってるけど、攻め込まれた魔王シシリー陛下が許せば、命は助けても良いと言われて話し合いに来たから…あんまり睨まないであげて」


と優しく声をかけた。


王妃は、ハッっとして、


「ご無礼を魔王陛下…

許されるならば、私の命と引き換えに子供達はお救い下さい…」


と後ろ手に縛られたまま王妃は土下座をする。


支える腕も無いので額を打ち付けて尚、


「勝手なお願いとは十分承知しております。

まだ幼い子供の母なので、第二、第三王妃もお許し下さいませ!

私は火炙りでも斬首でも好きして頂いて構いません!!」


と懇願している。


俺は、第一王妃を座らせて額の傷口にクリーンの魔法をかけたあとライフヒールを使いオデコの傷を治しながら、


「旦那さんは皇帝陛下を欺いて宝物庫から物を盗んだ時点でダメでしたが、貴女方はまだやり直しができます」


と言ってあげた。


シシリーは第一王妃に、


「私は魔族に生まれ最近まで魔族しか知らず、そして、極寒の地で飢えと戦い生きて居たのは貴女方の先祖の勇者のせいだと聞かされてきました」


と話し始めたシシリーの台詞に、第一王妃はこの世の終わりのような表情になる。


それでも、シシリーの言葉はつづく…


「しかし、我らが先代の魔王のしたこともまた事実…

だけど、どうです?…会ったこともないご先祖の事はポイして、一緒に笑える未来を探しませんか?」


と微笑む彼女に、第一王妃は涙を流しながら、


「本当に許して…頂けるのですか?」


というと、シシリーは屈みながら話していた王妃の前から、スッと立ち上がり縛られた人々を見回して、


「私、魔王シシリー・バアル・ゼブブは皆さんを許します!

不幸な意見の対立で多くの命が消えました…許せない気持ちも有るでしょう…

しかし、生きて居れば話し合い、理解し合える未来もきっと来ます!!

皆さん生きて下さい!」


と宣言した。


俺とシシリーは刑場の観覧席に移動して皇帝陛下に、


「全員マルっと減刑でお願いします」


と告げると皇帝陛下は、


「千人からの奴隷の管理は大変だろう…」


と渋る。


『どうしても処したいの?ヤバい国だな…』


かなり引く俺だったが、


「ちょっと裏切られただけで首はねてたら恨まれますよ陛下…」


と心配すると皇帝陛下は、


「いや、奴隷紋を刻むのに一人小金貨一枚かかるし…ポルタが払うの大変かなぁ~?と、心配してだなぁ…」


と、恐ろしい事を言い出した。


俺が、


「なんで、俺が払うのさ?!皇帝陛下が出して頂けるのでは?」


と俺がいうと皇帝陛下はニヤリと笑い、


「ヨーグモスの国の殆どを領地として、そなたにやる予定じゃから領民の管理費ぐらいは出して当然…

良かったのぅ、これで、シシリー殿とバランスが取れたな…ポルタ国王」


と、いたずらっ子の目をする皇帝陛下…


『大金貨百枚を奴隷紋を刻む為に…嫌すぎる…誰も得しない…何とかならないか!』


と悩むと腰から下げたサタンサーベルから、


『主人よ、悪魔を召喚して契約の仲介をさせるか?

主人達を裏切れば命を落とす呪いを…』


と提案してくるが、


『はい、却下です。』


そもそも「呪い」って言っちゃってるもの…と呆れる俺にサタンは、


『えー、生け贄十人程度で出来るのに…』


と拗ねているが、そういう所が、裏切られたり子孫達が迫害された原因の1つだと思うよ…俺は…

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