第137話 魔王サタンの身の上話


呆気なく終わった俺達と反魔族派閥のアホ達の戦争は皇帝陛下の到着を待って報告をするだけとなっている。


俺は暇潰しがてらにアリス達特製の魔の森の土作りの小屋で、サタンサーベル自体を拷問にかけている…


あのあと、自称サタンのサタンサーベルは雷撃を何とか耐えたので、ワイバーン騎士を一人ゴング爺さんの工房に使いに出して、アダマンタイトのヤスリを借りて来てもらったのだ。


直接触れば俺も魔王サタンとやらの支配下に入って操られる可能性をミゲールさんが教えてくれていたので直接触らない様に気を使いながら、気長に棒ヤスリで、


「はい、ごぉ~りごぉ~りっ!」


と、楽しくサタンサーベルの細い刀身を鼻歌混じりで削っている。


ゴリゴリと削る度に断末魔の様な声をあげる自称サタン…


「もう、止めてくれ!」


と泣きながら懇願するまで拷問を続けてやった。


削り出される金属はなんと超希少金属のオリハルコンであり、既に茶碗に一杯程度ひと財産ほど削り出している。


「いゃ~儲けた儲けた!」


と満足げにして尚止まらない俺のヤスリがけに、半べそで自白をはじめた自称サタンの話では、彼は異世界…というか、異次元の魔界から召喚されたオリジナルの悪魔の一人であり、大昔の召喚士ソロモン一族に呼び出され理不尽に攻めてきた敵国を複数の悪魔や魔物と共に退けた太古の英雄の一人らしい…

そして、その後ソロモン一族の契約者である巫女と恋におちて結婚したらしいのだ。


『あら、急にロマンチックな…』


そして、その女性が寿命で亡くなると共に魔界に送り帰される契約だったのだが、その間、愛した女性を守る為に自分の魂の一部を封じた武器であるサタンサーベルを作り出して彼女に持たせたとの事…


『なんだ嫁さん思いのいいヤツか?』


と思いながら俺はヤスリをかける手を一瞬止めて彼の話の続きを聞く。


見事に敵国を滅ぼした悪魔とソロモン一族は、同じように壊滅的に壊された状態から国を興して初代の王座に着いたのが魔界の王サタンと姫巫女だったのだそうだ。


しかし、ある日異界の門を開けて〈イナゴの軍勢〉を呼び出せる腹心のアバドンに裏切られ、特殊なクリスタルに封じ込められ、しかもご丁寧にサタンさん本体は異空間へと封印されたとのだそうだ。


そして、王妃の巫女もアバドンの手にかかり国は乗っ取られたと…

そして、困った事に巫女の命が尽きた瞬間に、サタンの召喚契約が終了して受肉した肉体から精神体に戻るはずが、既にメインのサタンの魂が肉体ごとアバドン率いる反乱魔王の力を増すクリスタルの生体部品にされた上に異界に封印された為に契約が遂行されずにサタンとしての存在は消滅してしまったという悲しい過去があるそうだ。


切り離された魂であったサタンサーベルの中のサタンさんは消える事はなかったが、悠久の時を呪われたインテリジェンスウェポンとして魔王サタンの唯一のこっ魂の封じたまま生きているらしい…


『少し気の毒に思えてきた…』


そして、元が精神体の悪魔のサタン君は魂を集めて切れ端の魂から元の状態…つまり、悪魔の王サタンとして復活して、異次元の魔界に戻りアバドンの野郎を嫁の分までシバき回すのが目的らしいく、だから触れた者の野心や欲望を刺激して魂が沢山集まる戦場を目指していた…との事だった。


そしてサタンサーベルは、


「あの~、一回止めていたのに、また…いい加減ゴリゴリ止めてもらっていいですか?

折角集めた魂がじわじわ刀身の再生の為に使われますのでお願いですから止めて下さい…」


と俺に泣きついてきた。


俺は、


「折角集めた魂が減るのならばゴリゴリ祭りは終了してやる」


と祭りの閉会を宣言するとサタンサーベルは、


「ありがとうございますご主人様!」


とだいぶ低姿勢になった。


俺はサタンサーベルに、


「今の器のおっさんの魂って返せる?」


と聞くとサタンサーベルは、


「えー、返すのですか?」


と、グズるが、どうやら返せない訳ではないらしい…


なので、俺が、


「一旦返してよ。

多分このオッサンお前に精神支配を受ける前に帝都の宝物庫破りや、自分に都合の良い密偵を皇帝陛下に差し出してたから良くて死罪だから死刑にされた魂を改め食べたらいい」


と告げると、


「それは名案!決めました。

この、サタンの命ご主人様に預けます。!!」


と騒ぎだす。


俺が、


「えー嫌だよ、精神支配とかしそうだもん…」


と渋るとサタンは、


「悪魔の誓いは絶対です。

我が命を差し出しても構いません!

ご主人様とご主人様のお味方には支配の力を使いません…

なので、この悪魔王サタン一生のお願いです。

我が復活しアバドンをぶん殴れる機会をお与え下さい!このとおりぃぃぃぃぃ!!」


というが、地面に突き刺さった剣とほぼ石化しているオッサン…どちらを見てもどのとおりか解らない…


俺は、


「魂って、何の魂でも良いの?」


と聞くと、サタンは


「この際スライムでも、ドラゴンでも何でも量さえ満たせれば構いません!

規定量に達したらもう…贅沢など言いませんので!!」


と答えたので、


「分かったよ、お前の解放に力を貸してやる…契約成立だ。」


と答えると、俺の体とサタンサーベルが光り出した。


驚く俺に、


〈契約完了しました。ご主人様〉


と心に直接話しかけてきたサタンサーベルと、


「ここは?」


と、言いながら辺りを確認するほぼ石像のオッサンがそこにはあった。


『従魔契約の時も進化する虫が光ったから、何かしら特別な契約の現象なんだろうな…』


と俺が考えていたら、


〈ご明察です!〉


と答えるサタン…


『どうも、思考も何もかも筒抜けで影の中のガタ郎よりもリンクが、強い様だ…』


ある意味厄介なやつを仲間にしたかもしれないな…早い目に解放してやろう…と考えると、


〈やったぁ、ありがとうございます〉


と喜ぶサタンだが、新婚生活をコイツとシシリーと三人で過ごすのは勘弁だからである。


『結婚を延期してでも狩りまくって成仏さしてやろう!』


と、考えていると、


〈成仏でなくて、解放ですから!〉


と…サタンがツッコミが入る…


俺は更に、


『絶対ソッコーで魔界に還す!』


と心に強く誓ったのだった。

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