第135話 魔王城を守る為に


新・魔王城に騎士団を率いて移動し住人達をアリス特製地下シェルターに誘導する。


魔王城は太古の昔から続く防御陣に守られている。


魔の森は、魔王国を中心にヌシが五芒星の頂点を守る様に配置され防御魔法陣となり魔の森に敵意を持ち進軍してきた者から街を守り、敵には方向感覚を狂わし弱体化のデバフをかける機能があるらしい。


するとあとはヌシの配下が排除する為に動いてくれるという結界の仕組みらしいが、ヌシが一匹でも倒されたり、ヌシの根城を一ヶ所でも破壊されたら防御陣が機能しなくなる。


広範囲の防御には強いが一点突破されたらひとたまりも無い防衛設備だ…大昔は魔王城近くにそびえ立ったメインの神樹の能力でほぼ無敵の防衛設備だったらしいが、今は気休め程度であり実際に300年程前にも勇者一行に攻略されて、国を捨てた過去がある上に、攻め込んでくるのはその攻略をした勇者の子孫…きっと易々と突破してくる。


住人を早く地下シェルターに隠さなければ!


ウチの街にも刺客を放ったのだ、本隊はそこまで来ているかもしれない…街が戦場になる前に軍に所属していなかった非戦闘系のスキルの魔族の住民達は避難して欲しい。


最悪、アリス一族の魔王城改修工事用の通勤地下トンネルを通ればアリス達の巣と蟲のヌシの出城を経由して旧ヨルドの街近くに抜ける事が出来る。


仮設の魔王軍に住民の移動と護衛を頼み、ヨルド騎士団とタンバ将軍と虫軍団とアリス女王と城蟻軍団で魔族の街を守る為に布陣した俺達だったのだが…


『百歩譲って、アゼルとメリザはワイバーン騎士団の助っ人は解るが…何故、部下数人を連れたシシリーまで居るの?

そして、なぜ、武装したルルさんとシェラがシシリーさんを守ってるの…?』


ヨルドの館に帰るように言おうとすると、シシリーさんは、


「魔王が、魔王城に居ないでどうします?!それに、ポルタさんの側が一番安全でしょ?」


と言ってくる。


「あー、もう、解りましたよ…」


と諦めた俺は、


「姫達には指一本触れさせませんよ。

でも、危なくなったらシェルターに逃げ込んで下さいね」


と俺が言うと、シシリーさんは、


「来月は結婚式だから怪我はしないで帰って来て下さいね」


と、抱きついてくるが彼女は小さく震えている…


シシリーさんは、魔族や魔物の進化を促すスキル以外何もスキルの無い補助系スキルのか弱い魔王だ。


この、


『優しくてか弱い女性を全力で守らなければ…』


と改めて俺は覚悟を決めた。


魔王城に偵察の隠密騎士団から、


「ヨーグモス軍北西の鳥のヌシを撃破、真っ直ぐ魔王城に向かっています。」


と連絡が有った。


街の防御は消えて遠くから勇者の末裔が、魔族を根絶やしにしようと迫ってくる…考えれば実に巧妙な作戦だ。


魔族の至宝を持ち出して自分達が使えば、迎えうつ魔族が帝都から至宝を持ち帰り武装することはない…しかも、本来の性能で無くても至宝の能力は高いと思われる。


でも、今回俺は虫の勇者では無くて魔王城を守る魔王軍蟲の将ポルタとして戦に赴くつもりだ…


『なので奴らに慈悲などかけない…』


そう、俺はこの戦いが終わったら、結婚するんだから…って、あれ?…このセリフって死ぬヤツじゃない?…と思いつつ俺は、


「もう、フラグをへし折るほど暴れてやる!もう、末代まで虫の魔王と呼ばれようと…」


と腹をくくり、魔族の方々に敵が持っているであろう至宝についての情報をあつめる。


シシリーに新たに宰相に任命されたミゲールさん…彼は殺されたルキフグス宰相さんの息子さんであり、父のハゲールさん程ではないがかなり長生きの200歳の男性でありミゲール・ルキフグスさんなのだが、親父さんと違いオデコ辺りの毛根が絶滅危惧種では無いファーストネームにコンプレックスが無いので、ミゲールさんと呼んでいる。


ミゲールさんとシシリーに盗まれた至宝の詳しい能力を聞くと、

まず、魔神の斧は寿命一年と引き換えに攻撃二倍、重ねがけには武器とのシンクロ率により回数が変わるという不死の魔王ドラキュリアの至宝…


『不死ならばデメリットゼロだな…一回で二倍で二回で四倍…十回も重ねたら山でも割れそうだ…』


つづいては魅惑の鎧で、異性からの攻撃を軽減、同性への攻撃力上昇、シンクロ率により効果が上下するという魔物の母と言われる魔王エキドナの至宝である。


『女性魔王ならば効果が高いが、もしも回収してシシリーが装備して攻撃力が上がっても街娘が強化された程度だからな…あまり怖くないか?…』


そして、三つ目の道連れのマントは、配下の数に応じて身体能力強化するが、配下へのダメージは使用者にも微量に反るというリスクもある装備であり、拳の魔王ヘカントケイルの至宝でワンマン魔王で配下に後方を守らせて本人は単騎で敵陣に突っ込み暴れまわる魔王だったらしい…


『それならばほぼノーリスクだな…今回も一騎当千の猛者が身につけていたらヤバいかもしれない…』


それに最後がサタンサーベルという魔王の中の魔王サタンの至宝である。


鞘から抜いた者に力と魔力を与えるが、その代償に心と魂を喰われる魔剣であり、過去の真の覚醒をした歴代魔王でも例外は無く扱えた物は居らず、世界に喧嘩を売った晩年の先代魔王ベルフェゴールさんとやらも勇者に追い込まれて使用したらしいが…たぶん心を蝕まれていたのだろうとシシリー達が教えてくれた。


凄い性能ではあるが、自称魔王のアバドンの末裔もご先祖さまのアバドンの杖の性能の半分も出せて無かったみたいだし、ましてや人間ではシンクロ率は知れているだろう。


しかし…魔族嫌いは個人の考え方だから百歩譲って許すし、そういうお家出身なのも理解してやるが、人様の家に土足で踏み入る真似は許せない…


こちらには頼れるような至宝こそ無いが、自称魔王を沈めた俺の実力を思い知らせて、攻めてきた奴ら全員、


『来世は漏れなく虫嫌い』


になるほど虫の恐怖を教えてやる!!と気合いを入れる俺だった。

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