第134話 始まる敵の進行
方々に連絡を回してから帝都に向い、物的証拠のオルトロスの槍と多数の鎧に致死毒パンチでお亡くなりになっているオッサン貴族を皇帝陛下に提出して報告をすると、皇帝陛下は真っ赤な顔になり、近衛騎士団に向かい、
「ヒューズ達(影)を一人残らず捕縛せよ!手向かうならば斬り殺しても構わん。
ヨーグモスに使者を出して、申し開き有らば聞くが、事と次第によっては極刑も覚悟せよと伝えよ!騎士団は出撃の用意も整えておけ!!」
と、怒りをあらわにしている。
そして、皇帝陛下はガックリと項垂れ、
「信頼していた(影)はもともとヨーグモス王国の勇者パーティーの忍マスター〈タナベ〉の末裔…
ヨーグモス王の〈サカシタ〉からの借り物の諜報部員だったのだ…まさか、賊の一味に犯人を探させていたとは…恥ずかしい…何の手がかりも見つからないはずだな…」
と、寂しそうに呟く…
『あぁー、実行犯かも知れないやつに犯人探させてたんだね…そりゃ手がかりも出て来ないよね…』
と納得した俺だったが、皇帝の命を受けて宮殿がにわかにバタバタと騒がしくなる中で近衛騎士団から、
「影の、メンバーは一人残らずに姿を消しております。
資料なども一つ残らずアジトから消えており、昨日から今朝の間にはもう居なかったと考えられます」
と報告が入る…
『えっ?待てよオーガ村襲撃も魔族排斥の一環ならば、狙いはシシリーさんか!?魔の森の魔族達が危ない!!』
と理解した俺は、
「皇帝陛下、魔の森と婚約者が狙われているので帰ります!」
と告げると、皇帝陛下は、
「もしもの時は容赦するな!
余が許す!だから思いっきり殺ってしまえ」
と言った後に皇帝陛下は、
「出兵だ!ヨーグモスを取り囲め!!」
との皇帝陛下の声を聞きながら俺はヨルドへと転移した。
そして、俺が転移スキルで到着したヨルドの街は、既に防御体制に入っていた。
街の入り口は固く閉ざされ門の上には見張りが立っている…帝都の宝物庫荒らしからこちら、警戒していたとはいえこんな物々しいのは異常である。
俺は焦る気持ちを抑えつつ、マサヒロを呼び出し空から街に入ると既に戦闘の後が見受けられた。
建物が燃えたのか、あちこちで煙が幾つか立ち昇っている襲われたてホヤホヤと思われるヨルドの街を眺めながら、
『俺が帝都に向かった隙を狙ったのか…?』
と、唖然としている俺に向かい騎士団員が大声で、
「ポルタ様が帝都に向かわれる前に、警戒の指示を出して居られたので、タンバ将軍の闇一族の警戒網にかかり、すこし、自爆魔法で建物に多少被害はでましたが、人に被害出ること無く制圧する事が出来ました。
一名捕らえて有りますので、どうぞこちらへ」
と報告されて、騎士団員の元に舞い降りると、街の牢に案内された。
牢には手足を縛られた忍装束の男性がおり、俺を見つけるなり、
「どうやって、我々タナベ衆の潜入を見抜いた?」
と質問された…
(タナベ)って絶対日本人の末裔だよな…
もしかして、皇帝陛下が探せと言っていたヒューズさんとやらかな?と考えた俺が、
「もしかして、タナベさんってヒューズって名前?」
と聞くと、忍装束の男は顔色ひとつ変えずに、
「まぁねぇ。」
とだけ答えたが…依然として殺気を放ち俺を睨み付けながら、
「我ら影の一族は、幼い頃より潜入の訓練を受けている…なぜ…それなのになぜ、これ程までにアッサリと…ターゲットのあの魔族女に接触する前に…」
と言っているが…俺は、怒りを押し殺しながら、
「お前らのターゲットはシシリーさんかな?」
と優しく聞くと、忍野郎は、
「あの、女さえ死ねば魔族は弱体化する!
我らの使命はあの女を殺して、本国の進軍をしやすくする事!
まぁ、最悪弱体化しなくても、我軍の連中は今ごろ死に絶えた魔族の死体を引きずり、先祖より伝え聞く方法にて魔の森の結界を破り魔族の国に…」
と、余裕の表情で何やら話ている。
「死に絶えた魔族を…」
と言っているのだが、オーガ村の事か?…いや、失敗したことなどコイツらの情報網ならば分かるだろうし、魔の森の魔王国が荒らされたので有れば、既に何かしらの報告が入るはず…
と考えた俺の頭に、旧魔王国反乱軍の魔族達の顔が過る…
「捕虜になっていた魔族の兵士は鉱山奴隷として数年過ごせば釈放の者も居るだろう…それをまさか!死に絶えたとは…」
と俺が問いただすと、忍野郎は笑いながら、
「既に始末したに決まっているだろう」
と言った瞬間、自力で腕の縄を斬り、何かを口に当てた途端にフッっと筒の様なものから針を飛ばし俺の腕を射ぬく…
忍野郎は高笑いをしながら、
「告死蝶の即死毒の粉末の塗ってある吹き矢だ!
あの女は無理だったが、魔族の女を嫁にしようとしている今代の勇者を殺してやったぞ!!
勇者の名前を汚そうとした罰だぁぁぁ!!」
と喜んでいるが…もう許さない…俺は針を抜きながら、
「痛ってぇなぁ~、クソ忍者!
伊賀か、甲賀か、風魔か知らないが、てめぇらのご先祖の忍マスターとやらは偽物の忍者だな…」
と言いながらぶん殴ってやった。
忍者野郎は、牢の壁に叩きつけられながらも、真っ赤になって怒り、
「なぜ、効かない即死毒だぞ!」
と騒ぐが俺は続けて、
「本当の忍は、忍で有ることを家族にも言わない…
忍続けて死ぬのが本物の一流の忍だよ。
一つの策がダメならば二つ目三つ目の策までかんがえておけよ…毒が効かない相手もいるだろうに…
それと、お前らのご自慢のご先祖は忍に憧れただけの頭のイタイ(中二病)だよ…ご丁寧に忍者マスターって…恥ずかしい…」
と、(中二病)など知らないであろうこの世界の忍野郎に思わず言って煽ってしまったのだが忍野郎は俺を睨み付け、
「なぜ、なぜその言葉を…我が先祖が死ぬまで患ったと言われる不治の病の名を…」
と驚いているが…もう、話すのも腹が立つ俺は、床に向かい
「もういい、食ってやれ。」
とだけ冷たく告げて、騎士団を連れて牢を出た。
「何のことだ!…おい!!」
と騒ぐ声を聞きなが扉を閉めると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
とアイツの叫び声が聞こえた。
そして、暫くして静になったのを見計らい、
「しゅーりょー!」
と俺が叫び、少し間をおいてから騎士団を連れて再び牢屋に降りると、身体中に噛られた跡のある丸裸の男が泡を吹いて白目を剥いていた…
「影の一族さんよぉ、ウチの闇の一族の甘噛みで叫び声上げて失神してちゃマダマダだよ…」
と、俺は哀れな姿の男を見ながら、
「牢番の兵士に、下の皆に監視と拷問のお手伝い賃のご飯を宜しくって伝えておいてね。
あと、コイツは…スッポンポンのままで拘束し直しておいて」
と伝えてから、
「もしもまたあのアホが暴れたらまた、下の闇の一族の皆に頼んだら良いから…
あと、騎士団は出陣の準備と、シシリーとルルさんには護衛を付けて!
準備が出来次第、魔の森の防衛に向かう!」
と指示をだしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます