第129話 目的自体がぶれる呪い?


素材調達はとても順調に進んでいるが、しかし、ウチの騎士団が変な方向に進みはじめている…


事の発端は、アサシンバイパーという大型の蛇の魔物を探す為に帝都から西に向かった森の入り口付近でバトルホースという、スピードこそ出ないがパワーと防御力に優れたどこぞの世紀末覇者の愛馬みたいなデカい馬の群れを見つけて、


「騎馬隊作るならまとめて連れて帰りましょう」


と騎士団から提案されたのが、きっかけとなり、

まぁ、騎士団全員テイマー持ちだし、従魔の譲渡も可能だし、なにより騎士団員のテイマースキルも上がり契約枠の数が増えたみたいで、


『テイムしてみたい!』


っていうのが本音だろうが、


「やってごらん。」


と、俺が許可すると騎士団達は群れを囲い込み、野菜を片手に説得をはじめること一時間、交渉や説得?を根気強く繰り返し、そして、結局騎士団は群れのボスを…タコ殴りにし武力にて、20頭のバトルホースのテイムに成功した。


アベル騎士団長は、


「やはり武の者…拳で語るのが一番でした。」


と言っていたが、前半の一時間はなんだったのか?…と思うが、みんな一仕事終えて互いに健闘を称えあっているというなんともツッコみづらい空気なので一旦スルーする事にしたのだった。


バトルホースの見張りに二人の騎士団員を残して、俺達は森の中へとアサシンバイパーを狩りに向かったのだが、今度は珍しい〈カーバンクル〉というオデコに宝石が埋まったフェネックみたいな魔物を見つけて、


「珍しいからテイムしましょう」


となり、


「どうせならダイヤにルビーにサファイア、各種取り揃えたい!」


などと言い出して、あとは、バカデカい象の魔物や

軍用狼にするからと森狼の群やらと、次から次へとスマキにして説得したり、順番に適当な名前を名付けまくり手数でテイムを試みたり、シンプルに殴り飛ばしてテイムしてから回復させたり、たまに殺りすぎて素材にしたりしながら、いつしか森の入り口がちょっとした動物園状態になるほどの従魔が集まり、アサシンバイパーを見事探しだして討伐したのに、

帰り道でも、「あれは連れて帰る」とか「あれは要らないから素材に」などと、スカウト&デストロイを繰り返す騎士団達…


「そんなに従魔いる?」


と聞くと、


「ちゃんとお世話するから!」


と、小学生が動物を拾ってきた時みたいな言い訳をする…


俺の前世の育て親と言うべき爺さんも、


「飯、糞、寝るを面倒みれるなら何を飼っても良い!」


と言ってたし、この世界での育て親の爺さんは、


「捨てられてた俺を拾って育ててくれた」


だから、俺も家族が増える事には寛容でいたいと思っている。


なので、


「ちゃんとお世話するんだよっ!」


了承すると騎士団達は、


「ヤッター!」


と喜び、益々従魔を増やしていった。


後半は、〈アイツらまだだから…〉と、実用性よりコレクター精神で従魔を集めて、大名行列の様に帝都まで移動し、


帝都で中古の荷馬車を大量に購入して、バトルホースに引っ張らせて、ヨルドまで騎士団員数名で運ぶ事にした。


象等は荷馬車に乗らないので、のんびり象のペースでの移動でヨルドを目指すらしい…

俺を含めた残りの騎士団のメンバーは転移でヨルドに帰り、


領内の土地に、


「従魔たちのお家をつくろう!」


となり、サファリパークの様な施設の建設にとりかかった。


アリス一族総出で広大な土地にエリア毎に空堀で区切って掘った土で壁も作った。


「もう、こうなりゃ自棄だ!」



と、ファミリー商会も巻き込みこの従魔パークを傘下に入れて従業員も雇い最後には管理施設も建てて、馬車で巡る順路も作り、


『ファミリー従魔牧場』と命名して、


安全な場所から多種多様な従魔達が見えて、隣の酪農村とも合併させ、乳搾り体験や加工肉の販売場所もつくり、サファリパークと牧場体験が出来るテーマパークとすることにした。


乗馬体験や乳搾りをした後に新鮮なミルクを使ったアイスクリームの販売など、観光地として力をいれるて、新たな観光客の獲得を目指すのだ!


ウチの知恵袋サントスさんと商会の支店長ヘンリーさんを巻き込み、


「将来は、従魔の育成に馴れた人員を増やして、

交配や訓練で馬魔物を育てて、従魔のレースみたいなギャンブルで大人達も魅了する街にしたいんだけど…」


と夢を語ると、二人ともに悪い笑みを浮かべて話しに乗ってきた。


ヘンリーさんは、


「馬魔物の名産地から技術指導員を引き抜きます!」


と意気込み、


サントスさんは、


「配当金の倍率計算に長けた人材を今から育成し始めます!!」


と、やる気になっていた。


『この世界の娯楽は、まだまだ開拓の余地があるから今のうちに唾つけとかなきゃね…』


しかし、商業ギルドに新たに〈動物園〉や〈サファリパーク〉に〈競馬〉の登録ができれば、マネされても少しは特許使用料でヨルドが潤うし、観光客が増えて旨いご飯文化が広まれば、商会の食品工房も潤う!


ただ、ウチの騎士団員が妙に凝りだして、

ガイナッツの樹海エリアとか、アルトワの高原エリアとかと、地域毎のエリアを再現して、


極めつけは広大な土地を深い堀りと壁で囲み、人工的な森や池を配置し、比較的弱くて繁殖力の強い魔物を放し飼いにして、


『狩りパーク』と言う〈擬似初心者冒険者用の狩場〉を作った。


決して、何かを借りたまま盗む訳ではない…


外から強い魔物も来ないし、何でも一匹までなら狩ってお持ち帰り出来る仕組みだ。


合言葉は、


『手ぶらで来れてお土産も出来る!』


であり、何も狩れ無くても、牙ネズミ一匹の保証付きで、駆け出し冒険者の練習にも、狩りが出来るパパを見せつけるチャンスにも…などと、幅広い方の要望に答えれるテーマパークとなっており、レンタル武器や防具も取り揃えている。


若い冒険者のレベル上げや、ここの獲物を狩って冒険者ギルドに行ってもFランク迄ならランクアップ出来るように冒険者ギルドとも話しはついている。


ちなみに、最低保障の牙ネズミはこちらで討伐して両耳を切ってあるので冒険者ギルドに提出してもポイントにならない。


安全だが、参加量と解体代金で殆ど手元に残らないので、Gランク冒険者の証明書を提示すれば大銅貨五枚だけで入場出来る事にした。


宿が無くても牙ネズミの肉を売れば、素泊まりの宿に1泊出来るし角ウサギならば翌日の入場料までまかなえる…


空いた時間で外の草原で薬草でも摘めば飯も食える。


ちなみに一般は小銀貨二枚とレンタル装備一式が小銀貨一枚である。


ヨルドの街の次世代の冒険者や、一般から兵士団に入りたい人の訓練にも役に立つ!!


って…あれ?…素材集めに出ただけなのに…主旨がブレはじめているのでは?!…

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