第122話 魔の森の完成と迫りくる足音
パーティーも終わり街の皆に労いの言葉をかけて回る。
宿屋チームや店屋チームに食堂チーム…
最後に冒険者ギルドに行くと、ギルド酒場で、
『あれ…クレストの街だったかな?』
みたいな光景が広がっていた。
夢の狩人の面々に鋼の肉体それに暁の魔導書の先輩冒険者メンバーが酒盛りをしていたのだ。
「ポルタぁ、遊びに来たのに皇帝陛下が来てるっていうから外にも怖くて出られないから、飲むしか無くなったぞ!」
と夢の狩人のメンバーに絡まれた…
『いつも通りの感じに少し嬉しくなるよ…』
と、思う俺の隣にいた鋼の肉体のリーダーから、
「おめぇたちは、そんなの関係無しに酒場から一歩も出ないだろ?!」
と、ツッコまれて
「ちげぇねぇ!」
と言って皆がガハハと笑う。
俺は少し懐かしくも嬉しくもあり、
「先輩方に不自由な思いをさせた分、俺から一杯奢らせて下さい」
と言って一緒に回ってる文官さんに頼み、先輩方に、
『ヨルド無しでは生きられないセット』
として、ウチの酒の飲み比べセットと、揚げ物や焼き鳥などにチーズ類を並べたオードブルセットを提供した。
冒険者の先輩方は、
「よっ、ポルタ!流石は、冒険者の心が解るご領主様は違うぜ!!」
と喜んでくれた。
そして挨拶回りも済んで、俺がようやく一息ついたのは昼過ぎだった…
ホッとしたのと気疲れしたのとでその日は休みにして部屋で寝て過ごした。
次の日、騎士団とアリス達を連れて魔王城建設現場に出向き街の建物の着工などを見届けた後に、ルキフグス宰相様に挨拶をしてからヨルドの街にもどる。
『これで魔の森の街が1日でも早く完成すれば、当初の工事予定が全て終わる…』
と、安堵した俺だった。
それから数ヶ月が過ぎた夏の終わりに魔の森の整備が完了し300年で荒れ果てた魔王城も修復され残すは一旦保留となった魔王国の人々の意見を纏めるだけとなった。
ルキフグス宰相様が開拓組を残して北の大地を目指して旅立つ…次来る時には魔族達を引き連れての大移動だろうと思いながら、俺もルキフグス宰相様を見送ったのだった。
このペースで行けば秋の終わりには引っ越しが完了し、新な魔王国での生活をスタート出来るであろう。
そして、2ヶ月程経ち引っ越してくる魔族の長い列が新生魔王国に到着し始める。
必要な手荷物のみで長旅を終えた人々が、割り振られた我が家に入り、護衛の魔族達は再び魔王城に戻り、最後まで残る事を決めたシシリーさんとメイド達の引っ越しや城の大切な宝物等の輸送の為に再び北に向かい出発した…
魔族の皆さんが、新しい生活に慣れ始めた年の瀬…
予定では、もう到着している予定のシシリー魔王陛下が待てど暮らせど到着しない…はじめの内はルキフグス宰相様も、
「今年は冬が早かった様なので、時間がかかっているのでしょう。」
と、言っていたが半月経ち、一月経ち…年を越した時にようやく、
「これはおかしい?!」
となり、定期的に旧魔王国に野菜を運んでいた定期便と共に宰相様は数名の魔族を引き連れて魔の森から北を目指して冬の旅路へと旅立った。
「雪に閉ざされて身動きがとれないのでしょう…な~に、春には皆で帰ってきます」
と笑いながら手を振る宰相様を見送ったのだった。
『少し嫌な予感がするが、仲良しと言えど他国…
勝手に介入する訳にはいかない…』
と、俺は一人でヤキモキしながら待っていた冬の終わり、傷だらけで痩せこけたケンタウルスのタリウスさんが魔の森に到着し、
「クーデターあり…」
とだけ告げて気を失ったらしい…
俺のもとにも一報が入り、翌日魔の森へと向かい、目覚めた傷だらけのタリウスさんから詳しい話しを聞くと、
北の街から他の派閥を追い出した魔王軍の者達は、
〈魔王の力で強化され〉
〈魔の森からの食糧の供給もあり〉
〈今こそ、武力での統一を!!〉
と、メイド等を人質にシシリーさんを幽閉し、あの青白い顔のオッサンが中心となり武力蜂起して魔王城を占拠してしまったそうだ。
そしてシシリーさんとの婚約を宣言して、
「我こそは新たなる魔王だ!」
と、頭のお気の毒な事を言っているらしい…
「それはおかしい!」
と詰め寄ったルキフグス宰相様は斬り殺され、
『助けを呼んで何とかしよう!』
と魔王城から南に向かったケンタウルス騎士団の一団は、追手をかけられ傷つき、倒れ…残ったのはタリウスさんだけだったとのこと…
シシリーさんの幽閉にルキフグスさんを殺害…
許せない…
そしてタリウスさんは肩で息をしながら、
「勝手なお願いですが、ポルタ様…いや、我らが真の王よ…どうかシシリー様を…どうか…」
と涙を流し懇願する。
俺は、タリウスさんの肩に手を置いて、
「任せて下さい…タリウスさん」
と、言った途端に…タリウスさんの体が光りだした。
『えっ?』
と驚く俺の影の中から、
〈ほら、だから六本足は虫仲間でやんす!〉
とガタ郎が言っている。
理屈は解らないが、光りがおさまったタリウスさんは、
虫の息だったのが嘘の様に、傷も癒えて生き生きとした顔で、
「我が王よ、新たなる力を授けて頂き感謝致します。
〈サジタリウス〉の〈タリウス〉…この命、王の為にっ!」
と立ち上がり頭をさげる。
『いや…六本足で、虫の息だったからか?…流石にルールが緩すぎないか…』
と思わなくもないが、今はシシリーさんの救出と、魔王軍のヤツらをキャン!と言わせるのが先だ!!
俺は騎士団に旅支度の命令を出してから、
転移スキルで、帝都に「 魔王軍蜂起」の一報を入れる。
皇帝陛下は、
「軍を出すのでしばし待て!」
と言ったが俺の怒りを感じたのか、
「よし解った…全て任せる!
ただ、援軍を明日にでも出すから先発するもよし、一緒に乗り込むもよし…ただし、死ぬことは負かりならん!
死んだら死罪にする…だから死ぬなよ…シシリー魔王陛下を頼んだ!」
と送りだしてくれたのだった。
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