第120話 街の御披露目パーティー
年が明けてすぐに、新・ヨルドの街で皇帝陛下を招いてのパーティーが始まった。
数日前に帝都から使者がヨルド街に到着しはじめ、それから数日がかりで転移スキルを持った従者さんが魔力タンクやマジックポーションを多様して王族や、皇帝陛下ご一家(奥さま多数)を連れてお見えになる…
『フッフッフ、皇帝陛下が奥さまを全て連れて来ても対応できる様にロイヤルスウィートルームにはメインベッドルームの他に五つのベッドルームがあるので大丈夫だ…俺の知らない間に嫁が増えていないかぎりは…』
公務員の転移スキル持ちさんが頑張り続けて、ガイナッツ国王と王妃さまやガイナッツ騎士団長のボルトさん、
アルトワ王国の国王夫妻に、ご隠居の先王様に個人的に仲が良いロックウェル伯爵夫妻を連れて来てくれた。
パーティーは未だ1日有るが、皇帝陛下をはじめ皆さんは貴族宿に泊まり街を堪能している。
そして、あの極寒の魔王城から魔の森に建設中の新・魔王城に先駆けて完成した魔王国宰相ルキフグス様の館に、空飛ぶ魔物に乗りやって来たシシリー魔王様御一行も何故かパーティー前から街を満喫し、俺の屋敷に入り浸っている…
まぁ、シシリー様が俺にべたべたしても睨む軍務関係の方々がいないのは有難い…
皇帝陛下と魔王陛下のはじめての直接対談が、ヨルドの街のバーガーショップ・マックのイートインスペースなのは如何なモノか?…とは思うが何故か二人は馬が合う様子で奥方様達も交えて楽しそうにお喋りを楽しまれた後に一緒に観光をしている。
時間が有るからとウチの騎士団を護衛に付けてシシリー様案内のもと、馬車にて魔の森の中心あたりにある新・魔王城の建設現場も視察に向かわれた。
と、言ってもアリス達が立派な道を作ってくれて、片道一時間程の工事現場のヨルド側の入り口付近にある開拓用の魔族の方々が暮らす魔族の国の宰相様の館兼、魔王国の開拓村の様な場所をグルりと散策した程度だったらしいが、両国の仲を深める大切な時間を提供できたと思う。
パーティー当日の朝には、カーベイル国王様をはじめフェルド王国の貴族の方々がザック騎士団長護衛のもとヨルドに到着した。
カーベイル国王から
「我が家お抱えの絵師に描かせたポルタ君の肖像画だ屋敷にでも飾ってくれ」
とデカ絵をプレゼントして貰った。
中には昔の自衛隊のポスターの様に明日を指差す俺の背後にタンバをはじめ各種昆虫系魔物が、キシャー!っと威嚇する絵画が出てきた…
『フツーに怖ぇぇぇよぉぉぉぉ…夜見たらチビッ子が眠れなくなるヤツだよ…』
俺は少しひきつりながら、
「ありがとうございます。カーベイル様…」
と礼を述べるとカーベイル様が、
「ワルド王国との戦いの様子を描いたと言っておったぞ」
と教えてくれたが一緒に来ていたワルド国王様は何とも複雑な顔をしているし絵を見ながら息子のリード王子は、
「虫の勇者様…私はあの地獄から良く生き残れた…とその絵を見ただけでもしみじみ思います…」
と、呟いていたのだった。
『なんかゴメンね…美味しい物食べて忘れてね…戦場跡には石碑立ててお供え物もしてるから…』
と、こちらが気まずくなる贈り物を受け取り、
その後、公爵様に、侯爵様、伯爵様に、子爵さんに男爵さん…挨拶だけでも日が暮れそうだ。
パーティーまでの時間、貴族の方々は整備された街を回り、ザックさんやボルトさんはワイバーン騎士団などに興味津々だった。
そしていざ、パーティーが始まると我がヨルド家のとっておき料理の数々の御披露目も兼ねたテーブルに人だかりが出来ており凄く盛り上がっているが、皆が静かに黙々と食事をする、なんとも異様な熱をおびたパーティーになった。
パスタ工房やチーズ工房が出来たので、各種パスタは勿論、ミルキーカウの大牧場が順調に生産してくれるミルクのおかげで、グラタンにクリームシチューや冬のパーティーに芯から暖まるメニューを揃え、
ゴング爺さん達とこっそり蒸留したワイン等の蒸留酒を男性にはお湯や、水で割ったモノを提供し、酒豪にはロックで出したり、ご婦人方にはジュースに少し混ぜてカクテル風にお出しした。
製法を聞かれたが、
「ウチの街に留学に来る酒蔵の人にしか教えれませんし、この酒を作る為の装置はウチの鍛治師に弟子入りした者にしか製作を許可しませんので留学のご検討はお早い目に。」
と言っておいた。
来てくれたお客様に一本お土産に〈ヨルド酒〉と名付けた蒸留酒を渡して酒飲みをヨルド呼び込む広告がわりとした。
酒飲みは、飲んだことのない酒の話を聞いたら飲みたくなるのが性だ。
一応皆さんには、
「この酒は試作品ですが、樽に入れて寝かせれば、寝かせるほど旨くなります」
と言っておいたが、酒豪たちはすでに、ガツンとくるアルコールの刺激にヤられて、
「金は出す!樽で売ってくれ!!」
と騒いでいる…フッフッフ、コリャ儲かる香りがするぜ…酒蔵を増設せねば…
人を呼び込み、口コミを加速させる作戦だが、
各国の貴族達は酒蔵の人間を留学させる相談や鍛治師の誰かを蒸留装置の作成の為にゴング爺さんに弟子入りさせる算段を各テーブルで話している。
正直、酒なんて材料や水、作り手の数、違った旨さがあるので広がってくれた方が楽しみが増えるが…
蒸留酒発祥の地ヨルドというイメージをすりこむ為には留学制度は必要な手段だし、ウチの旨い物を広める広告塔にも使える。
ただ、料理に酒だけで驚いてもらっては困る…
転移スキルを使い、魔力の心配と戦いながら夜な夜な拠点の菓子職人コルトさんを連れてきては元料理長〈ロウ〉さん達と再現したスイーツの数々がまだ控えているのだ!
奥さま達のお茶会に稲妻級の衝撃を与える程の品々がダース単位で出てくる予定なのだよ…
さぁ、とくと味わうがいい!ヨルドの新型の性能を!!
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