第119話 騎士団対ドラゴン
あの日、寒さに堪えながら1日がかりで登った雪山だが、今回は、ビュンとひとっ飛びで山頂近くまで登ってきた。
しかし、既に山頂が騒がしい…
『他の冒険者と戦闘が、起こっているのか?』
と思っていると、
「ポルタ様、ここは我らにお任せ下さい」
と隠密騎士団が偵察に向かった。
暫くして、
「ポルタ様、冒険者がしくじったらしく、ドラゴンのターゲットとなり、配下のレッドドラグーンに追い回されております」
と報告してくれた。
『なんだよ!ミヤ子に麻痺らせて一網打尽計画だったのに…』
しかし、既に巣から飛びまわっているターゲットを麻痺らすのは困難だ…どうしよう?…でも、ここでもたもたしている暇もない…
『ドラゴン程ではないが、ブレスも吐くドラグーンに、冒険者達がこんがりジューシィーに焼かれる前に助けなければ!』
ということで俺は、
「魔法騎士団はアースウォールなどで、ドラグーンから冒険者を守りつつ、隠密騎士団が冒険者を回収!
回収後は素早く離脱!
第一・第二、ワイバーン騎士団は山頂手前の岩場でアイテムボックスみっちみちに〈岩〉を収納後に上空で待機、合図と共に奴らに岩をばら蒔け!
では、作戦開始!!」
と指示を出すと、
「「「はい!」」」
と騎士団員は応えて、各部隊が作戦行動に移る。
俺はマサヒロの翼を借りて盾と雷鳴剣を構えて、レッドドラゴンの指示で冒険者を追い回しているドラグーン八体の前を飛び回り注意を引く…
すると俺の囮に食いついた先頭の二匹を引き剥がす事に成功した。
魔法騎士団がその隙に壁を出して冒険者を守り、
怪我をしながらも走り回りクタクタの冒険者達を隠密騎士団が〈疾風アゲハ〉を冒険者に装着させて離脱させる。
そして、魔法騎士団と隠密騎士団は協力して、
ドラグーン六体の翼のみを狙い機動力をそぐ為に行動する。
魔法攻撃に麻痺矢での攻撃に、ガタ郎の子供達による親譲りのチョンパ系の攻撃がドラグーンを襲う…
ドラグーンもブレスを撒き散らして応戦するが、魔法騎士団のウォール系の防御魔法と隠密騎士団の回避性能にあしらわれている…
一点集中ならば突破されたかも知らないが、ガタ郎の子供達の撹乱作戦と翼膜チョンパ攻撃に苛立ち冷静に対処出来て居ない…
一匹、また一匹と地面に落ちていくドラグーン達は退避が終わった疾風アゲハが戻ると、隠密騎士団と再びドッキングして舞い上がり魔法騎士団もワイバーンで作戦空域から離脱する。
麻痺したり、翼を破かれた六匹は、畳み掛けてこない敵にキョトンとしているのだが、その間も俺は、二匹を引き連れたままレッドドラゴンに向かう…
そして、ワイバーンとドラゴンが一塊に集まった所で俺はファイアランスを…空へと打ち上げるのだった。
ビビってヤケクソの魔法を放ったと思ったのか、ドラゴン達は余裕の表情で俺を噛み千切ろうと口を開けて迫ってくる。
しかし、俺は…ミルトの街へと転移した…
いきなり消えた俺に驚くドラゴン達と、翼を使えなくなった六匹のドラグーンの上に、その時、遥か上空から石の雨が降り注ぐのだった。
俺は、転移したミルトの街の入り口からまた時間をかけて山頂を目指すと既に討伐は終了しており、
美味しい所はアベル騎士団長率いる第一ワイバーン騎士団に持っていかれていたらしく、ドラゴンの頭の上で俺に向かって手を振っていたのである。
ドラグーンは、騎士団のアイテムボックスに収まったが、ドラゴンはギリギリ入らずに俺の到着を待っている状態だったらしく、俺の皆より高レベルのアイテムボックスにドラゴンを収納して、振り向くと、助けた冒険者の一人が、
「えっ?ポルタの坊主か?!」
と驚きの声をあげる…
泥だらけで、少し焦げているが、忘れもしないゴブリンキング戦の時の一番手柄鋼の肉体のメンバー達である。
俺が、
「お久しぶりです鋼の肉体の先輩方…大丈夫でしたか?怪我ならポーションとか有りますよ」
と声をかけると、
斧使いのリーダーが、
「なんだい、ポルタ!冒険者辞めてどこかの軍に入ったのか?」
と聞いて来たので、俺は、
「冒険者を辞めたつもりは無いけど、貴族になっちゃったから…」
と答えると、
鋼の肉体のメンバーはアワアワしながら、
「お、お貴族様でしたか!?ヤバい呼び捨てにしちまった…」
などと慌てている。
俺は、
「いいよ、そんなの…一緒にゴブリンの巣に潜った仲でしょ」
と伝えると、やっと安心したのか鋼の肉体のメンバーは脱力して、
「いやぁ~、もうダメかと思ったよ…
ファイアドラグーン1体の納入依頼だったけど、ヘマしちまってデカ音を出したらドラゴンにバレて一斉にドラグーンに追い回されて…
冬前に一発当ててのんびりするつもりが…違約金だな…コリャ」
と、がっかりしていたので、ドラグーンを騎士団に言って一つ分けてあげた。
鋼の肉体のメンバーは恐縮していたが、
「フェルド王国のヨルドの街に一度遊びに来てよ。
それで、気に入ったら皆にオススメしといてほしいんだ。
その宣伝費としてドラグーン一体なら安いもんだから…待ってるよ」
と言って別れた。
山を降りて行くリーダーが、
「冬の間、飲んだくれている奴らも誘って遊びにいくから!」
と手を振っていた…
『じゃあ、夢の狩人のメンバーも来るのかな…?
旨いもの漬けにしてやるか!』
などと考えながら、ミルトの街に戻り再び俺はポーションでチャプンチャプンになった腹を擦りながらヨルドへの転移を繰り返したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます