第118話 街の完成と披露パーティー準備


街も完成して食べ物も充実した18歳の秋、ヨルドの街に遊びに来てくれたフェルド王国カーベイル国王様から、


「街が出来たのなら、皇帝陛下アルフリードを呼んでやってくれ…

出来たか?出来たか?とコッチに連絡をよこすのだ…以来、アルフリードなりにポルタ君に気を遣っているらしいが、いささか鬱陶しい…

完成披露パーティーを開けば、アレも落ち着くだろうから…頼む…」


と、お願いされて執事のテムズさんを中心に、おもてなし隊を結成して社交のシーズンにパーティーを開く事にした。


帝都やガイナッツ王国やアルトワ王国に転移を使い招待状を配り歩く…


この時ばかりは、転移スキルの便利さを感じる。


帝国貴族なら帝都の貴族を片っ端から呼ぶのがマナーらしいが、俺は出向しているので、フェルドの貴族を中心として、帝都の方は皇帝陛下と公爵様など有力貴族に、


『どうせ来ないでしょうけど来れたら来てね』


みたいな招待状を出すだけで良い。


パーティーの日は、ウチの街の貴族宿を丸々おさえてあるので皇帝陛下に我が町の技術の結晶のロイヤルスイートルームを味わって貰おう。


他の貴族達の部屋も用意したので腹一杯食べさせてぶっ倒れても大丈夫だ。


皇帝陛下には新型スプリングマットレスに冬場に飛んでくる鳥魔物のフカフカの冬毛と、ウチの隠れた名産品である非正規従魔の抱き枕サイズの芋虫達に出してもらった糸をつむいだ〈ヨルドシルク〉で作った寝具とパジャマにナイトキャップも用意してある…


『フッフッフ、宮殿の布団では満足出来ない身体にしてやるよ…』


と、ほくそ笑む俺なのだが、


「さて、そうなると料理の目玉はどうするかな?」


とブツブツ言いながら考えていると、何故か最近メイド服を着て俺の身の回りの世話を手伝ってくれている鬼娘のルルさんが、


「ポルタ様、前回拠点に転移で里帰りさせて頂いた時に、父上に〈美味しい茸〉の採取をお願いして有ります」


と言ってくれた。


俺が、


「それは有難い!」


と喜ぶと、ルルさんは目をつむり「ん…」っと、何かを待っている…


「何?」


と俺が聞くと、ルルさんは、


「ご褒美のチューです…」


と答えた。


俺が真顔で、


「誰から教わったの…そんなこと…」


と聞くと、ルルさんは、


「メイド長の〈シーラ〉師匠です」


と、答えた…そして、まだキス待ちを止めない…仕方がない…と、近より…そっと…


頭を撫でてやった。


「ありがとねぇ~」


と撫で撫でしていると、


「う~ん、いけずぅ~」


と、くねくねする鬼娘…


『これもシーラさんか…』


と呆れながら、


「シーラさんは今日のおやつ抜きで…」


と、俺が呟くと同じ部屋にいた執事のテムズさんが、


「承知致しました。」


と応えてくれた。


…シーラさん…二人きりの時にするように言わなきゃ!…ルルさんが、テムズさんの前でもチューすると思ってるよ…二人っきりでもそんなハズイ事しないのに…残念ながらドキドキもしなかったよ…


しかし、


『良いキノコが手に入るのなら良い肉も手に入れたいな』


と考え、加工したソーセージも良いが、レアな肉で驚かせたい…とテムズさんに相談したところ、


「ドラゴン肉ですかねぇ~」


と言っていたので、


『騎士団を連れてドラゴン狩りにでもいくか!?』


という流れになった。


街の警備は、パパチンこと ドド師匠に鍛えられた兵士団が居るし、騎士団が出払っても残されたワイバーンの世話は、何故か家畜に好かれるドテ君が頑張ってくれる。


さて、さて、ドラゴンの住み処なんて心当たりが…あっ、有るな…

冬には引っ越して春に帰ってくるドラゴンの情報を一匹知っている。


そう、ガイナッツの王都側の山に今の時期はレッドドラゴンが居るとギルマスから聞いた事がある。


『ウチの騎士団の力を知らしめる良いチャンスかも知れない!』


となり、騎士団に出撃命令を出す。


…と言っても、水腹になりながらマジックポーションを握り締めて、俺が三人ずつ転移するしかない…


と、いう事でポーションでチャプンチャプンになりながら7往復…騎士団二十名を運び終えた。


ワイバーン騎士団は勿論ワイバーン移動だが、魔法騎士団もワイバーンをテイムしている。


ある意味ワイバーン騎士団でないのは、隠密騎士団と俺だけだ。


なかなか数が揃わずに徐々に各地の街に商会の輸送のついでなどでお使いをお願いして集めた従魔召喚スキルを使いワイバーン騎士団は相棒を呼び出して、残りは疾風アゲハを召喚して、ドッキングして空を飛ぶ…


久々のマサヒロが


〈王さま、太りました?〉


と聞くので、


「鍋いっぱい程のマジックポーションのせい…だと思いたい…」


とだけ答えておいた。


飯が旨くて食い過ぎている気もしないでは無いが…


『よし、暴れてカロリーを消費するぞ!!』


と、意気込み、ヨルド騎士団は、各自従魔召喚で呼び出した相棒にサドルを装着し全員で山の頂上を目指し飛び立ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る