第117話 ヨルドに花開く食文化
着工から約二年、18歳の夏にヨルドの街が一応の完成を迎えた。
三千人は住める程の場所に四百人足らずしか現在は住んでいない為にスカスカ気味ではあるが、領主館にギルドに教会等々街の施設は充実している。
二年も有ったので戦争孤児なども含め街の子供は単純な事務処理能力ならば文官職の方々よりも早くて正確な者まで出て来た。
九九が無かった世界…今までどうしていたのやら…
よく解らない板の上に石を置いて計算をしている文官さん達にもどかしさを覚え、木工職人のマット爺さんにお願いして、〈ソロバン〉を作ってもらい、文官さんに教えた。
簡単な足し算、引き算からスタートして九九を教えて掛け算と割り算を教えていく、
理屈を理解するのは大人の文官さん達は早くて子供達に教えられる様になるまで2ヶ月とかからなかったが、流石は頭が柔らかい子供達の方が〈ソロバン〉自体の上達は早かった。
もう、その子達は現在どこのお店の店番のアルバイトでも出来る、頼もしい戦力となっている。
現在は全ての店がウチのファミリー商会のお店扱いだが、街に人が溢れる様になれば、徐々に一人立ちして雇われ店長からオーナーとして頑張って貰う予定だ。
あと、嬉しい事に戦争で散り散りに避難していた潰れた村の住人達がパラパラと戻って来てくれて農家の数が増えた。
〈小麦村〉〈野菜村〉〈酪農村〉の3つの村共に拡張し食糧生産力が上がり、そして、食糧が安定供給出来る様になり、新たに〈葡萄畑〉や〈果樹園〉の整備が出来て農家のバリエーションが増えた。
まぁ、果物が収穫出来るまでになるにはあと数年かかりそうではあるが、今後はヨルド産のワインや果樹酒、あとホップを育てて、ビール工場を作るのも良い…
『兎に角キンキンに冷えたラガービールが飲みたい…』
ぬるいエールビールしかない酒場で、キンキンに冷えたラガービールを出して酒飲みを驚かせたい!等と考えていると、次から次へと、一緒にソーセージも食べたい…燻製文化は有るに、腸詰めは見たことが無い!
などと思いつき、ヨルドの街のリーダー会議を召集して職人チームと今回は街の食堂の料理人と商業ギルドマスターを主体とした。
『こんなの他所にありますか?無かったら特許出して名産にしましょう会議』を開催した。
案の定、〈腸詰め〉はまだ登録されて無かったので、前世の記憶を記録と検索のスキルで絞り出して、〈ミンサー〉をゴング爺さんに作ってもらい、
アタックボアにタックルボアなどの小型、中型の猪の肉や腸を使って、各種スパイスの配合を変えて試した結果かなり旨い商品が出来た。
勿論特許を取り新たに旧ヨルドの街にソーセージ工房を作り、ソーセージの普及に合わせてミンサーも普及すればそちらも特許使用料で追加収入になる。
ウチのヨルドの酒場では、生活魔法のクールのスキルを取得した店員を配置し、良く冷えたエールを提供するようにして、たまたま街に来た冒険者にソーセージとエールを提供すれば各地に噂が広がるのは間違いないだろう…
その後もパスタやピザ、そしてロックウェル伯爵家にプレゼントした唐揚げとトンカツのレシピも、ロックウェル伯爵にも一丁噛んでもらい、正式に特許を出して、ウチの唐揚げとトンカツの売上の一部をロックウェル家に納める形をとり、かわりに、
「アルトワ王国のロックウェル伯爵家直伝!唐揚げ専門店、〈貴族鳥〉」
の様に〈貴族の味を庶民が楽しめる〉…みたいな付加価値を付けさせてもらった。
ロックウェル伯爵もノリノリになり、
「我が家の料理長が弟子に後を譲り隠居するから、〈トンカツ〉専門店をポルタ君の町で開かせたい!」
となり、新たに店が増える事になった。
いっそのこと色々な揚げ物のレシピも提供して揚げ物専門店にしてもらい串カツや魚のフライも作ってもらおう!
あとはヨルドの街ので作り始めたフワフワ天然酵母パンにはさみカツサンドにフィッシュフライバーガーなども作ろう!などと盛り上がった結果、元ロックウェル伯爵家料理長〈ロウ〉さんのお店『揚げたロウ』と、
ヨルドのパン屋の〈ミック〉さんの息子〈マック〉君が一人立ちし、パンは父親の店からと、〈揚げたロウ〉からフィッシュフライやトンカツを仕入れて
『バーガーショップ、マック』をオープンすることにもなった。
名前も名前なので、悪ノリして〈ミンサー〉も使ってミートパティも作り色んなバーガーも考案した。
勿論ビックなヤツもある。
これらも、特許を出し出店やレシピの利用は暖簾分けした店のみとしたのでフランチャイズが広まれば広まる程儲かる予定である。
そして、料理長だったロウさんが加わった事によりヨルドの食文化の発展は加速した。
俺がレシピを教えてロウさん達が再現する。
しかも、ロウさんが息子や弟子や料理人仲間を集め、〈ロウグループ〉を作りウチのファミリー商会の傘下に入ってくれた。
『揚げたロウ』以外店舗は商会完全出資で用意し、
『パスタ専門店、茹でたロウ』や
『焼き鳥、串焼きの持ち帰り専門店、焼いたロウ』
など…
食の都としての機能はかなり整ったが…こうなると米が無い事が悔やまれる。
ヤケクソで小麦を炊いたが…『コレじゃない!』が凄く、余計に米が恋しくなってしまったのだった。
暫くはパンとパスタで我慢することにする。
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