第116話 完成、ヨルド騎士団と兵士団


無事に、ワイバーンのスカウトに成功した俺たちは、また数日がかりでクマ五郎キャンピング馬車でガイナッツ王国の王都ミルトの街まで戻り、工房の娘であるビューティーさんからワイバーンのサドルを受け取った。


ビューティーさんは手先が器用なので、出来上がったサドルにウチの騎士団の物だと解る様に焼き印を作ってもらっていたのだ。


蜂蜜壺の刻印のついたサドルを街の入り口でワイバーン達と待つアベル団長達三人と、無事に素材にならずぬテイム出来た六匹のワイバーンのもとに急ぎ、ここから彼らは練習も兼ねて空を飛びヨルドを目指す事になる。


「落ちないでね…」


と心配しながら街で購入した食糧やハイポーション等を三人に渡して、ワイバーン達には新鮮なお肉を幾つか用意して、


「足りなくなったら現地で狩りをしてね」


と告げた俺は一足先に転移スキルでヨルドに戻り、ワイバーン牧場を整備するための準備を始めるのだった。


しかし、ヨルドに残った騎士団達は、団長達だけお出かけしたのが羨ましいらしく、サントスさんに交代で軍事訓練も兼ねて「討伐に行きたい!」とお願いされてたらしく、


「いかがなさいますか?」


相談されてしまった。


結局、団長達がワイバーンで帰ってくる前に、ワイバーン牧場は我が家の知恵袋サントスさんと、土木担当のアリス率いる城蟻チームにお願いして、


サントスさんの調べてくれた必要スキルのお使いメモを持ち、トンボ帰りで再び帝都に飛んでスキルスクロールを買う。


騎士団は、

〈フィジカル〉・〈テイマー〉・〈アイテムボックス〉・〈耐寒〉

を基本スキルとして戦に備え、


兵士団は、

〈フィジカル〉

を基本スキルとして治安維持を目指す。


そして、強くなった皆さんに素材回収を依頼すれば、騎士団と兵士団の装備も整えられる。


という事で、帝都に飛んでスキルを買い漁ったが、流石にレアスキルの〈アイテムボックス〉などは仕方ないとして、コモンスキルの複合で手に入る〈フィジカル〉といえど数が揃わなかったので、追加でミルトの街とクレストの街にも転移して、スキルスクロールを揃えてからヨルドに帰る。


総勢50名にスキルもりもり改造を施し、兵士達には五人一組で一週間交代で近場で鉱物資源回収と魔物討伐を行ってもらう。


まぁ、五人分ぐらいしかマシな武器や防具が揃えなかったのが理由だし、全員で向かえば町の警備が手薄になるからである。


そして兵士団専用お出かけセットとして、マジックバッグとツルハシやスコップのセットを渡してあるので、ヨルド近隣の魔物の間引きと鉱石回収がおこなえて、体を動かしたい兵士達のストレス発散にもなるだろう。


騎士団は三人交代で、俺と現金収入と装備の強化の為に魔物素材を狙いに冒険に出る予定だ。


サントスさんのアイデアで、アゼルとメリザに指名依頼としてミスリルを中心に鉱物資源を採掘を依頼した。


二人は拠点から近いバラスダンジョンに潜り鉱石納入依頼として少しでもギルドポイントが入れば早く昇格してこちらに手伝いに来てくれるかも知れないという願いも込めてであるが、集まったミスリル等はウチの騎士団の装備に回される予定である。


とまぁ…スキル等、だいぶ散財したが、普通は街の整備に工賃などの人件費に材料代が必要だが、ウチはかなりソコが節約できているので他の部分に回せる…


『アリス様々である…』


アリス達には少し良い果物でもウチの商会経由で買い付けて届けよう…



などと…ここ一年近く冒険者だったのにろくな依頼や討伐をしなかったのに、この半年程でアホみたいに地竜狩りや大型魔物の討伐で騎士団のレベルアップや素材集めを行い、街の完成を待たずして我がヨルド騎士団とヨルド兵士団がの装備が完成した。


騎士団総勢二十人のうち、十名はワイバーン騎士団として、地竜の鱗とミスリルを鍛えた軽くて強い〈竜鱗魔銀の胸当て〉と〈竜鱗魔銀の兜〉に、地竜の皮にミヤ子の〈お肉ドロドロ鱗粉〉をかけて柔らかくした〈ドラゴンの服〉を正式装備とした。


グリーンドラゴンの鱗を使った俺の〈龍鱗魔銀シリーズ〉には劣るが〈竜鱗魔銀〉もかなりの強度だ。


五名は、魔法騎士団とし、基本装備は地竜の皮の〈ドラゴンの服〉と〈竜鱗魔銀の胸当て〉は変わらないが、ゴング爺さんが持っていた前回のグリーンドラゴンの柔らかくした皮でフード付きマントを作ってもらったので防御力はかなりのものだ。


そして残り五名は魔法騎士団と同じ様な基本装備だが、色を黒に染めて索敵、諜報、潜伏に特化した騎士団とした。


彼らは追加で隠密系のスキルとテイマースキルで俺の従魔の二世と契約してもらった。


影に潜れるクワガタだが大きさや顎の形も微妙に違うガタ郎の子供と、マサヒロのと奥さんの〈疾風アゲハ〉の子供達も従魔として従魔召喚も取得した空も飛べる隠密部隊だ。


普通では意志疎通が難しい虫従魔達との訓練は困難だろうが、我が家には喋れるムカデのタンバ君が虫達の将軍をしてくれているので、隠密騎士団の訓練も順調に仕上がって彼らは自由に空を飛び、闇に紛れて首チョンパ攻撃を放ち離脱する事も可能となったのだ…


と、かっこよくさも予定どおりみたいに言っているが、バタバタの後で久しぶりに拠点に帰ったらノーラ母さん以外に子供組もドッキングして空を飛んでいたのでビックリしたのが理由であり、知らない間にマサヒロまで…芋虫だったのに今では20匹近い子供のパパになっていたのだった。


だから、


『あれ?ノーラ母さんもだが、練習したら子供達も飛べるのならばウチの騎士団も…』


と閃いたから、マサヒロの子供の中で何人かをウチの騎士団所属になってもらったのである。



という事で、騎士団の胸当てにはイメージキャラクターがチーム毎に付いている。


第一ワイバーン騎士団五名には〈蜂〉

第二ワイバーン騎士団五名には〈蝶〉

魔法騎士団五名には〈クマ〉

隠密騎士団五名には〈クワガタ〉


俺の従魔をモチーフにしたシルエットが刻印されている。


『カッコいい…』


ちなみにだが、我がヨルド家の紋章は皇帝陛下から贈られたのだが…

薄々気づいているとは思うが、ワイバーンの鞍にもつけてある焼き印と同じで蜂蜜壺である。


蜜壺にハドソンマークの様な蜜蜂のシルエットが有るのが我が家の紋章であり、戦場で見たら10人中30人にナメられそうな迫力に欠けるユルダサいデザインだ…


『皇帝陛下!あれですか?!蜂蜜だけにナメられるってダジャレですか…

ハドソンならあれか?どこぞの名人みたいにマリーみたいなのが上を飛んでる間は無敵とかにしてくれよ!』


とまぁ…皇帝陛下のデザインセンスが終わってらっしゃるのは解ったので、せめて、胸当てのマークは紋章以外でカッコ良くしたい騎士団の静かな抵抗だろう…


あと、兵士団30人にはワイバーンの皮と魔鉱鉄の鎧セットを支給し、胸には蟻のシルエットが刻印された装備を着て街の安全を守っている。


そして、五人一組のチームリーダーには特殊装備の麻痺攻撃を付与した〈十手〉を預けてある。


暴れる奴は麻痺らせて投獄である!


勿論、牢の地下には例のヨルドの地下在住の闇の一族専用の控室があり、いつでも祭りが行える体制を整えている。


二度と悪さをしたく無くなれば良いとの思いからだ…しかし、叶うならば祭りが開催されることの無いこと願う…

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