第115話 久しぶりの狩り


現在、久しぶり…いや、滅茶苦茶本当に久しぶりの冒険に来ている。


馬車移動の時に遭遇する魔物の回数も減り、魔族の大地では時期が時期だったのか活動している魔物も少なくて、たまには遠くに見えるが、


『いまはそれどこじゃないし…』


という理由で戦っていなかったのだ。


俺の


「魔物を倒して強くなりたいし、素材も欲しいし、お肉も欲しい!」


というお願いになんとか許可も出て、騎士団長の〈アベル〉さんと、副団長の〈シルバ〉さんと、我が騎士団の女性騎士の〈メル〉さん…


『男ばかりの旅が、むさ苦しいから参加してもらった訳じゃないんだからね!

アイテムボックス持ちだし、弓の名手だからなんだならねっ!!』


という事で、この三人と一旦帝都に転移スキルを使って移動して、皆でスキルショップに寄り皇帝陛下からもらった貴族としての支度金の中から、三人に、


我が騎士団の基本スキルにしたい複合スキルの〈フィジカル〉と、


ワイバーン騎士団の創設に〈テイマー〉と、


ワイバーン騎士団には運搬作業もして欲しいので、〈アイテムボックス〉と、


空は寒過ぎるとアゼルとメリザが言っていたので、

〈耐寒〉を取得出来る様にスキルを買う。


この三名にはウチの騎士団のテストも兼ねて一足先にスキルを取得してもらいたいのだ。


アベルさんと シルバさんは既にフィジカルのスキルを持っていて、

メルさんは、すでにアイテムボックスを持っているので少し節約出来たのは嬉しい。


なので浮いたお金で、ワイバーン狩りに行く途中のガイナッツ王国の王都で…というか、タッグさんの工房でゴング爺さん達の近況報告ついでに少し無理を言ってワイバーンのサドルをさん三人前お願いしてから、街の入り口で転移ポイントの登録をした後に、クマ五郎のキャンピング馬車で以前も行った、南の森の奥にあるワイバーンの巣に来ているのだ。


以前来た時から一年以上が経っており、あの惨劇が嘘の様に数多くのワイバーンが巣を作っていた。


今回はドラゴンのカップルも来ていないので大騒ぎにもならずに、ワイバーン達を殲滅する訳では無いので端っこの一塊のみをターゲットにして、ミヤ子の麻痺粉でちょっとの間シビレているワイバーンの親の隙間からタマゴを物色していく、


アイテムボックスに入る卵はもらって、入らない場合はそのままにして次の世代として資源を…というかアイテムボックスに入らないものは単純に持ち運びが面倒臭いからなのであるが…


しかし、呑気に卵からワイバーンを孵していくのも少し時間がかかるので、タマゴを全て没収したシビレている親を縄で縛り、


『今回同行してくれた騎士団チームに後でテイムを試みて貰う!』


という事になった。


そして、近所の巣をゴソゴソしている俺達に、狩りから帰って来たワイバーンが、


「グゲェェェアァァァァ!」


と警戒音を出しながら襲いかかる。


そんな時はガタ郎の羽根チョンパ攻撃で墜落してもらう。


久しぶりの活躍で、


〈いゃっふぅぅぅぅ!でやんすぅぅぅぅ!!〉


とハッスルしているガタ郎を


『あいつ色々と溜まってるのかな?』


と俺は少し心配しながら眺めて、落ちてきたワイバーンを皆でボコしていく。


結局、タマゴを十個と、刃向かってきたワイバーンを八匹分の素材と、スマキにしたパパママワイバーンを三家族分ゲットした。


力仕事要員としてクマ五郎とクマ美を召喚する…

ちなみにだが、クマ五郎達の息子に〈ゴロリ〉と命名して従魔契約をすると、色も形も変わらなかったが白い四本腕の小熊は少しずつであるが成長につれ喋れる様になり、すっかり拠点の子供組に溶け込んでしまっている。


『草引きのお手伝なんかも頑張る良い子であるが、名前が名前なので、四本ある器用な手でそのうちワクワクする様な工作なんかが出来るかも知れない…』


などというアホな事も考えれる程まで育ってくれたので、今では夫婦共に出勤しても大丈夫になっているのだが、俺があまり冒険出来なくなってしまい二人は馬車を引く仕事以外では久しぶりの出勤に気合いが入っている様子である。


麻痺してスマキ状態のワイバーンをヒョイと担いでワイバーンの巣から離れた森の中まで、まだ生きているスマキワイバーン達をエッチラオッチラ運んでくれた。


アイテムボックスに入らないタマゴは、両親共に巣で麻痺っている別のワイバーンに預けておいた。


『麻痺から覚めて暖めてくれたらいいのだが…』


そして、ここからが問題なのだ…

騎士団チームに森の奥でスマキワイバーンをテイムして貰う。


しかし、


正直、従魔にする普通のやり方など、俺は試した事がない…図書館て仕入れた知識では、

ぶん殴って力の差をみせる…

優しく接して心を開かせる…

運任せで名付けしてみる…

の3パターンである。


俺の場合は特殊であり、いきなり合意の元での名付けとなっているのだが、アベル騎士団長達に色々と試してもらって駄目ならば、今回はワイバーンの素材が増えてタマゴのみを持ち帰る事になる。


『出来ればテイムをして欲しい…』


と俺は願いながら皆で暫しの休憩をはさみミヤ子のシビレ粉の効力が切れるのを待つのだった。


数時間が過ぎて麻痺から覚めたワイバーン達が騒ぐが、ロープでスマキにされて動けない…そんなワイバーンに向かって、


アベル団長が一番反抗的な一匹に、


「静かにしろ!」


とワンパンを入れてから睨み合いをする…次第に静かな戦いはアベル団長の気迫が勝り、ゆっくり目を閉じて頭を下げるワイバーンに、


「ガッツが有る奴は嫌いじゃないぜ、宜しくな〈サンズ〉…」


と言って一匹と契約をかわした。


副団長のシルバさんは比較的おとなしいワイバーン夫婦の前に行き、


「俺は、あんまり暑苦しいの好きじゃないんだよ…二人とも、グーパンとか嫌だろ?お互いの幸せの為にさぁ…」


と、目の前にアイテムボックスから肉を取り出して並べて


「食えよ…」


と、やっている。


まだ、時間がかかりそうだ…


女性騎士のメルさんは何とかロープをほどこうと試行錯誤しているワイバーン夫婦に近付くが、どうしようか悩んでいる。


俺は、装備している幸運のペンダントをメルさんに貸してあげて、


「これを装備して、〈いきなり名前を付け〉を試してみて。」


とアドバイスをした。


メルさんは、幸運のペンダントを身に付けて、


「ペス!」


と昭和の犬みたいな名前を手をかざして呼ぶと…

可愛そうにアイツは〈ペス〉にったみたいだ…


それを見たシルバさんは、


「メルちゃんズッルいよ!

俺なんて反応の薄いワイバーンに30分以上話しかけてるんだぜ?!」


と拗ねているとスマキのワイバーン達が、可愛そうな子を見る目でシルバさんをみている…


シルバさんは、


『お前は解ってくれるかブラザー…』


としょんぼりしながらスマキのワイバーンを軽く撫でているのだが…


『?あれ、ブラザーって名前でテイム出来てない…あのワイバーン…』


と、俺を含めて皆気がついているが、全くテイムした事に気づいていないシルバさんを眺めながら時間を過ごしたのだった。

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