第114話 新たな都の産声


領都整備を開始して約半年…お隣の魔の森は順調に整地と、畑での作物の収穫も出来て、じゃがいもやキャベツを魔王国へ送り出している様子である。


昔から森を守る五匹のヌシのおかげで、ドラゴン等の厄介な魔物も寄り付かず、良くない死霊系の魔物も出ない安住の地が再び魔族の王を迎える為の土台作りへと移行している。


魔の森の中心の旧魔王国の都の跡地だけでも俺がもらったヨルド領の倍以上ある。


その広大な土地の整備だけでも大変な労力だが、それをアリスの一族がお手伝いして、魔王国からの協力料として開拓の時に伐採した木材を半分頂く事で話がついている。


もらった沢山の木材はヨルドの領都の為に使われる。


樹齢300年程の立派な木材がアリス達のアルバイト料として手に入るので本当にアリス達には感謝してもしきれない程である。


それに、ヨルドの新たな都は現在、こちらもアリスの一族達の頑張りで基礎工事が終了し、区画割りと近くを流れる川を使い堀と水路を巡らせ、そこから出た土を使い壁を作っている。


鉄筋蟻固め工法は大成功で、旧ヨルドの防衛砦と同じ厚みの壁でも防御力は約2倍以上となった。


商業ギルドにこれも登録して特許でウハウハか?などと、考えていたが、そもそも城蟻等を使役しないと出来なくない?と、気がついてガッカリしたものだ。


しかし、鉄筋コンクリートの知識…まさか異世界に来てから建築の知識を使う事になるとは…

シェラの鳥小屋で発揮した以来、冒険者には不要な知識だったのだが、前世の俺は結局使わなかった知識…いや、使えなかった知識だ。


親の離婚により預けられた父方の爺さんは、田舎で細々と大工をしていた。

親父は都会で仕事漬けの毎日で、小学、中学と爺さんの背中ばかりを見て俺は育った…


『いつかは爺さんの後を継ぎたい…』


そう思い高校は建築科のある高校に進んだが、高校の時に爺さんがポックリ逝ってしまった。


大学に進学せずに、一刻も早く大工になりたくて、爺さんの友達の親方に弟子入りしたのだ。


しかし、弟子入りして直ぐに入ったリホーム現場で…〈G〉の洗礼を受けて…気を失ってしまったのだ…


『今思うと、何とも情けない…』


親方に、〈大工は諦めて、勤め人になれ…〉と勧められて、尻尾を巻いて建築系の仕事から逃げ出して、人生設計が狂ったまま面白くも何とも無い人生を送った…


と、そんな知識が巡りめぐって、やっと役に立っているのだ。


5メートルを超える壁に囲まれた街は、東西南北に二本ずつ走る大通りで、碁盤の目に区切られ、壁に沿ってぐるりと道が取り囲む、九つのエリアに分けられた街を作る予定だ。


一番から九番のエリアは電話のプッシュボタンの配列で、

一番エリアは、騎士団のエリア


二番エリアは、領主と、役場エリア


三番エリアは、学校や治療院に教会や孤児院などの施設エリア


四番エリアは宿屋に食堂街のエリア


五番エリアは、中央公園で、各種市場や催し物や市民の憩いの場としてのエリア


六番エリアは、商業ギルドと商会や商店街のエリア


七番エリアは、冒険者ギルドと酒場と冒険者宿と、少しアダルティーなエリアも含む


八番エリアは、入り口広場エリア、露店が並び、五番エリアへと続く開けたエリア


九番エリアは、武器、防具の制作、販売も行う工業エリア


と、冒険者や旅行者を呼び込みガッポリ稼げる街を目指す。


そして、ヨルド町から先ずは食い物革命を起こすんだ!

既に放棄された3つの村も壁で囲み、ヨルドの住民で農業が得意な者に、

小麦畑村・野菜畑村・酪農村 として稼働させて食糧を生産し、それを旧ヨルドの町で加工して外貨獲得に繋げる予定で動いている。


将来的には旧ヨルドの町は、丸々商会の工房エリアとして、チーズや小麦粉をはじめとして、パスタの生産などもしていきたい…


領主になって夢は広がったが、ガッカリしたことも有る…それは、


『もう、気楽に冒険に出られない事だ!』


鉄が足りないからとか、ウチの騎士団にワイバーン騎士団を作るためにワイバーン狩りに行こうとすれば、サントスさんをはじめとして家臣団に待ったを掛けられる。


サクッとワイバーンやドラゴンを倒して稼いだりしたいがそうも行かない…

どうしてもならば、転移のスキルで魔力を大量に使うが三人迄なら一緒に飛べるので、騎士団員を三名は連れて動く様に言われた。


現在、転移先はヨルドの町の入り口と、

拠点の入り口、

クレストの町の入り口に、

帝都の入り口が、転移スキルに登録してある。


転移の約束事として、町の入り口にしかポイントを設定してはいけないルールがある。


暗殺や、密輸のリスクを回避するためらしいが若干不便だ…

そして、現地に行って登録するしかポイントを設定出来ないのも面倒臭い。


そして、登録先が5件と…便利だが、いまいちのスキル…しかし馬車で1ヶ月以上かかる場所にひとっ飛び出来るのは大きい。


ワイバーンのタマゴを手に入れる為と、レッドドラゴンをいずれ殺ろうと思っているので、ガイナッツの王都ミルトの入り口にもポイントを設定したいからなて


『よし、騎士団の強化と、ガタ郎達を久しぶりに暴れさせてやるか!!』


と決めたので、サントスさんに許可申請を出そう…


なんだか手間だが仕方ない…

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