第111話 会議の終わりと開拓のはじまり


かなり予定外の展開はあったが、なんとか無事に食糧支援物資も渡せて、魔族の市民の皆さんにも渡る様に配られたのだが、いつまでも支援物資に頼る訳にはいかない…


早く自分たちで食糧を確保出来なければダメなのだが…しかし、何故か魔族の皆さんは会議の席で揉めている。


遥か昔魔の森の中心に有った召喚士の国家が魔族の起源らしく、異界の者を召喚して豊な生活をしていたらしい。


そして、上位の異界の者と召喚士が恋に落ち産まれた方々の末裔が魔族の貴族的な方々で、一般的な異界の者達の末裔が魔族の民の方々らしい。


ウチのマリーを例に出すと、異世界から召喚された異界の蜂魔物とマリーのご先祖様の誰かが恋に落ちたらしく、その異界の遺伝子がレベルアップなどで活性化すると魔族種となるらしい。


そして、魔王様は指定した魔族やその配下の魔族まで、異界からの遺伝子を活性化させる〈眷属〉というスキルを持っている為に〈魔王〉に即位する事になるらしい。


そして会議場では、活性化し強くなった魔族の一団が、


「我らが恨みを晴らす時!南へと進軍し〈武力〉にて魔の森周辺を統一し魔族の復興を!!」


と唱える。


また、他の一団は、


「やはり、人を心から信用するには、我々は長年迫害されてきた為に〈怖い〉ので、5聖獣の守る地とはいえ復興には時間が掛かるし、守ることが出来る壁や城が出来るまでは魔王国に留まり復興と他国からの戦争の可能性を考えてバランスを取る為に国の機能を分けましょう」


と軍事分野や国の中枢は残しつつ開拓者を送り込む事を推奨する。


そして、魔王様の派閥は、


「こんな寒いところポイして、皆で魔の森へ帰りましょう!

300年前の魔王は人間を下に見て愚かな判断をしたけどそれ以前は仲良くしていたはずだから、ごめんなさいして皆で一から頑張ろう!」


と訴える。


しかし、意見は平行線だ…


今までは腹の内は違えども、「魔の森を目指す!」という一点でのみ団結していた魔王国に、魔の森は〈帝国と仲良くするなら手に入る〉という権利が降って湧くと、

魔王の恩恵で強くなった者は、人と仲良くなど出来るか!となり、

人を恐れる魔族は、すぐに信用は出来ないので、保険を担保したくたる。


なので魔王様の、


「ゼロから頑張ろう!皆で人間達との未来を作ろう!」


みたいな思考には踏み切るには、極寒の地で300年…人を臆病にさせるには十分な時間だ。


そして、何故俺はこの魔族会議に出席させられて居るのだろう?…

アゼルとメリザは…と言うかメリザがかなりイライラしていて落ち着ける為にアゼルが連れ出して周辺で狩りをしている。


あぁ、俺も行きたいよ…外に…


『えぇっと、あとシシリー様…事ある毎に腕に絡み付き、ニコニコと見つめないで下さい…

それと、軍関係の方々…〈殺す〉って聞こえてきそうな目て見ないでください…

ついでに、宰相さんとその周辺の方々…〈生暖かい目〉で見てないで、シシリー様に注意してください…もう、肩身が狭い…』


という連日の会議でもらちが開かない…ので、一旦結論を保留し折衷案で仮の決定としたらしく、


一番の目的は


〈食糧の供給の為の暖かい土地の確保〉


なので、魔の森を開拓するのは決定となり、武力行使は攻め込んで来た場合のみとして、魔王国の機関は極寒の地のままとする事になったのだ。


魔の森の開拓チームのリーダーは宰相閣下として、先ずは秋の収穫を目指す。


という事で魔族の皆さんも一応納得の結界となり、魔の森の整備が完了した後に改めて会議を開く事になるらしいが直ぐではないだろう。



そして、開拓部隊と一緒に帰れる目処がたったのだがシシリー様が


「私も、ポルタと一緒に行く!」


と騒いでいたが、俺に敵意剥き出しの青白い顔のオッサンに止められていた。


今後は開拓部隊を率いる宰相様のチームと当面一緒に行動するのだが、開拓は城蟻達にお願いすれば、あっという間に畑や壁など着工出来るだろう。


よく解らない魔の森のヌシ達のザルな結界も魔族の方々は運用出来るらしく、宰相様に至っては魔族の中でも超長生きらしくなんと300年以上前の魔の森生まれなのだそうだ。


魔の森の事ならばハゲ…いや宰相様に任せておいた方が上手くいきそうな程である。


人材も、知識も、土地もあるのだがら会議中、外野の俺の意見からすると、


『とっとと畑を耕した方が良いのに…』


と何度思ったことか…



そして、やっと魔王国から帝国方面へと向かう列が南に向かい出発した…


魔の森のヌシ達に迎え入れられた魔族の一団を魔の森に残し、俺は、魔族側の責任者であるルキフグス宰相様と帝国側の窓口となるフェルド王国の王都フェルドナに向かった。


アリストンネルを抜けてヨルドの町に入ると、


『帰って来た!』


と思える…既にタンバを魔王国に一度召喚して伝言を頼み、カーベイル国王への伝令を出しておいたので、フェルドナには魔の森の国境整備の為に集まっている帝国側の要人も集まっており魔王国と帝国との歴史的な会議が行われようやく、俺の帝国側の特使としての大役を無事に終える事が出来た。


あとは、国同士で頑張って仲良くして欲しい…もう、帰ってしばらくユックリしたいよ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る