第109話 魔王城探訪とご対面


タリウスさんの案内で石作りの城に入って行く…

魔族の方々は極端に身長の高い方や低い方やがいるのらしいので、天井は身長の高い方に合わせて三メートル以上あり、扉も門の様な扉に小さなドアが設置してある不思議な作りだ…


俺とアゼルとメリザはキョロキョロしながら広い廊下を歩く…

タリウスさんが、


「部屋や、廊下も大っきくてビックリでしょ?

魔族には巨大な魔物から進化した者も居るし、大きな魔族に合わせるとこうなっちゃうんだ。

でも、貴族の皆さんは古の召喚士の一族と異世界の神様や、天使やらの末裔だから、案外人族と見た目は変わらないから安心して良いと思うよ…

でも、いくらポルタさんが、良い人でもいきなり魔王様に謁見は無理だから宰相のハーゲイル・ルキフグス様に逢ってもらうからね」


と説明してくれた。


『確かにタリウスさんが、歩き回れる広さの廊下…馬…というか馬車で乗り入れても平気なようだ…

あと、まぁ、他国からの使者とは言えいきなり貴族でもない人間が来たら安全の為にそうなるよね…』


と理解し俺は、


「はい、タリウスさんのおかげで、魔王国に来れて、トントン拍子でお城にまで入れただけで感謝です。

宰相様にマルス帝国の方々の手紙を魔王陛下に託したら、あとは食糧をお渡し出来ればほぼ目的は達成しますから…」


と礼を述べるとタリウスさんは、


「町の皆も喜ぶよ。

長い冬の間は保存食ばかりだったし、何よりも、数年前に300年ぶりに魔王様に覚醒されたシシリー様が即位されて、我々に力を授けてくれるまでは、本当にひっそりと隠れ住んでいたから、ひもじさに耐え続けたヤツばかりだ…

新鮮な野菜や果物を食ったことの無い子供も居る…食糧支援は本当に有難いよ…」


としみじみ語った。


そんな話をしながら到着した扉のまえで、タリウスさんが、


「あっ、そうそう!ポルタさんも兄妹の2人も宰相様はファーストネームで呼ぶと不機嫌になるから、〈ルキフグス様〉か〈宰相様〉って呼んであげてくださいね」


と忠告された。


俺は、


「うん、解ったよ、ありがとうね、タリウスさん」


と手をふりタリウスさんと別れ、宰相さんの執務室の前で案内をタリウスさんから翼の生えたお兄さんに交代した。


『鳥タイプ?…ハーピとかそんな感じというか、天使っぽいお兄さんだな…』


などと、新たな魔族のお兄さんの背中を眺めながら少し移動し、お兄さんはデカい扉の一部の小扉をノックし、


「宰相さま、帝国からのお客様をお連れしました」


というと部屋の中から、


「入るがよい」


と渋い声が聞こえる。


デカい扉に設置された普通サイズの扉をくぐり、通された部屋は縮尺や遠近感が狂いそうな作りであった。


広い部屋の端に机が、幾つかあるだけの執務室…


体育館で追試を受けているような雰囲気で、資料の束を持った監視員に見られながら、バリバリと問題に取り組むような…禿げ頭が見える…


『あぁ、だからファーストネームのハーゲイルがNGなのかぁ…』


と、納得していると落武者ヘヤーの宰相様が、


「帝国からの客人と聞いているが…」


と、手を止めて聞いてくる宰相さんに俺はアイテムボックスから皇帝陛下からの書簡を取り出して、


「ルキフグス宰相閣下、まずはお時間を頂きありがとうございます。

私は、現在、帝国の魔の森の一部を間接的に管理しておりますポルタと申します。

後ろの二人は我が兄妹達です。

現皇帝、アルフリード・エルド・マルスより魔王陛下への書簡を届けに参りました。

それと合わせて帝国内の各王からの書簡と、皇帝陛下から食糧の支援物資も預かっております。

お噂では周辺の国々に攻め込まれ撃退されたと伺っております…

是非、魔王国の国民の皆様への、お祝いのも兼ねましてお納めいただければと存じます。」


と皇帝陛下からの書簡を差し出すと、それを受け取る宰相さんは、


「魔王陛下と手紙を確認した後に支援物資は受け取る事にします。

何もない所ですが、お部屋用意致しますので本日はゆっくりと休まれませ」


と言ってくれた。


魔族にはオーガさん達で少し耐性があるが、やはり貴族の部分には平民の俺としてはどうしても緊張してしまう。


宰相さんの指示でテキパキ動く魔族の方々のはバリエーション豊かで覚えるのが大変だ。


王様達からの手紙も、爬虫類っぽい文官さん?の手押しワゴンに出した後に、天使風の鳥魔物の魔族さん?に、


「こちらです」


と案内されて魔王城の客室に通された。


ベッドも机もデカい…


俺とアゼルとメリザが同じ部屋に通されたが…ベッドが一つだけだ…まぁ、普通に三人で眠れる広さのベッドではあるが…

と思っていると、


「従者の方々のはこちらです」


と隣の部屋に案内されていた。


なんと他にも鳥型魔物の方々用の止まり木の部屋や、水性魔物の方々の用のプールみたいな部屋など、客室と言っても多種多様な作りであった。


『色々な種族をもてなすのは大変そうだな…』


と考えながらも俺は広すぎる部屋に落ち着けずに、アゼルとメリザの部屋におしゃべりしに行こうとすると、2人も自分達のだだっ広い部屋に、


「落ち着かない…」


と、俺の部屋に入ってきたのだった。


トイ・ストーリーのオモチャにでもなった気分で巨人用の部屋の使い心地を確かめていると入り口の扉が忙しなく叩かれ、


「ぽ、ポルタ殿!入ってよいか?」


と先ほどより、声のトーンが高い宰相さんがやって来て、俺が扉を開けると飛び込んできた。


そして、


「明日まで待てぬゆえ、魔王陛下が逢いたいと申しておるので急で悪いが、皆さんで謁見の間へお越し頂きたい…よろしくお願いいたします」


と、言われた…


急でビックリだが、いよいよ魔王陛下のご尊顔を拝し奉る事になった…粗相が無いようにせねば…

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