第104話 ムカつく会議と我慢の限界


現在、帝国の全ての国の国王が一同に集まる会議に出席して…いや…させられている。


今は社交のシーズンで、帝都の屋敷に王様や有力貴族が滞在している期間のために、一声かければこの様な会議が開かれるらしい。


このメンツを待たせてるとなれば道中でモルドレットさんがヤキモキするのも解るよ…


フェルド国王のカーベイル様が詳しく説明してくれなければ、皇帝陛下の、


「虫の勇者と名高いポルタだ。

こちらは、各国の国王達だ…それでは議題に移る」


の紹介のみで会議が始まりそうになった。


『アイツ…マジで…!』


と、皇帝のおっさんにイラッとなりながらも、とりあえずノーヒントで会議が始まるのだけはカーベイル様のおかげで避けれたのだが…しかし、未だに何の会議か解らない。


皇帝陛下が、


「では、改めて魔王軍の事だが…」


と、きりだした…


『ぐ、軍務会議か!?』


と察するが、それならば尚更俺が呼ばれた理由が解らん…


しかし、ダラダラと行われる糞長い会議を簡単にまとめると、


〈新たな魔王が誕生した。〉


〈魔王国は300年前の前魔王の政策で世界に牙を向けて暴れた結果、連合軍と勇者により極北の地に追いやられて今に至るが、実りも少なく大変な生活をしているらしい…〉


〈近隣の国が、魔王誕生を感知して魔王が力をつける前に潰そうと攻め込んだが、返り討ちにあったらしいが、しかし、今回の魔王軍は国を滅ぼさずに、南に進軍する為の領地の割譲のみを敗戦国に要求しているようである。〉


という報告のあとで、遂にワルド王国に魔王よりの書簡が届いたのでこの会議が開かれているとの事だった。


魔王様からのお手紙には、


『先の魔王の政策により北の地で300年罰を受ました。

どうか私達魔族が〈魔の森〉へ戻る事を許して欲しい…

愚かな王の巻き添えで新たに生まれた世代がひもじい思いをするのは不憫でならないのでどうか、どうかご理解下さい。』


と書いてあったそうだ。


『なるほど、あの森が絡んでいたからか…だから俺が召集されたのか…』


という理由は解ったが、王様達が何をそんなに難しい顔をしているのか解らない…


やれ、「魔王軍の罠だ」とか、

やれ、「魔族の話など聞く耳を持てるか!」とか

やれ、「先に攻め込むべきだ!!」などとピーチクパーチクさえずっているが、


『こいつら丸ごとアホなのかしら…』


と思ってしまう。


相手と向き合って話してもないのに、前科があるからと魔族が…魔王軍が…と…


『聞いていてだんだんイライラしてきた…』


俺は会議の席でかなり我慢して黙っていたが皇帝陛下の、


「魔の森の実質的な領主は、如何に考える?」


と聞かれた時にはイライラがマックスになっていた。


俺は、


「如何も何も、お手紙一枚でする会議ですか?

相手の情報も無いまま、〈昔は、あぁだから〉〈魔族は、こうだから〉と…

誰か、食糧がなくて〈ひもじい〉って言ってるのに、食糧でも持って外交に赴かないのか?」


と言うと、各国の王様は、目を背ける者や、俺を睨む者、うん、うんと頷く者とまちまちだった。


どこぞの脳ミソ少なそうな王様が、


「お主の様な小僧に、魔族の怖さは解らないだろう!如何に残忍な行いをしたか!!」


と怒鳴るが、俺は、怒りを堪えながら、


「どこの王様か存じあげませんが、300年前でしょ?戦争したの…

代替わりもして直接ナニかされた訳でも無いのに、言い伝えや過去の資料で、〈悪〉と決めつけるのがおかしいと言っている!

そんな事いったら、ここに並ぶワルド国王はどう説明する?!実際に、ついこの間戦争を仕掛けてきた張本人だろ?」


と聞くと脳ミソ少な目王が、


「それは、魔王軍の進行と、食糧不足から、やむにやまれぬ事情から仕方なく…

それに、今は敗戦国としてフェルドの属国となったので…」


と言い返そうとするが、結局、口ごもっている。


皇帝陛下は発言もせずに傍観を決め込んでいる…


『てめぇが、ちゃんと考えて仕切れや!!』


と更にイラッとした俺は、もうキレはじめていた。


「同じかも知れないだろ、誰か魔族の現状を見に行ったのか?

戦争を吹っ掛けて来てない魔王軍を魔族だからと…

あ~、ワルド国王様!即刻帝国から離脱した方が良い!!

このままではリード王子の代に、〈以前攻めて来たから〉と迫害を受けますよ!」


と、怒る俺に脳ミソ小さじ一杯王が、


「そんな事はない!ワルド王国は人の国…話せば解るし、共に歩めるが魔族は…」


と言いかけたので、俺は、


「違わない!!魔族といえど話し合えるし人間だからとて誰かさんみたいに信用出来ない奴は信用出来ない!ねぇ、皇帝陛下!!」


と怒鳴ると、


『えっ、余!?』


みたいな反応してるがオメェしか居ねぇよ!!


続けて俺は、


「俺は、喋る魔物も配下にしています。

それに拠点の土地では現在里を追われたオーガ達と仲良く暮らしています。

喋るオーガは魔族種らしいですよ。

皆さんがビビり散らかしてるのなら!俺が手土産持って魔王様にご挨拶してますよ!!

それで、信用出来る様なら俺は、魔王側に付いて魔の森を開拓して食糧を生産出来る様にしますがいいですね!?」


と言って…しまった…そうキレて言っちゃったのだ。


皇帝陛下は、


「アルトワ王よ、ポルタの言うオーガと一緒とは本当か?」


と、隣のお爺ちゃん王に聞いている。


『はじめまして、アルトワ国王様…国内で自由にさせてもらってます…』


とお爺ちゃんの王様に心の中だけで挨拶をしたがアルトワ王は、


「いや… 調査員からの秋の報告では無かったが…」


と焦っている。


しかし、騎士団の一人が伝言を伝えにきたモルドレットさんからの報告を聞いていたのか、皇帝陛下に耳打ちをすると皇帝陛下は呆れかえり、


「ポルタよ、お主本当にオーガと暮らして居るのだな…」


と呟くと、辺りの王様達が静まりかえる…


するとフェルド国王が、


「皇帝陛下、以前の報告でも申しましたがこの度のワルド王国との戦では、ポルタ殿の従魔の方々に力を貸して頂きました。

そして、我が国の宰相がポルタ殿の喋る従魔を鑑定した結果、魔物鑑定ではなく人物鑑定でのみ鑑定できる従魔がおり〈魔族〉との鑑定結果が出ていたと…報告書に書きましたが…

つまり、既に我々は〈魔族〉と手を取り合えるという事実を目の当たりにしているという事になり、私も彼の意見に賛成です。」


と言ってくれた。


何故か皇帝陛下は『えっ、マジ?』みたいな顔をしていたが…


アイツ、報告書を読んでないかも…


あと、アリスって魔族さんなんだな…知らなんだ…まぁ、だから何が変わる訳でもないし、虫の枠は外れてないようで俺の仲間のままだからね…


しかし…どうしよう…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る