第102話 馴染むオーガさん達との冬
冬本番の雪がチラチラと降る昼下がり、母屋では、ノーラ母さんとオーガのおばちゃん〈トマリ〉さんとマリーが育児トークを楽しみながら縫い物をしている。
いくら、体が頑丈なオーガと云えど真冬にパンイチとかは見てるこちらが寒いということで沢山買ってきた布を使いフード付きマントをはじめシャツやズボンを作ってもらって渡している。
鬼娘のルルさんは、けしからん革のヘソだしタンクトップから、農家風の動けるズボンとシャツスタイルでライラさんやシェラの牧場や鳥小屋の手伝いをして、バイト代として卵やミルクをもらって里に届けている。
誰の趣味かは知らないが、ザ・赤鬼の〈ドテ〉は、素肌に短パン吊りズボンの何とも言えないスタイルで牧場の手伝いをしている…
『シャツは嫌いなのだろうか…』
と、思いながら眺めているのだが、何故かドテチンは馬に大人気で、馬達にスリスリされながらライラさんとシェラのテイムしているトラベルホースの世話を頑張って、お駄賃にコルトさんの焼き菓子工房のクッキーの訳ありのヤツを嬉しそうに貰って帰っている。
ゴルグさんは裏山奥のパトロールと狩りをしていて新たに温泉を見つけたらしく、
「大型の仲間も入れる温泉を作りたい」
と相談されて、大工のネルソンさんとアンリ一族とミノムシ魔物の土木チームと山の裏側に露天温泉を作りに行っている。
アンリ達の接着スキルは土や石だけではなく、木と木も同じ素材をくっつける効果なので大工仕事に持ってこいだし、ゴルグさんに俺の魔鉱鉄の斧を貸してあげているので、草木特効の〈大木斬〉が付与師のペアさんにより付与されているので魔力を流すのみで発動して伐採と製材が楽に出来る。
あと、オーガ族の長だけあり元の筋力も違うためか、大概の木は一撃で斬り倒されていた。
大工のネルソンさんの提案で、
「強風とか心配だし、もう、テントをやめて家を建てたら?」
となり、温泉が出来たら山頂の池付近をアンリ達が整地して〈オーガ村〉を作る計画になった。
ゴルグさんがサクサク切れる木材に楽しくなっちゃって、アンリ達が引っこ抜いて乾かしていた木材を次々に板材にしてくれたので、新たに購入した草原地帯の牧場の柵も築城蟻達が穴を掘り丸太を刺して接着で板材をはり作ってくれているので工事がはかどりまくっている。
そして、予想外だったのが裏山に鉄鉱石が取れるポイントがあり、オーガの鍛治師の〈ジャング〉さんが鉄を石釜戸で精錬して、絵に書いて説明すれば大概の物は作ってくれる様になったことは拠点の開発に大きなプラスとなってくれた。
ジャングさんは、
「金棒などの武器しか作ったことがないが、建物の部品は複雑だが面白い!」
と、拠点の鍛治師として頑張ってくれている。
『なんとも良い人材が引っ越して来てくれたものだ…』
はじめは少し『馴染めるかな?』などと心配していたが、オーガの皆は各自興味の有る部門で力を発揮してくれて拠点の人材が厚くなったので俺は大変助かっている。
蜂蜜酒工房の力仕事や農業に興味のある者もいて、農具をジャングさんにおねだりして山のオーガ村近くで畑を始める者もいる。
ゴルグさんに、
「商会に入って働いてくれたらお金を払う」
と提案したら、
「土地を借りているし食材や知識をくれるのでこのままが良い」
とのことで、お言葉に甘えて製材業の対価として蜂蜜酒を渡すと、
「オレは、コレの方が嬉しい!」
と喜んでいた。
オーガさんのお賃金は現物支給と決まったがいくら冬とは言え、いつまでも皆とキャッキャと暮らしていてはダメだ…
ある意味、正しい冒険者の姿かもしれないが、夢の狩人パイセン路線は老後にとっておきたい。
『さて、外は寒いが明日からまた冒険者に戻るか…』
と俺は決意して、従魔厩舎にまわり、
『明日から冒険者稼業に出れるか?』
と、皆の様子を見にいくと、ミヤ子やマサヒロは少し寒そうにしているがガタ郎やコブンは案外大丈夫そうだし、クマ五郎とクマ美とセミ千代は、寒さ対策か固まって卵を温めている…
『えぇぇぇぇぇ!!卵!!?』
と驚きながら、
「クマ五郎、クマ五郎!卵、タマゴ!!」
と、バスケットボールサイズの卵を指差す俺に、
クマ五郎は、ノソっと起き上がり、
「クマ美ちゃんとぼくのタマゴなんだなぁ」
と説明してくれたが…
「えっ、クマ…タマゴ?クマ五郎とクマ美が大人の階段を…どこの預かり屋に預けられた?!」
などと取り乱したが、よくよく考えれば二人ともパートナーを探していたから…当然か…
セミ千代までタマゴにしがみついて、
〈お姉ちゃんになるんだ~〉
と楽しみにしている…
『これは暫くクマ美はお休みだな…
しかし、虫とクマの融合体のクマ五郎とクマ美はタマゴで増えるんだね…』
と、タマゴを眺めているとノーラ母さんが、
「ポルタく~ん、お客様よ~!」
と呼んでいる…
俺は、
『こんな冬場にお客さん?』
と思いながらも、
「はぁ~い!」
と返事をして母屋の玄関にまわると、そこには馬で走って来たのか、白い息をモウモウと吐き出しフウフウと息を切らしている馬と、肩口に雪を乗せた騎士が立っていた。
騎士のお兄さんは鞄から巻き紙を出して俺に広げて見せながら、
「皇帝陛下からのお言葉であります。
ポルタよ、すぐ来い!!以上です。」
と、たった一行の手紙の内容を読み上げてくれたのだった。
俺はそれを聞きながら、
『いや、皇帝陛下も、良くもまぁここが分かったな…』
と、感心するやら、驚くやら…
しかし、急なお呼びとは…カーベイル様のお灸が効いて、俺に愚痴の1つも言いたくなったのだろうか!?…
『クックック、行ってやろうじゃないか…』
俺が、年上好みと在らぬ噂をばらまいたツケを払って貰う時が来たのかもしれないな…皇帝陛下よ!
教えてやる。
『俺は、法と常識の範囲ならば、上も下も真ん中もストライクだ!!』
と…
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