第101話 第1回お仕置きカサカサ祭り
村から離れた森の中で、目の前に並ぶ闇の一族達…
〈お呼びにより参上いたしました〉
と、頭を下げる黒や茶色の集団…最悪な気分だが、お願いするのはこちらの方、礼は尽くさねば…
しかし、既に〈ブレイブハート〉を漏らしまくって今回に至っては何かしらの液体も漏らしそうだ…
俺は、アイテムボックスから食糧を出して、各種族の前にうず高く積み上げながら、
「え~、皆様には今回、正義の使者として働いて頂きたい。
悪い事をして反省しないヤツがこの村に三人居ます。
顔と家はこちらのガタ郎君から聞いて下さい。
そして、任務ですがその三名が寝静まったあとで、家に忍び込み手足を押さえて動けなくした上で泣きわめこうが何をしようが部屋から体の上から構わず走り回って頂きます。
3日連続でカサカサ祭りを開催した後は数日空けて安心したところで再度祭りを開催して下さい。
相手が心から詫びた場合は祭りはその時点で終了とし、もしも反省しない場合は定期的な祭りを月をまたごうが、年をまたごうが開催を依頼します。
なお、祭りの開催時間等については各種族のリーダーを祭り実行委員会に任命し任せます」
というと、
〈王よ、お任せ下さいませ我々、森コックローチの一族の名にかけまして〉
とデカいゴキブリが答え、
〈我々チャバネ一族も同じく、〉
〈我ら黒コックローチも、やってやります!〉
〈我らワモンコックローチ全員の命、陛下の為に!!〉
と…
『…何種類いるんだよぉぉぉぉぉ?!もう助けて…』
と、思いながらも数居る一族ごとに挨拶をされて、もう、やけくそで俺が、
「では、皆様、ご安全にっ!!」
と、叫ぶと、
〈ご安全に!〉
と実行委員全員が返してくれて祭り決起集会が終了した。
アルバイト代の食糧を持ち帰る闇の一族達を見送り、俺はクレストの街へと帰った。
依頼達成報告を冒険者ギルドで済ませて、布やライフポーションと麻痺消しや毒消しなど回復アイテムなど、オーガさん達が生産出来ないモノや苦手な回復属性魔法の代わりの品を購入して拠点でゴルグさん率いるオーガさん御一行を待った。
里でみんなと別れてから一週間後に荷物を担いだゴルグさん達が到着し、拠点の皆と挨拶を済ませる。
既に俺から聞いて居たのもあるが、拠点の皆は驚くこともなく喜んで彼らを迎えてくれた。
長旅を労い一緒に温泉につかり蜂蜜酒で乾杯をしようと宴を開いたのだが、子供はレモン漬けのハチミツジュースだけど…ドテチンはどっちだ?
一応蜂蜜酒とハチミツジュース両方差し出して、
「はい、ドテ君、大人はお酒で、子供はジュースね。」
と言ったら、ジュースを手に取るドテチン…
『子供だったんだ…』
と驚く出来事はあったものの、それから数日で手際良く裏山に建てられるテントの数々…
とりあえずマリー達の居住地区以外で裏山の奥側ならば木々の伐採も狩りも自由とした。
シェラがテイムしていた跳ね鹿のピョンちゃんやアタックボアのブーちゃんをドテチンが〈美味しそう〉な目で見つめていた為に、ドテチンのみシェラに距離を置かれたが、ルルさんをはじめ、三メートル近いオーガさんも、話が出来る上位種のオーガ族のオバサンなどノーラさんやウチの子供組とも打ち解けている。
『大丈夫そうだね…』
と、いうことで祭りの結果を聞きにまずクレストの冒険者ギルドに行くと窓口の職員さんに手紙と、指名依頼が有ると言われた。
手紙は例の村の村長からで、
『土地神さまの罰を受けた三人が、スライムの素材を集めて鍋で煮込み、家の隙間という隙間を塞ぎ、家から出て来なくなりました。
少し落ち着いたと思った昨日、夜中に発狂しだし、泣きながら詫びております。
土地神様の怒りを静める方法を探していただけないでしょうか?』
と…
窓口のギルド職員のお兄さんが、
「変な依頼内容ですね。
何かの呪いなら教会に頼めば良いのにね…」
と心配してくれたので、
「俺、クリアも使えますから。」
と答えて再び村に向かったのだった。
村長に案内されて、村の集会所で寝泊まりしている例の三人に逢うと、
うわ言の様に、「カサカサが…」「黒いのが…」と言いながら部屋の隅で震えている。
『自宅自体が怖いようだな…』
と、少し哀れに思っていると、影の中から、
〈自業自得とは言え、哀れでやんす〉
とガタ郎がいうが、イタズラっ子のガタ郎が俺の影からチャポンと出て来て、三人の前をカサカサカサっと走る。
すると三人は、
「いゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
とホラー映画の女子高生みたいな悲鳴を上げる…
影に戻ったガタ郎が、
〈末期症状でやんすね。〉
と呆れているが、
『いや、ガタ郎さん…』
と、ウチのイタズラっ子がすみません…みたいな申し訳ない気分になる。
村長も、うんざりしながら三人を見つめて、
「お前らが、鬼娘を卑怯な手口でもてあそぼうとしたからオーガ達とイザコザになって、呆れて他の地に出て行ったのだ…
それを詫びもしないお前らに、土地神様がお怒りになっておるのじゃよ!」
と叱る。
三人は、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
と壊れた様に繰り返している。
村長は、
「大変身勝手な願いだが、何とか土地神様の怒りを静める方法を探してくださらぬか…
この様な馬鹿者だが、村には貴重な若者だ…このままでは不憫でならない…」
と、頭をさげた。
俺は、旧オーガの里に向かい、城蟻のアリスを召喚した。
再会に喜ぶアリスに、
「ここに石碑って作れる?」
と聞くとアリスは
「私一人でも石碑ぐらい作れますわ。
娘達が居れば巨大な陛下の石像でも作れますわよ」
と言って近くの石を運び接着のスキルでモニュメントを作り始める。
ガタ郎には祭り実行委員会に
「年に一度捧げ物が並ぶから分けてね…祭りは終了でお願いします」
と伝言を頼んだ。
アリスが何故かハート型のモニュメントを作ったが…
『まぁ、良いか…』
と、アリスを送喚して村から村長を連れてきて、
「オーガ達が祀ってくれていた土地神様の石碑です。(嘘)
年に一度、秋の実りをお供えして下さい。
それと、あの三人には真面目に頑張りお供えをしている限りは土地神様の使いは遊びに来ないが、また悪さをしたり土地神様の使いを苛めたら…」
と脅かしておいて下さいと伝えておいた。
村長はモニュメントに手を合わせ、
「今回は残り少ない保存食でお許し下さい。
明日にでもあの馬鹿者達に運ばせて謝らせます。」
と祈るといつの間にやら村長を取り囲む闇の一族のリーダー達…俺にとっても心臓に悪い演出だ…
すると闇の一族は、
〈お疲れ様でしたぁ〉
と方々に帰っていき、第1回お仕置きカサカサ祭りは閉会したのだった。
その後、闇の一族を神の使いとして崇める村が誕生したのだが…別に良いよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます