第100話 両者の言い分と祭りの予感


俺は今回は可能な限り戦わないと決めて従魔達を拠点に返している。


二人のオーガ族に案内されて遊牧民のテントの様な住居に通されると、「ゲホゲホっ」と咳き込み横になる厳ついオッサンがいる。


鬼娘が


「父は、病に伏せっている用が有るなら手短に…」


というと、


厳ついオッサンは、


「すまんな客人、風邪などひいたことが無いのだが…どうも年らしい…」


と起き上がろうとするのを俺は、


「オーガの里長よ、どうかそのまま…」


と言って、家の中にクリーンをかけて、本人にはクリアをかけた。


里長は、


「なんと、状態回復魔法か!?

有難い、我々オーガ族は回復属性の魔法が使えないのでな…」


と言いながら起き上がった。


俺は、


「クリアの魔法一発で治ったのならば簡単な病気だったようで良かったです」


と伝えると、


「はじめて寝込んだので、もうダメかと思ったが、嘘のように楽になった」


と笑うパンイチの里長…


『いや、雪は未だ降ってないとはいえ、冬場にパンイチの姿なら風邪をひいても仕方ないと思う…』


と少し呆れている俺だが、鬼娘も、


「父上、良かった。」


と里長に抱きついている。


『まぁ、鬼の撹乱というヤツかな?

普段の里長からは考えられない姿だったのだろう』


と思い、安心して抱き合う親子を入り口のザ・赤鬼もホッとしている様子で眺めている。


里長は、


「話の前に、全快祝いに酒でも飲むか!」


という流れになってしまい、


「客人もどうぞ」


と誘われた。


ますます、ギルドの依頼を受けて来たと言い難い空気だ…

山葡萄のワインにアタックボアの串焼きでもてなされ、里長からオーガについて教えてもらった。


オーガは基本、ザ・赤鬼君みたいな感じに「ウガウガ」言っているヤツなのだが、進化して上位種になれば人語を理解し魔法が使えたりする魔族の部類に入るらしい。


因みにゴブリンキングも〈魔族種〉の魔物らしいが、里長の〈ゴルグ〉さんに言わせれば、


「ゲスが、知恵をつけたとてゲスのままだ!

あんなのが居るから〈魔族〉が見下される…」


と言っていた。


魔族にも色々いるらしく、魔物から進化した者と上位の悪魔と人間の末裔等…人間で言うと、前者が平民で後者が貴族的な存在らしく、魔王様の配下になれば、力が与えられて一般論な魔物も進化して魔族種に進化する力があるそうだ。


オーガ族は前の魔王様の


「人類を滅ぼして、魔族の世界にする!」


って政策に反対して隠れ住んでいたが、この三百年人間に迫害され続けて各地を転々としているのだそうだ…

そして、近々冒険者が来ることも予感していたらしい。


少し前に、鬼娘の〈ルル〉ちゃんと子分のザ・赤鬼の〈ドテ〉くん…ドテチン? が狩りをしていた時に、


仕留めた跳ね鹿を巡って、村の若者が、


「俺の獲物だ!」


と言い掛かりをつけてきて、ドテチンが仕方なく鹿を渡して衝突を避けようとしたのだが、


「許して欲しければ、ルルの体で詫びろ…」


と脅してきたらしい…


『最低だな…村の若者…ドテチンのドテチンでわからせてやれば良かったのに…そんなヤツ…

狩り場を巡ってのイザコザでもないし…』


と思うが、流石にそんな提案を飲めないドテチンが怒って威嚇したら逃げて行ったらしいが、これまでの経験から立ち退きの依頼を受けた冒険者がくる事をこの出来事から里長は予感していたそうだ。


『これでは、彼らは遊牧民ではなくて難民だ…ならば、孤児の俺の親戚も同然!』


と感じた俺は、


村から討伐依頼が出ている事や、拠点の山の土地が空いている事等を全て説明して、


「一緒に拠点で暮らそう」


と誘うと里長のゴルグさんは暫く考えたあと、


「差し出すモノなど何も有りませんが…土地をお借りしても良いでしょうか?」


と、聞いてきたので、


「俺が、困った時は手を貸して欲しいし、楽しい事をする時は一緒に楽しみたいくらいかな?

串焼きも酒も美味しかったからまたゴルグさん達と飲みたい」


と、答えた。


ゴルグさんは、


「世話なる領主殿」


と、頭をさげたのだが俺は、


「別にウチの土地だが、領地ではないからポルタで頼むよ、ゴルグさん」


というと、ゴルグさんは、


「人に親切にされたのは生まれて初めてだ」


と、喜んでいた。


そして、俺は、ガタ郎とコブンを召喚して、


二つの作戦を実行する。


1つは、コブンに現在地と拠点の場所説明して、オーガ族の誘導を頼んで引っ越しの引率をして貰うこと、そして、もう1つは、


『糞な村人に天誅を加えることだ!!』


ガタ郎にメンバーを集めて貰らいつつダッシュで村に帰り村長を呼び出す。


「村長!依頼内容に嘘が有ったぞ!!

狩り場を荒らして村人に暴力を振るおうとしたのではなくて、オーガ達の狩った獲物を俺達の獲物だ!と、言い掛かりをつけて獲物を巻き上げるついでに、〈オーガの娘の体で詫びろ〉と言い寄ったらしいじゃねーか?!おめぇの所の若者とやらはよぉ!

良いからここに連れてこい!!」


と、怒鳴った。


村長は慌てて三人の馬鹿者を連れてきたのだが、若者達は、


「俺らは被害者だ」


とか


「あのオーガ娘がバラしたのか?」


とか


「未遂だから悪くない」


とか馬鹿な理論を並べている…

とりあえず、嘘の依頼をしたヤツにはペナルティだ。


三人は有罪が確定したので帰ってもらい、心の中でガタ郎に家と顔を覚えて実行委員会に報告を頼むと、


〈了解でやんす〉


と影を渡って後を追っていくガタ郎を見送り、



俺は村長にペナルティの相談をする。


「嘘の依頼と冒険者ギルド報告すれば、今後この村からの冒険者ギルドへの依頼は困難になる…

あの三人のしたことは許されないしオーガ達は呆れて出ていく。

そして、この土地のヌシがこの事を許していないのであの三人は罰が与えられる。

心から謝らない限り許されない罰が…

そこで、村長今回だけ偽りの依頼を黙ってやる代わりに、あの三人が改心したかどうかの手紙を後日冒険者ギルドに渡してくれる?」


と聞けば、二つ返事で了解してくれた。


さぁ、祭りの開催だ!!

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