第96話 戦後処理と面会


「は~…」


一方的な戦は終わり我が軍は怪我人と怪我虫が出ただけだがワルド軍は半数が倒され半数が捕虜になっている。


現在いくつもの穴をピットホールで空けて、ドノバン様達人物鑑定スキル持ちさん達が、


「兵士、兵士、貴族、兵士」


と鑑定して捕虜を割り振っている。


「はい、兵士は右の穴、貴族は左!

アイテムボックス持ちは中身を提出してから奥の穴!!」


と何時間もかけて罠から助けパンイチひんむいて鑑定してから穴に放り込む…


ドノバン様も死んだ目をしながら、


「兵士、兵士、アイテムボックス、貴族…」


と割り振りつづけて、


ザックさんのみ、


「パンイチ祭り再びだな!!」


と喜んでいる。


それからも2000人近くの捕虜の仕分け作業は続き、


ドノバン様は休みなしで、


「はいはい、女性兵士は左奥だよ穴に入る時には食事出すから。

はい次、兵士、兵士、近衛騎士、王子…王子?!!」


と、騒ぎだした。


もうワルド軍はヨルドの町などあっという間に落としてフェルド軍を城から引っ張りだし銀狼騎士団が裏から城を襲い、完全勝利して第一王子に手柄を立てさせる予定だったようだ。


『王子様が罠で死んでなくて良かった…』


と安堵するが、もう、王子が居るなら全ての話が変わる…


フェルド王に連絡をドノバン様が入れて数日は返事待ちとなる…


することもないし帰ってしまうには関わり過ぎた俺は、手持ち無沙汰で特別の牢獄に入っている王子に話をしに行った。


俺が、


「はじめまして王子」


と言うと王子は、


「私の処刑が決まったのか?」


と聞いてくる。


俺は、


「いえいえ、俺はただの冒険者ですよ。

王子様とお話したくて、暇潰し…というか?…何で攻めて来たの?」


というと王子様は、


「ただの冒険者ね…ムカデの大将が言っていたよ、

我らが王がこの戦に参加を決めた時点で、そちらに勝ちの目はなくなった…とね…

王子ぐらいでは王には勝てなかったかね…虫達の王様…」


と、寂しそうに笑う。


俺は、


「ワルド王国だって、先の戦争で兵士を失っているのになんで直ぐに攻めてきたの?

確かにフェルド王国もガタガタだったが、無理に攻めて長引いたら勝ったとしてもワルドにもダメージがあるだろうに…」


と質問すると王子様は、


「後がなかったのだよ…ワルドには…」


とポツリポツリとワルド王国の厳しい現状を話し始めた…


ワルド王国の更に北の地に〈魔族〉の領土があり、

三百年前に勇者一向に極北の地に追いやられた魔族が、暖かく実り有る大地を求めて南下をしているらしい…


『魔族って居たんだね…まぁ、勇者が居たらしいから、魔族が居てもおかしくないが…』


と思っていると何だか面倒臭いワードが次から次へと王子からでてくる。


「魔族の力が強くなり、方々の国がジワジワと領土をもぎ取られているらしく、

皆、口を揃えて〈魔王〉が復活したのだと…

ワルドは退路を求めて南を目指しフェルド王国を手に入れて人と食糧をワルドへと送らねば…

北の大地のワルドでは…」


と…項垂れる。


しかし、俺は呆れて、


「阿保だな…ワルド王国は…」


と言うと王子は、


「なぜです!」


と少し怒るが俺は続けて、


「魔族で困ってるならそう言って助けを頼めば、例え帝国の仲間でなくても助けてくれる国も有ったろうに…

仮にフェルドと戦ってフラフラになったワルド王国が、攻め滅ぼされたフェルドを統合しても、直ぐに食糧を生産したり兵士を用意できる訳ないでしょ?

農家も農夫にもダメージを与えて、騎士団が殺し合って…さぁ、魔族と戦うぞ!とはならないでしょ?!」


と言ってやったら王子もはじめは、


「ぐぬぬぬ!」


と、なっていたが次第に力が抜けて、最後にはガックリと肩を落としていた。


王子は、


「では、我々はどうすれば…」


と聞くが、


「知らん知らん、自分で考えろ!」


と俺は冷たく言い放つ。


ここで俺の意見を採用して動いても「言われたから」になる。


自分で考えるしかない。


しかし王子は、


「どうか、虫の王よお知恵を…」


と頭を下げる。


俺は、やれやれとため息を吐きながら、


「王子はワルド王国の皆をどうしたいの?…魔族達をどうしたいの?」


と意見をまとめ易いようにヒントをだす。


王子は、


「ワルドの国には魔族と交流のある村や、魔族にルーツを持つ人間も少数おります。

魔族が全て敵ではないのは理解しておりますが、魔王が復活し魔王軍となれば話しは変わり、敵となり領土を守る為に戦わなければなりません…」


と、考えながら話す王子に俺は、


「じゃあ、ワルド王国に本当に必要なのは?

嫌々従う兵隊?…それとも、仲間を助ける為に鼻息荒く馳せ参じる友達?」


と聞いてやった。


すると王子は、


「私の従者を一名解き放っていただけませんか?!本国に手紙を出しましす。

フェルド王国に謝罪を先ずしなければワルド王国の民に未来はない…どうか、どうか、フェルド王国側にお口添えをお願い致します。

虫の王よ!!」


と、土下座をする王子に俺は、


「伝えてはみるけど、あとは自分で頑張りな、あと、ポルタだから虫の王って呼ばないでね!」


と言って牢屋をあとにする。


背中で、


「感謝いたしますポルタ殿!私は〈リード〉です。!!」


と、王子の自己紹介を聞きながら…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る