第92話 パンイチ祭りの後夜祭


パンイチ祭りを回収にまた森に帰ってきた。


ミヤ子はきっちりパンイチ達を見張ってくれたらしく全員穴の中で大人しくしていたようである。


うるさいのはフェルド王国の騎士団長の暑苦しいオッサン〈ザック〉さんだけだ、


「がははははっ!ヒィ、腹痛い、腹痛い!!

おい、皆見てやれ戦場の狼と言われた銀狼騎士団員が丸ごとパンイチで穴の中だぞ!

むせる戦場を駆け回る地獄の狼達が…ププッ…パンイチで、ギュウギュウ詰めって…

あ~、絵師のオヤジを連れてくれば良かった。

おい、だれか絵の上手いヤツこの看板ごと描いて後で絵師のオヤジに渡しておけ」


と、ご機嫌である。


『むせる戦場って、どこのボトムズ乗りだよ…』


縄ばしごを下ろして、一人ずつ檻馬車に詰め込み、全員穴から出したので、用済みになった穴を少しでも埋めようと、端を崩す為にスコップをアイテムボックスから出すとザックさんが、


「ポルタ殿、待たれよ。

穴はこちらで埋めるゆえそのままで頼みます…

ぷフッ、後日、絵師のオヤジを連れてきてスケッチさせますゆえ…」


と、言っている。


俺が、


「パンツ祭りを絵画にしてどうするんです?」


と呆れて聞くと、


「コイツらには我が騎士団は散々裏をかかれて痛い目に逢わされましたので、王の許しが出れば騎士団の礼拝堂に飾り、倒された仲間のあの世での酒の肴にしてもらう予定だ。

ぷっ、そうだ〈パンツ祭り〉という題名にしよう…」


と、満足そうにフェルドナの街に戻ったのだった。


結局夜に街に着いたので、高そうな宿に泊めてもらい、翌日、ザックさんと部下の方々のが宿に迎えにきて俺は王様に謁見となった。


『今度は覆面のヤツが斬りかかって来てもシバかずに逃げよう…』


と心に誓いながらお城の廊下を進み謁見の間に通されると、王様とフェルド王国の貴族達が総立ちで俺を迎えてくれた。


王様は、


「待っておったぞ、ポルタ殿。

ワシはフェルド国王、カーベイル・イル・ラ・フェルドである。

報告を聞いたがそなたの様な若い冒険者が、あの銀狼騎士団を全員無傷で捕縛するとは何の冗談かと…

いま、こうやって我が目で見ても信じられないが、確かに銀狼の一団は牢に入っておった…ワシは昨夜から驚かされ通しだ…

しかし、そなたが捕縛した銀狼達はワルド王からの密命で潜伏し2ヶ月後にワルド王国は復興もまだな〈ヨルド〉の町を再び襲い、王国軍が防衛に向かった隙に城に攻め入り好き勝手する予定だったらしい…我が国を救ってくれてた事心より感謝する。」


と王様が頭を下げたとたん、ザッという音と共に貴族の方々が皆頭を下げている。


俺は慌てて、


「王様、お顔をお上げください。

私は襲われたので返り討ちにしたまでです」


と答えたのだった。


そのあと色々と話を聞くと今回の戦はワルド王国が宣戦布告もなく魔の森を越えていきなり攻めてきたそうで、一度はヨルドの町を占拠されたのを、フェルド王国の全力をあげて押し返す事ができたのだが多くの者が命を失ったそうだ…


貴族の当主や長男に次男…酷い貴族はその全てを失い、今この国はガタガタらしい。


そんな中で、潜伏していた敵国の戦闘狂のエリート集団を一網打尽にして敵の進軍予定も知れたのだ。


「感謝してもしきれない…」


と話してくれた。


そして俺がこの国に来た理由をたずねて来たので、正直に、


「食糧難と聞いて食糧を運んで来たのと、王国軍が大変な状態なので魔物の間引きが間に合わないだろうから出稼ぎに来ました」


と伝えた。


すると、


「有難い事に今年は魔物が何故か極端に少ないので、魔物討伐よりも出来れば早い目にヨルドの町に食糧を届け欲しい…」


と宰相さんにお願いされたのだった。


『魔物は少ないのか…遠征先ミスったかな?』


と少しガッカリした俺だったが、兎に角食糧を届けてからその後を考えようとしたら、お城で歓迎と労いのささやかなパーティーが開かれて出席することになった。


王都から食糧難の町に食糧を送っているので、城でも食糧は足りて無いらしい…

しかし、有るもので何とかパーティーを開いてくれた気持ちが嬉しい。


しかしこのパーティーで、ウチの商会のヘンリーさんの営業ネットワークがこの国まで来ている事と、帝都のマリアーナ姫とサムさんの結婚式のパーティーで皇帝陛下が面白可笑しく2人のキューピッドになった冒険者の話をしていたという情報を耳にした。


そんな事を知り色んな意味で驚いている俺にある貴族さんからは、


「蜂蜜の商会の会長様でしたか。

ヘンリーさんからは会長はお若い冒険者だと伺っておりましたが…これ程お若いとは…」


と言われたり王様からは、


「まさか、噂の冒険者に逢えるとは…姫にフラれたそうじゃの…よいよい…ポルタ殿はまだ若いゆえ…」


と、同情された。


『あの糞皇帝…酒の肴に面白可笑しく要らんところを粒立てて…次回帝都に行ったら本気でカサカサ祭りを開催してやろうか!?

コッチはもう、拠点の森に闇の一族が済んで居るんだ!

今更現地採用の非正規従魔に闇の一族を指名するなど、実際に見ない限りは怖くも何とも無くなったんだぞ!!〉


とプンスカ怒っていると王様やザック騎士団長が、


「どうした?」


と、聞いてきたので帝都での仕打ちを酒の肴として話すと王様は、


「けしからん!アイツは貴族学校の頃から悪ふざけが過ぎる!!

同級生のワシからビシッっと言ってやる。」


と言ってくれた。


こうしてパンイチ祭りの後夜祭的なパーティーが終わった…

しかし、お酒が飲める様になったが、龍鱗魔銀の守りの腕輪の効果で〈毒無効〉が発動して全く酔えなかった。


酔いたい夜だったのに…そんなスキル効果が発動していると気づいたのは翌朝だった。

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