第90話 遠征への旅立ち
社交のシーズンが終わり、春も終盤…
マイト君達プリンチームの店〈蜜壺屋〉は春先のオープンから大盛況で毎日オープンして昼には店じまいになってしまう。
ロックウェル伯爵のパーティーで振る舞われた客寄せプリンの効果は絶大で、パーティーに参加した貴族は勿論、その貴族が他のパーティーで食べた衝撃を自慢したりと…口コミが広がり現在の材料の生産力やプリン職人等の状況から、1日200個の限定商品で、1つ大銅貨7枚とお高い設定だが毎日どこかしらのお貴族様の家の方々が買いにきている。
『本当は一般の方々のにも食べて欲しいが…』
ポプラさんに相談したところ、彼女は既に色々考えていたようで、蜜壺屋の隣の紅茶専門店もウチのファミリー商会の傘下に入りたいとの相談が有ったらしく。
近々、紅茶を楽しめる甘味処としてリニューアルする予定らしい。
俺は
「紅茶の味を邪魔しない甘さひかえめのプリンを出した方が良いし、一回り小さくして安く出来るね。
壺で無くても型で蒸しても良いし…クマの顔のシルエットみたいに凹ませたお皿でプリンをつくって一人用の小さな蜂蜜壺からお好みで甘さを調節出来るプリンでもいいな…
もう、いっそ蜂蜜クッキーやパンケーキも…」
と、妄想を膨らませブツブツ言っていたらポプラさんにドナドナされてレシピと構想を説明することになった…実際に作らされ味見をしながら…
プリンを食べてからというものポプラさんは甘味系の新事業に熱心でかなりのやり手だ。
マスオさん状態からやっと脱却したパーシーさんだが、ファミリー商会の副会長と言うより再びポプラさんの旦那的なポジションに収まりつつある。
弟のヘンリーさんは他国の貴族にも顔が利くしポプラさんに限っては、ロックウェル伯爵婦人のローゼッタ様と、プリンを食べたい貴族のお茶会に呼ばれる度に客寄せプリンをローゼッタ様の手土産としてポプラさんが納品に向かい、ローゼッタ様から相手の貴族に紹介されるのでアルトワ王国内においては国王一家にまで顔が利く…益々影が薄くなるパーシーさんに俺が、
「愚痴なら聞きますよ、俺が成人したら一緒に酒でも飲みましょう」
と、誘うとパーシーさんは、
「ん、会長?…ポルタ会長はもう15歳で成人でしょ?」
と言われた…
『忘れてた…コッチは15歳で成人だ…』
と思いだしたのだが、ならばとパーシーさんとその夜に酒を酌み交わす事になり久しぶりの酒を飲んだが…酒より、胸焼けがするほどパーシーさんの切ない苦悩を聞かされた。
しかし、俺はそこで閃いたのだ!…と云うか、パーシーさんの話から逃げ出したくて、現実逃避してたら思いだした。
〈
蜂蜜1に水3を混ぜて暖かい所に置いて置けば出来るヤツだ。
蜂蜜は売るほどあるし、水も豊富にあるし、暖かい場所は温泉を使えば年中作れる!
という事で翌日、酒の抜けたパーシーさんと相談したらパーシーさんは
「
と、どこぞの海賊みたいなセリフで、やる気になっていた。
しかし、事業拡大に伴い商会の懐事情が心配になってきたので、アゼルとメリザを誘って冒険者稼業に戻ろうとしたのだが、ワイバーンの〈サーラ〉と〈ノリス〉が飛べる様にはなったが、まだ、長距離は飛べないからと断られた。
二人は近場で狩り生活をして、従魔召喚スキルを手に入れるのが目標らしい…
『多分直ぐだろうな…目標まで…』
と言うことで、俺一人で出稼ぎに行くことになったのだが、冒険者ギルドでエイムズさんに暫く出稼ぎに出ると言ったらエイムズさんは、
「前に言っていた、戦争してる北の王国だが、戦争は終わったらしいが兵士の数も減って魔物が倒せないし食糧も少ないらしいから、ポルタのアイテムボックスに穀物を詰めて運んでついでに危険度の高い魔物を倒して来たらどうだ?」
と言われたので、
今回の遠征は帝国の北の国〈フェルド王国〉にしたのだ。
久しぶりのソロ遠征だが従魔も沢山居るから大丈夫だろう…
俺はクレストの街で大量の食糧を買い込み北に向かい旅に出た。
思えば、北のフェルド王国の帝国に所属しない隣国との戦争に向かう奴隷兵士達を乗せた奴隷商人の馬車をゴブリンキングの一団が襲って以来、何かと俺に因縁がある国ではあるが一度も行った事がない。
普通ならば一ヶ月近くかかるらしいが、昼間はクマ美、夜間はクマ五郎と交代で見張りもガタ郎とミヤ子の交代制にして走り続けて半月もせずに、フェルド王国の南の入り口の町サテラに着いた。
比較的戦争のダメージも無く普通な雰囲気だが、冒険者ギルドで情報を聞くとフェルド王国の王都までは、まだ大丈夫だが国境に近い北の町ほど被害が深刻でいきなり隣国に攻め込まれ、フェルド王国軍が押し返して領土を守った形だが行きも帰りも戦場になった町や村は大変な状態らしい。
今回の旅の目的地はフェルド王国の北の国境の町を目指す事にした。
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