第88話 大忙しな冬の手仕事


蜘蛛退治も終わり、虫軍団からの貢ぎ物の蜘蛛達の魔石をアイテムボックスにしまう。


蜘蛛のその他の素材は軍団の皆さんで美味しく頂いたらしいので残ってはいない…


流石に街中や街道をゾロゾロと虫軍団を移動させる訳にも行かずに、カブ太の軍団達の道案内はコブンとマサヒロを召喚して方角などを説明して拠点までの引率を任せる事にした。


クマ五郎とクマ美には拠点への報告を頼み送喚し、マリー達に受け入れの準備をしてもらう事にした。


ガタ郎は俺の影に潜り、


〈旦那様、お疲れ様でやんした〉


と労ってくれた。


俺が、苦手な奴もまとめて森の住人にしたから気を遣っているらしい…


「ガタ郎もお疲れ」


とだけ 言ってシェラと歩いてクレストの街に向かう…ただ卵鳥20羽と跳ね鹿とアタックボアの大名行列を引き連れてである。


数時間かけて冒険者ギルドに着くと、既にヘロヘロでギルドに着いた三人の若い冒険者が、ギルマスのエイムズさんに報告しながら温かいスープをゆっくりとすすっている。


エイムズさんが俺達を見つけて、


「ポルタは、また事件に巻き込まれたのか?…1度教会で〈クリア〉でもかけてもらえ…」


と呆れている。


そして、ギルマスのダサマントは、


「シェラちゃん、大変な目にあったらしいけど大丈夫かい?」


と妹だけを心配するギルマスに俺は、


「妹との扱いの差が気になりますが、クリアは自前でかけてみたことが有りますが、この様です。」


と伝え、


「ついでに、シェラが従魔を手に入れたので登録を…」


とエイムズさんにいうと、シェラの後ろ一団を見たエイムズさんが、


「あんまり冒険者向きな従魔じゃないな…」


と呟いた後に、


「シェラちゃんは、あっちのお姉さんの窓口で登録しよっか?」


とやさしくシェラを案内し、俺には適当気味に、


「じゃあ、ポルタはあっちで、三人と一緒に報告と蜘蛛の素材があったら提出してくれ。」


と言われて報告を行った。


母蜘蛛の巨大魔石を出したら、ギルマスは、


「レイド対象の死神蜘蛛だ!」


と騒いでいたが、ついでだからと俺は、


「あぁ、子供は百以上居ましたよ。」


と報告するとエイムズさんは慌てだして、


「西の森周辺を立ち入り禁止にして、Bランク以上対象に調査依頼を早急に!

死神蜘蛛の巣立った個体がいる可能性大だ。」


とバタバタ忙しいそうだ。


残された三人と俺はそこで初めて、自己紹介をしあって身の上話をした。


前衛の男の子〈マイト〉くん

索敵担当の男の子〈ジル〉くん

後衛の魔法使いの女の子〈ナナリー〉ちゃん


三人ともに、アルトワ王国の別の町出身の孤児達で、年も近く、同じ境遇からパーティーを組んで居たらしい。


しかし、今回の事で冒険者の仕事が怖くなり、直ぐ復帰は無理な様子。


宿代も、要るし、戻る所もないらしい…


「もうついでだからウチ子になりなさい」


と誘った。


まだベッドを並べるスペースはあるし、


心の傷が癒えて冒険者に戻るのもよし、足を洗ったとしても〈ファミリー商会〉が受け皿になれる。


三人は少し遠慮がちに、


「お世話になっても構いませんか?」


と聞くので、


「心配するな、ウチは孤児ばかりだ。」


と言っておいた。



諸々予定を早める必要があるので魔石等を売り払おうと、買取カウンターにザラザラと子蜘蛛の魔石を提出していると、クソダサマントが、


「子蜘蛛もたおしたのかよ!先に言え!!」


と怒鳴られ追加で色々と聞かれたが、


「蜘蛛に家族を食べられた虫達がガタ郎達の助っ人になってくれました…」


みたいに諸々ボヤかして報告しておいた。


「魔石以外は彼方の取り分でして…」


と、の報告に糞ダサ糞マント糞オヤジはかなり怪しんでいたが、


「もうそれでいい…本部への報告が面倒臭いな…」


などとボヤいていたが、


「巣だった蜘蛛も少なそうだな…」


と少しホッとしていたので、本部への報告とやらは頑張って欲しい。


というイベントはあったが、魔石でお金が入り新たな住人となる三人の身の回りの物やベッドなどの寝具を購入し、

追加で大工道具や釘と大量の木材と、サスペンション無しの安い中古の荷馬車とトラベルホースも一頭購入した。


トラベルホースはシェラにテイムしてもらいシェラに


「トラベルホースも登録要るのかな?」


と聞くと、


「窓口のお姉さんが、〈家畜〉は登録不要だけど、一応〈ピョンちゃん〉と〈ブーちゃん〉だけ登録しときましょうか?って言われたから多分要らない。」


と、言っていた。


『まぁ、街をつれ歩く場合に必要な登録だからな…馬なんか良く見る魔物だし、クマ五郎とは扱いが違うか…』


と納得した俺は


荷馬車にシェラのお供達を詰め込み、〈パカポコちゃん〉と名付けられた馬に引かせ新規加入の男の子二人に任せ、


俺はクマ五郎を召喚してアイテムボックスからキャンピング場所を出して繋げ、シェラと三人組唯一の女性冒険者のナナリーちゃんを乗せて、二台の馬車はガダゴトと拠点に向かって出発した。



それからが大忙しだった。


まず、新人三名と鳥小屋を建てる。


築城蟻チームが基礎工事をしてくれて、マサヒロと合体して梯子や足場が無くても柱を建てたり屋根の工事が出来て工事ははかどりDIYと云えど、中々大きなの鳥小屋が完全し、


『コッコちゃん達も気に入ってくれたようだし、これで卵の生産の目処がついたな…』


と満足した俺だった。


それと、大工の親方達の頑張りで冬の間に温泉の建物とクマ五郎達の厩舎も建った。


完成祝いに、大工の皆さんも一緒に風呂に入り鍋を囲んで、最後に源泉の上に築城蟻と親方の共同作品の〈地獄蒸し〉で蒸した〈プリン〉を振る舞った。


ライラさん所のミルクと、ハニー達の蜂蜜、そしてシェラの所の卵を使い俺の指導の元新人三人が協力した力作、温泉蒸しプリンである。


バニラエッセンスは無いが、ハニー達の新鮮で芳醇な香りの蜂蜜のおかげで上出来な仕上がりだった。


大工の親方達も大満足で、


「次からは、何か建てるなら俺達を指名してくれ安くするぜ!」


と言って仕事を済ませてクレストの街に帰って行き、ポプラさんはこの雪の中、


「早く商業ギルドに行って、温泉蒸しプリンを登録しましょう。

何なら、クレストに小さな店も出しましょう!」


と、興奮している。


これは、春からも忙しくなりそうだ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る