第82話 装備の完成待ちと街ブラ


地竜の納入も済み、無事にポイントが貯まってBランク冒険者になれた…


『長かった…』


パンと干し肉一枚で飢えをしのぎ、野宿をしていた最底辺から、これで誰からも認められる一人前の冒険者としてのスタートラインに立てた。


地竜は肉以外も丸ごと売り払い、依頼達成報酬と皮等の買い取りで大金貨30枚近く手に入れた。


地竜もそうだが、ドラゴン系統の魔物は貴族のパーティー用の為に肉の納入もなかなかの報酬だったが、魔石や血、心臓などの臓器まで錬金術師や創薬ギルド等に高値で卸されるらしく両方で凄くお得な依頼だった。


先輩冒険者チームの夢の狩人の皆さんが冬場に仕事しなくても過ごせるのがわかる。


『まぁ、俺は家族の為に冬も働くけどね…』


地竜戦で装備が壊れたのをゴング爺さんに見せたら、


「あと一週間程度で新しいのが完成するから大人しくしとけ」


と言われたので今日はミルトの街をブラついている。


『冒険にも出ずにやることがあるのか?』


と思っていたが、観光やショッピング、それに教会でスキルチェックなど案外やることが盛りだくさんだった。


アゼルとメリザは飽きもせずにワイバーンの世話を頑張っているので俺は単独行動を楽しんでいる。


俺のレベルがドラゴンを倒した事もあり、レベル58にまで上がりテイマースキルもレベル4に上がって従魔の枠が20になっていた。


現在の従魔は9匹なので、あと11枠…急に増えたな…正規雇用枠が…

あまり嬉しくはないが、虫の王もレベル4に上がっておりレベル上位の魔物にもお願いが聞いて貰い易くなったようだ…っと言っても、レベル上位の虫には可能な限り出会いたくない気持ちもある。


だいぶ免疫がガタ郎達のおかげで付いたとはいえ、一気に『虫好き!』みたいにはならない…

ブレイブハートに平常心スキルと合わせて、徐々に見馴れてだいぶ我慢できる様になったぐらいだから…でもまだ足間接など可動する部位は…苦手かな…


教会で受けたスキル鑑定結果を眺め、そんな事を考えながらミルトの街を巡り、

あとは食糧の補充やガイナッツ王国は鍛治の国なので、鍋やフライパンをノーラ母さんやポプラさん達のお土産に買ったりとショッピングを楽しんで過ごした。



そして、全ての装備が出来上がったとゴング爺さんの工房から伝言が届きクマ美の引く馬車でワイバーンも連れてゴング爺さんの工房に向かった。


鎧を受けとるだけだが、宿屋にワイバーンを残すと、アイツらアゼルかメリザが近くに居ないとギャオギャオと騒ぎやがる…やはり魔物というのかみるみる育って今では犬ぐらいの大きさがあり、これでもまだまだ子供で甘えたい盛りなのだ。


『早めに拠点に帰らないと、馬車にワイバーンが入らなくなるよ…飛ぶのはまだまだ先だし連れてかえるのが難しくなってしまう…』


なとと心配しながらも到着した工房ではゴング爺さんがギンギンの目で待ち構えていて、


「ポルタよ、最高傑作が出来たぞ!」


と自慢してきた。


俺の装備は、


『龍鱗魔銀の鎧シリーズ』


という名前らしく、ミスリルにグリーンドラゴンの鱗の粉末を混ぜて鍛えあげた少し緑がかった鎧で、ドラゴン革と柔らかいドラゴン革を上手く使い分けて物凄く動き易く胸当て部分や肩当てなどもミスリルなのでとても軽い。

〈防御力上昇〉

〈魔法防御力上昇〉

〈耐久力〉

〈修繕〉

も付与されているので傷つき難く、少しの傷は魔力で直る優れものである。


グリーンドラゴンの鱗の効果で付与しなくても〈風属性耐性〉がある装備でミスリルの特性で魔力を流せば一定時間防御力が上がり魔法耐性も上がるという一級品で、

そして同じ素材と同じスキルの〈龍鱗魔銀の盾〉も作ってもらった。


同じ素材を使用した〈龍鱗魔銀の魔力の腕輪〉という名前の上質な宝珠を使用した大型外部魔力タンクをビューティーさんが作ってくれて、

〈魔法攻撃力上昇〉

〈魔法防御力上昇〉に加え、

〈魔力吸収〉という、攻撃を当てた敵から少し魔力を奪うスキルも付与された渾身の作らしい。


そしてその腕輪と対になる〈龍鱗魔銀の守りの腕輪〉という防御系の腕輪で、

〈即死無効〉

〈精神攻撃耐性 大〉

〈毒類無効〉

〈防御力上昇〉

がついた、頼もしい作品でビューティーさんが作ってペアさんが付与を盛りに盛ってくれた装飾品達を装備して、今身につけている腕輪はアゼルとメリザにお下がりとして渡した。



アゼルの装備は、


〈龍鱗魔銀の槍使いの鎧〉


という名前で、槍使いの為に盾が使えないので、籠手の装甲が厚めの鎧であり、スキル性能的には俺のと同じだが成長を見越して柔らかいドラゴン革などでかなり調整がきく設計だ。


そして、〈風牙の槍〉というグリーンドラゴンの牙とミスリルを混ぜた金属で作った槍がメインウェポンとなり、風魔法〈バースト〉の効果で突き刺した刃先から魔法が発動し内部にダメージを与える事ができる様になっている。


〈攻撃力上昇〉

〈貫通力上昇〉

〈耐久力〉

〈修繕〉

というスキルに加えてグリーンドラゴンの牙の効果で風属性の攻撃が上昇する効果がある為に風まほうのバーストとのスキルにの相性は抜群だそうだ。



メリザは、


〈龍鱗魔銀の胸当て〉と〈ドラゴン革の服〉

〈ドラゴン革のブーツ〉と〈ドラゴン革のフード付きマント〉という軽さを重視した動き易い装備であり、

ドラゴンの魔石を加工した染料でシックな黒に染めてある上品な見た目に、

〈防御力上昇〉

〈魔法防御力上昇〉

〈耐久力〉に加えて

〈移動速度上昇〉

など、ミスリルなどの金属があまり使われてない為に付与されるスキルの数は少なくなるが装備毎に考えられたて付与されたスキルで、動きすさを重視した装備である。


それに加えて、こっそりビューティーさんに依頼していた、〈守りの首飾り〉という金とミスリルの合金に大粒の宝石を使った、

〈防御力上昇〉

〈魔法防御力上昇〉

〈即死無効〉

〈毒耐性中〉

のお洒落な防御系の効果の首飾りも有るためにアゼルの鎧と防御力はあまり…いや、攻撃の種類によればむしろ高い可能性まである。


それと、メリザのメインウェポンはドラゴンの角とミスリルで作った〈風の杖〉という魔法の杖であり、


〈装束〉のスキルで魔法を1点に集める事のできるのが特徴で、

〈魔法攻撃力上昇〉

〈魔力吸収〉

も付与された魔杖である。


装備を身につけた俺達を見てゴング爺さんは、


「装備だけならAランク冒険者にも負けんぞ、あとは中身の力量だけだな!」


と満足気である。


息子のタッグさんが、


「そのうち要るだろうから知り合いに頼んで作っておいたよ」


と、アゼルとメリザにワイバーンの鞍をドラゴン革で作った物を渡してくれた。


鞍なんて少し気が早いきもするが、アゼルとメリザは物凄く喜んでいたのだが、二人はいずれドラゴンの鞍を乗せたワイバーンで空を…


『羨ましい…』


と、なんだか凄い装備が手に入ったのに、最後の最後で兄妹達に追い越されて行った気分のまま、


「よし、拠点に戻るか…」


と、家路につく事にしたのだった。

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