第81話 ソロの討伐依頼


アゼルとメリザはワイバーンの雛に付きっきりで。

アゼルのワイバーンはメスの〈サーラ〉

メリザのワイバーンはオスの〈ノリス〉

と名付けて可愛がっている。


二人とも〈ノーラ〉さんから一字もらったそうだ。


まぁ、1ヶ月では飛び回れる様にはならないだろうが、それでも宿を借りてから二週間…二匹のワイバーンは手のひらサイズだったのが枕サイズに育っている。


このペースで行けば半年もすれば厩舎行きになるだろう…

想定外なクマ美という新入り熊も仲間入りしたので、ミルキーカウ牧場の隣に柵を増設して、冒険担当従魔の牧場にするかな?…

牧場の厩舎もまだまだ空きがあるが、いずれは大牧場にしてチーズにバター工房も作りたいし、お菓子工房を作っても良いかもしれない。


我が家にはアゼルとメリザというテイマーも増えたので、〈繁殖力〉のスキルで沢山卵を産む〈卵鳥〉という魔物の上位個体〈クイーン卵鳥〉をテイム出来れば群れとして沢山の卵鳥が飼えて、卵の安定供給が可能となるし、プリンが再現できるかもしれない…

山を買って温泉が手に入れば温泉蒸しプリンや温泉玉子だって夢ではない!


酪農エリアを増やす為に森の北側の草原エリアを買って開拓する手もあるし、何なら農地も開墾して小麦畑にしたらお菓子工房用の材料が全部そろうので、原材料費も抑えられる…


我が家には馬や、熊がいるから馬鍬まぐわを用意出来たら耕し放題だ。


夢は膨らむが、その前に依頼をこなしてBランク冒険者を目指さねば、Cランクパーティーのドラゴンスレイヤーなど悪目立ちが過ぎる…

しかし、アゼルとメリザは当面は、冒険せずに子育てに専念するらしい。


なので、冒険者パーティー〈ウチの大家族〉は育休の為にまたソロとして頑張っているのだ。


現在は、クマ美とクマ五郎とセミ千代の熊ファミリーでミルトの街から東に三日間ほどの高原地帯に〈地竜の肉の納入依頼〉を受けて来ている。


クレモンズさんが、


「依頼を受けてのドラゴン狩りならBランクに一発昇格…」


と、言っていたのでドラゴンは厳しいが、


飛ばないし、ブレスも吐かない地竜ならばギリギリ、セミ千代のパニックボイスとシロクマ達に押さえ込んでもらったら何とかなりそうだから来てみたという流れである。


しかし、日に日に仲良くなるクマ五郎とクマ美にセミ千代がヤキモチでも焼くかと心配したがセミ千代は、


〈親びん、姉ごぉ、お散歩楽しいね。〉


と、遠目にはシロクマの夫婦と色ちがいの小熊が背中にしがみついているみたいだ。


『仲良く成って良かったよ…』


しかし、こうなると俺の異物感が気になる、熊の親子をストーキングしている気分だな…などと考えながら、高原地帯の散歩して地竜を探していると、


高原ネズミという繁殖力旺盛なカピバラサイズのネズミを追い回して倒している地竜を見つけた。


今回の依頼はの目的はお肉だ…

あまりシバき回したりしたら肉が駄目になるので、一撃でシメる必要がある。


ネズミ群れの何匹かを倒した地竜は現在お食事中で、この高原地帯の絶対強者は何に怯える事もなく悠々と食事を楽しんでいる。


警戒が薄れている今がチャンスと全員が配置につく、先ずはお食事中の地竜にセミ千代がパニックボイスを当てると、地竜は恐怖を覚えたのか食事を止めて、身を低くして目だけで辺りをキョロキョロ見ている。


しかし、地竜がビビる相手は飛べるタイプのドラゴンぐらいなので、奴は上ばかりを気にしながら伏せている。


そんな地竜の頭をシロクマ二頭で押さえ込む。


急に頭を押さえ込まれて更にパニック状態になる地竜に俺は高速移動で駆け寄り、


「いち、にー、の、さん!!」


と掛け声をかけて、雷鳴剣の切っ先に集束スキルでサンダーの魔法を集めて地竜の目玉の奥の奥…ヤツの脳ミソを目掛けて剣を突き立てる。


タイミング良く飛び退くクマ五郎とクマ美は感電すること無く突き立てるられた切っ先から爆る稲妻が地竜の脳を駆け巡りショートさせるが、


最後のひと暴れで吹き飛ばされてた俺の魔鉱鉄の鎧が一部破損してしまい俺自体もダメージに悶えている。


「痛ってぇ~!」


と文句を言いながら、初の〈ライフヒール〉は自分にかける羽目になったのだった。


従魔達に心配されながら立ち上がり、


「大丈夫だよ」


と応えながら獲物をアイテムボックスにしまって討伐完了となったのだった。


帰りの馬車の御者台の上で千切れたアーマーリザード革やガリガリに擦れた魔鉱鉄の肩当てを擦りながら、


「ありがとう」


と労いの言葉を身に付けている鎧にかける俺だった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る