第80話 従魔登録とパーティー申請


ミルトの街に戻って、あとは装備の出来上がりを待つばかりだ。


ギルド宿を拠点に後1ヶ月、この街で過ごす為にクマ美の従魔登録をしに冒険者ギルドの窓口に来ている…

アゼルとメリザも旅の途中で生まれたてワイバーンの雛を登録の為に横で並んで手続きをしている。


帰りの馬車の中で、


「生まれそう!」と騒いで、半日馬車を停めて観察をしていたくらい熱心で、二人とも孵化したら…もう、子煩悩…

流石は孤児院育ちと思え、二人とも幼い者の扱いになれていて四六時中ベッタリでニヤケながら世話している。


メリザが、


「ポルタ兄ぃだけ従魔と話せるのズルい!」


と言っていたが、話せるのはテイマー系スキルの効果ではなくて、一応レジェンド級スキルである虫の王のスキルの力だから…


従魔登録も終わり俺達は別の窓口で、冒険者宿と厩舎の利用を1ヶ月希望する。


クマ五郎は拠点に送喚出来るが、クマ美は従魔になり立てホヤホヤでまだ拠点に送れないので、ギルドの厩舎で休んでもらう予定だ。


ワイバーンの雛はまだ小さいので、宿屋の部屋で面倒を見る許可がおりた。


仮拠点も出来たので、ぐっすり寝て長旅の疲れを癒そうと出口に向かう途中で、ギルドマスターのお爺ちゃんクレモンズさんに、


「ポルタ君と兄弟の2人も、こっちに来てギルドカードを出して…」


と呼び止められた。


『何かやらかしたかな?』


とビクビクしながら三人ともギルドカードを提出すと、クレモンズさんの指示のもと女性職員さんが何か魔道具でチェックしている。


クレモンズさんが、


「やっぱりだ勿体ない…」


と、呟いた。


俺が、


「なんです?」


と恐る恐る聞くとクレモンズさんが、


「ポルタ君、パーティー申請してないでしょ?

アゼル君とメリザちゃんは、〈院の双子〉ってパーティーだけど、ポルタ君のパーティー登録がいくら探してもないんだ…

おかげで書類提出が出来なくて困ってたんだよ…

いくら探しても街に居ないし、ギルド宿も素泊まりでチェックアウトしてたみたいだし…今からでも良いから登録して」


と言われ手続きをする事になった。


クレモンズさんは、


「ギルドマスター権限で、パーティー登録を遡って討伐日以前…私に狩り場の相談をした日にちにしておくから…初めからしておけばもっとパーティーポイントとか入ったのに…」


と、言われてしまった。


三人で相談してパーティーの名前を決めるのだが、

ルールとして2つの単語を組み合わせるので、1つは〈家族〉が良いとアゼルが、切り出して、

メリザは、従魔やマリーやハニーの巣の皆も家族だから〈大家族〉が良いと言って、アゼルも同意した。


さて、困ったのは、何の〈大家族〉か?…〈大家族〉の何にするか?の問題なのだが…拠点がある〈丘〉にすれば、〈森〉組が、可哀想だし、

孤児院のあった〈エマ〉にしたら従魔の殆どが対象外になる。


悩みに悩んだ末に、


パーティー名〈ウチの大家族〉に決定した。


職員のお姉さんからは、


「本当に、良いんですか?」


と念をおされたが、家族会議で一度〈GO〉が出たものは再度家族会議を開かない限り覆らないのが我等の孤児院のルール!


無事にパーティー登録が済んだのだが…


『これで、何が変わるの?』


と考えているとクレモンズさんが、


「はい、おめでとう。

本当ならドラゴンを見たあの日にこの手続きをしたかったけど驚いて忘れてたよ。

ゴメンね…

えー、〈ウチの大家族〉は、ドラゴンを討伐出来るパーティーとして登録されました。

正式な手続きは、本部に書類を提出してからなので、1ヶ月ぐらいはかかるけど宿を取ったぐらいだから居るよね?」


と、聞かれて、三人とも「はい。」と答えるが何の手続きか解っていない…


クレモンズさんが笑いながら、


「単独パーティーでドラゴン狩りを達成するのは、しばしば聞くけど、Cランクが最高のパーティー、しかも三名での討伐なんて数百年前の勇者様のパーティーだけじゃないのかな…話題になるよ」


と、言っている。


アゼルとメリザは、


「ヤッタァー!」


と、喜んでいるが、俺は、


『何とも面倒臭い事になった…』


とガッカリしていた。


どうせ、ろくでもないイベントのフラグだと薄々解る様になってきたからだ…

念のために、クレモンズさんに、


「えーっと、ギルマス…一応確認ですが、〈ドラゴン狩り〉の称号持ちのパーティーのメリットは?」


と聞くとクレモンズの爺さんは、


「ハッハッハ、決まってるよ。

名声と、あとは強制レイドの場合に手柄をたて易い前線に配置して貰えるぞ!」


と…何処のナニが、メリットなのやら…


『 今からでもキャンセルしたいです…』


と願うが、しかし、もう遅かった…アゼルとメリザが、


「ドラゴン狩りパーティーだって、」


「数百年ぶりだって、」


と喜んでいる…とても、書類上も感情的にも、やっぱり無し出来る様な雰囲気ではない…


クレモンズさんは、


「ポルタ君、ドラゴンスレイヤーがCランク冒険者では…あれだから、もっと依頼を頑張って下さいね。

依頼でドラゴンを倒したのなら一発でBランクになれたのに…」


と、言っているが、


「当面は、ドラゴンは…殺りたくないです」


と、答えてしょんぼりしながらギルドをあとにした。


もう、今日は寝よう…。





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